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さいしんコラム#1189~銀メダルが呼び寄せるもの/この位置にいることで意味がある目印

 金メダルを家に並べたところで、もう過去のものなので。 
 
 試合後の記者会見で「この銀メダルを大事にしていこう、と選手たちに言った」と語る楠瀬直木監督に対し、その意味をもう少し詳しく、と突っ込んだ。
 —言わなきゃわからんのか、清尾は。
 楠瀬さんはそう思ったかもしれないが、ここは推測でなく監督自身の言葉で聞きたい。せっかく沖縄から大阪まで来て会見にも出ているんだし。その僕の質問に対し、最初に出てきた言葉が冒頭のそれだった。

 「結果はPK戦によるものであり、内容的には良いところもあったし、選手たちは頑張っていた。もちろん足りないところもあった。しかし、勝つと忘れてしまう。後半戦に向けてクリアにして乗り越えなければならないところを、勝って忘れてしまったら何も得られなくなってしまうので、そこを思い出しながら今後やっていきたい」
 ほら、やっぱり質問して良かった。
 あれだけ良い内容の試合をして、優勝まであと一歩、いや、あと数十秒だった。自分たちがどこまでやれたか、どの地点まで到達しているかをしっかり自覚して、そこから上に行くための目印。それが、この皇后杯の銀メダルだ。
 負けた悔しさを忘れないため、という単純な意味ではなかった。
 と同時に、レッズレディースがこの位置にいるからこそ言える言葉だと思った。自分たちは本来優勝できるレベルにいる。その自信を失うことなく、その力が確実に結果に結びつくようにしていきたい。

 さいしんコラムにも書いたように、それぞれの選手がふだんの自分に負けないプレーをしていた。それを最高値ではなく、平均値にするために今後励んでもらいたい。
 そしてチームとしては、良い時間帯の間に2点目を取ること。良い時間帯を長くすること。
 単純だが、これが常勝軍団になるために必須の課題だ。
 WEリーグの残り15試合で、どこまでそれが達成されるか。3月以降の見どころがはっきりした。

 もう一つ。相手のラフプレーでケガをもらわない構えも必要になってきそうだ。準決勝で安藤、猶本。決勝で島田がプレー続行不可能なケガを負った。柴田も当たりどころが悪ければ担架で運び出されていたかもしれない。
 なでしこリーグ時代にはあまり見られなかった大きなケガが生まれるようになったのは、プロ化されて各チームのレベルが上がったことと並行しているのかもしれない。かつては踏み込まなかった領域まで、体が、脚が出る。それもWEリーグができてから、迫力ある試合が増えている要因の一つだと思うが、同時に危険も増しているのかもしれない。
 ケガを恐れてプレーが消極的になるのはもったいないが、自分(と相手)のケガを避けつつ強度の高いプレーをする、という努力も難しいが必要になってくる。

 あと、どちらに非があるかは関係なく、自分のプレーで相手が痛んでいたら、それを気遣うそぶりだけでも見せることで、スタジアムの刺々しい空気はやわらぐはずだ。刺々しくしたいのなら仕方がないが。


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