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子供部屋に鎮座する桐のタンス

我が家の子供部屋は畳の部屋です。この家に引っ越すときに、本当なら大家さんが畳の部屋をフローリングに作り替えてくれる予定だったそうなのですが、私が断りました。「いえ、ぜひ畳のままにしてください」

引っ越した当初はまだ子供はいませんでした。私が畳の部屋が欲しかった理由は、私の趣味が着物だからです。子供が生まれる前、畳の部屋が着物部屋になっていました。と言っても、当時は桐のタンスと姿見があったくらいで、ほとんど使っていませんでした。

子どもが生まれ、この畳の部屋を子供部屋にせざるを得なくなり、ベビーベッドやら子供服用のタンスやら本棚やら、色々と子供のものが増えていき、すっかり部屋らしくなりました。

畳の部屋を子供部屋にしたことに深い理由はありませんでした。ただ部屋が少ない家なので消去法です。でも、今となっては子供部屋を畳の部屋にしてよかったと思っています。

コケても痛くない

まず、フローリングと比べて頭を打った時に痛くないこと。お座りやつかまり立ちがまだ不安定な時期って、目を離したときに限ってズッコケますよね。そんなとき下が畳なら、よっぽど上から落ちたとかでない限り、たんこぶはできません。また、フローリングだと子供部屋にジョイントマットなどを敷いている家庭も多いですが、その手間もないのでラクです。

綺麗な正座が自然とできるようになる

4歳息子は、3歳くらいになると、いつの間にか自分で正座するようになりました。それも、かなりきれいな正座を。私は着ものも着るし茶道も習ったことあるくせに、正座が苦手です。小さい頃を海外で過ごして畳のない家で育ったことも影響しているのかと思います。それに比べて息子は、教えてもいないのに気づいたらできるようになっていました。きっと、畳だと正座するのも自然な姿勢なんだと思います。

4歳児が畳の部屋で正座しながらiPadでYoutubeを見ているという、昭和と令和のハーモニー的な絵はちょっと面白いです。

好きな時にごろごろできる

わざわざ布団を敷かなくても、好きな時にごろごろできます。畳ってなんであんなに気持ちいいんでしょうね。ふとしたときにゴロゴロできると不思議と癒されます。たまに0歳児の横で私もゴロゴロしたりすると、この人の目線ってこんなに低いのか、と赤子の目線になれるので面白いです。

赤子を転がしておける

ジョイントマットを敷かなくても、じゅうたんやラグを敷かなくても、そのまま畳の上に転がしておけるのは本当に便利です(言い方…)。何かを敷くひと手間すら面倒な私のような人間にしてみると畳は本当に最強です。

日本に生まれてよかったね♡

義祖母から譲り受けた桐のタンス

夫の亡き祖母が本当に衣装もちで、桐のタンスだけで七竿あったというから驚きです。着物のプロの方に話しても、「そんな方はかなり珍しいです」とおっしゃいます。そのうちの一つを、私が譲り受けたというわけですが、義母のすすめで、古くなっていたタンスを職人さんにお願いして「砥の粉仕上げ」に磨き上げてもらいました。年季が入っていたはずのタンスが、みちがえるように新品同様になり、職人技とはまさにこのことだと感じました。

我が家の桐箪笥。隣の芸術的な子供用引き出しとのコントラストをお楽しみください

子供部屋に桐のタンスがあることの面白さ

磨き上げてもらった当初は、色もアイボリーに近いような本当にキレイな色でした。砥の粉と言うだけあって表面に粉が塗り重ねられた状態なので、はじめのうちは触ると手や服に砥の粉がついてしまいます。

このタンスが再生されたのが長男を妊娠中のときだったので、生まれた時にもまだ綺麗でした。長男が生まれて周りのものに興味を持つようになる頃、まず触ったのは引き出しの取っ手でした。カタカタ音が鳴って楽しいんでしょう。ちゃんとした赤ちゃん用のおもちゃ以上におもちゃになっていました。

当然、表面を触ると砥の粉がついて、その手を舐めたりするわけですが、まあ昔の人の知恵だし変なものは入ってないだろうし死にはしないでしょ、という思考で(こういうところが一人目じゃないみたいと言われる所以だったのかも)見守っていました。

一方のタンスの方にも、しっかりよだれやら手垢やら引っ掻き跡やらが。最初のうちは、やはりせっかく譲り受けて磨いてもらったものを大事にしたいと思ったので触ってほしくなかったのですが、もう不可抗力ってやつで0
歳のうちは自由に触らせてやることにしました。

0歳の次男も引き出しの取っ手で今も遊んでいます。みんな通る道なのかと思いつつ、次男に至っては箪笥の表面を直接舐めているのでワイルドだな~と感心しながら見ています(止めないの?という突っ込みが来そうですね)。

0歳の時は温かく見守りますが、少しものの分別がつくようになってからは、おもちゃを使ってたたいたりしていたらダメよと言ったり、引き出しを開けられるようになっていたずらが始まったら厳しめに叱ってみたり。「ママの大事なものだから大事にしてほしい」と教えるようになりました。世の中には子供である自分が手に出せないものがある、ということを教えられるのは良いなと思います。

面白いもので、当たり前ですが下の方が汚れが目立ちます。長男の赤子時代と次男が現在進行形で残しているものです。下の方はまだズリバイの時だな、少し上の方になるとつかまり立ちできるようになったころだな、などと、最初は触ってほしくなかったはずのタンスにできた数々の汚れが、いつの間にか思い出の形となって表れているのだから不思議なものです。

昔の人も、同じようなことをやって来たのだろうと思うと、時代の流れは面白いです。うちの桐のタンスもまた、我が家なりの歴史を塗り重ねていって、子どもたちの「思い出」とともにまた後世へ遺して行けたら、と遠い未来に思いを馳せて。

sayu


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