基礎基本

point8 ”基礎徹底”に隠された罠

受験生の皆さんは、受験勉強のうち、どのくらいの時間を「基礎徹底」に費やしていますか?学校の先生や塾の先生に、「基礎基本を重点的に対策しなさい」と煩く言われた受験生も少なくないのではないでしょうか。

例えば、英語でいえば、センターレベルの単語帳(システム英単語など)、文法の問題集(ネクステージ、ビンテージなど)、数学なら黄色チャートなどの汎用性の高い問題を集めた参考書が基礎基本対策に挙げられます。

一部の受験生は「基礎基本が大事」だと思い込み、とりつかれたように必死に受験勉強生活の大半を基礎基本に費やす人がいます。

はたしてこれは正しい勉強とはいえるのでしょうか、基礎と応用、この理想的な兼ね合いとはいったいどうなんでしょうか?


結論から言うと、基礎基本重点主義では合格することはできません。

特に旧帝国レベル、早慶レベルを目指す受験生は、受験勉強の約6割以上の時間を応用問題を解くのに費やすべきです。理由は、勉強でもなんでもそうなのですが、インプットよりもアウトプットのほうを優先するほうが生産的であり、それは受験勉強においても言えるからです。


例えば、「英会話」において、1年間必死に単語帳で英単語を叩き込んだ人と、一年間のうち、最初の三か月で英語の基礎を学び、残りを海外で過ごしながら英語を直に学んだ人、どちらのほうが英語の習得度が高いと思われますか?


勿論、習得度が高いのは、後者の海外で英語に直に触れながら過ごした人です。英語に限らず、勉強全般においてアウトプットはインプットよりも習得度向上に効率的であることが分かっています。


もし今日あなたが授業で先生の話を聞いただけなら、その授業の内容のほとんどを忘れてしまっているのではないでしょうか。しかし、授業の中で自ら発表したり、友達に教えた知識というものは今でも鮮明に覚えているのではないでしょうか。先生の話を唯々聞く(インプット)よりも、自ら授業をする(アウトプット)するほうが記憶に定着しやすくなります。それはアウトプットするとき、私たちの脳はフル回転し、インプットした知識を正しく理解しようと働くからです。

私も受験生の頃、先生に「基礎基本を徹底的に対策しろ」と口酸っぱく言われてきました。自分はとりつかれたように基本的なインプット系参考書をこなしていました。気が付けば、11月くらいになっていて応用問題に手を付け始めたのは12月の始めくらいからでした。いざ応用問題に取り組んでみると、やったはずの基礎基本はとっくに忘れてしまい手も足も出ませんでした。「あんなに基本的な参考書を繰り返したのに全然わからない!」、今思えばこれは当然のことです。


受験生の目標は、「参考書を繰り返して基礎基本を頭に入れること」ではありません、「志望校に合格する」ということが最終的な目標です。

志望校に合格するには、平均点が5割~6割程度の応用問題を合格ラインに達するレベルまで解ける必要があります。このことを受験生は忘れてはいけません。


確かに基礎基本は大事です。スポーツでも基本的なフットワークやハンドリングがおぼつかない選手は将来一流の選手になることはできません。ですが、基礎基本の練習を繰り返すだけでは結果を出すことはできません。練習試合や実践的な練習を取り入れていくことが上達するために必須になります。

受験生は結果を出さなければならないのです。基礎基本はその手段であって、直接的な要因にはなりません。

あなたは今一年間かけて一つの絵を描こうとしています。一年間かけて上質な絵の具を磨き上げていては、結局最高の絵を描くどころか誰にも評価されることはありません。まずは”書く”ことが前提にあり、その材料としてある程度上質な絵の具が求められるのです。材料を磨くことにとらわれて描くことをしなかった芸術家は芸術家とは言えないでしょう。

受験勉強でも同じです。あなたは大学の試験官に対して、「自分は一年間の受験勉強を通してここまでのレベルまで達することができました」ということを解答用紙を通してアピールすることが求められます。答案用紙を通して試験官は「この受験生が我々の大学の設定する学習習熟率に到達しているのかどうか」を判断します。その判断材料が解答用紙なのです。あなたがどれだけ受験勉強で基礎基本を一生懸命やってきたとしても、残念ながら解答用紙にはそのことが直接反映されるわけではありません。解答用紙に表現されるのは、あなたの持っている基本的な知識を用いて、”どのように応用し、問題を解いたかどうか”ということだからです。

まとめると、受験生は基礎基本の対策だけではなく、応用問題の対策を優先的に進めることが大切になります。勿論基礎基本的な知識がなければ、応用問題を解くことはできません。しかし「基礎基本をすべて終わらそう!」とすれば、3年以上かかります。あなたがどうしても、「基礎基本を完璧にしたい」というなら、3年間浪人すれば実現されるでしょうが、それは全受験生が避けたいと思っているはずです。だから基礎基本を完璧にしようとするのではなく、ある程度のレベルまで習得できたと判断出来たらすぐに応用問題に移らなければなりません。

具体的に私が浪人時代に実践した受験計画を例にしてみましょう。

・英語 浪人が決まった3月~6月:システム英単語終了、vintage(文法参考書)終了、基礎英文解釈の技術100終了、やっておきたい英語長文700終了 7月~10月:予備校の応用問題テキスト復習(早慶、旧帝レベル)、英作文ハイパートレーニング終了、英文解釈(駿台文庫)終了、二次試験過去問 11月~2月:二次試験過去問、(センター試験直前一ヶ月はセンター対策に集中)


といった感じでした。基礎基本を完璧にしようとしたことが失敗の原因だと思った自分は、浪人の6月までに基本的な部分をすべて終わらせました。確かにすべての参考書の到達率は100%ではありませんでした。システム英単語は習得率だいたい8割、vintageは7割くらいだった覚えがあります。ここで昔の自分なら、「まだ100%に達していないからもっと勉強しなければ」と思っていたと思います。しかし浪人では、ある程度の基礎が終わったら応用問題に入ろうと考えていました。結果的にそれが成功の秘訣になったと自負しています。数学でも、フォーカスゴールド(青チャート)を8月までに終わらせて、その後はずっと過去問を解いていました。

繰り返すようですが、受験生の目的は「合格すること」です。「基礎基本を100%完璧にする」ことではありません。

成功する「知識」より
成功する「知恵」の方が大事である
。byアドラー心理学

応用問題をおろそかにしている受験生がいらっしゃったら是非参考にしてみて下さい。




#大学受験 #大学 #英語 #参考書 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?