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褒めることの問題点

「あなたは褒められることは好きですか?」

先日、「褒めることの問題点」について篠原信さんとHacking Academyの共催のオンライン飲み会で話したので私見ですが少し考えを整理したいと思います。

まず「褒める」とはどういう行為なのか。「褒める」とは賞罰でいう賞にあたります。賞は上の立場の人が、下の立場の人に与えるものであるので、「褒める」にしろ「叱る」にしろ上下関係があることが前提となります。

学校現場でいうならば、子どもに「〇〇さんは周りのことよく見て動けてすごいね。」と言うと子どもは喜んでくれます。
しかし、校長先生に教員が「校長先生は周りのことよく見て動けていてすごいですね」と言うと違和感が生まれてしまいます。校長先生によっては「あなたに言われたくない。なめてるのか?」と立腹する方もいらっしゃるように思います。
これは、立場が違うからです。下の立場の人が上の立場の人を褒めるから違和感が生まれます。

以前お世話になった校長先生は
「私は子どもを褒めない。馬鹿にしている気がするから」とよく仰っていました。
「褒める」という行為には、どうやら上の立場の人の何かしらの意図が隠れていて、それが見え隠れすることがあるようです。

その「意図」に当たるのが、上の立場の人が考える「人としての正解に近づけること」や「なってほしい姿」になるのだと思います。
「人としての正解」「なってほしい姿」という物差しを自分の中に持っていて、その物差しに近づくように褒めていく。「あいさつができる子どもは素晴らしい」という正解を持っていて「あいさつする」という行動を増やしたい場合、あいさつの直後に「褒める」という子どもにとってプラスになる報酬が与えることで、「あいさつをする」という行為は増えていくと言われています。
これ自体はなんら悪いものではありません。学校現場でも、家庭でもよく起きていることだと思いますし、それができないと今の公立学校はまわりません。

ただ、「褒められる」ことにより頻度の増した行動は「褒められる」ことがなくなると自然と減少し無くなってしまいます。「褒める」行為は依存を生みます。その行為そのものの良さではではなく「褒められる」ことを目的とした行動になります。特に、プロセスではなく結果を褒められると、結果にだけ目が行くようになり、失敗を恐れるようになるとも言われています。

他の方からは「物差しでスケーリングをするときに、褒める側は子どもではなく物差しばかり見ている気がしますね」という意見がありました。物差しとの差分を見るわけです。

篠原信さんが「驚くこと」を大切に子育てをしてきたと度々記事にしていますが、この「驚くこと」は「差分を見る」ことと言ってもいいのではないかとのことでした。
ただ、篠原さんの「差分を見る」は人を良く観察して、昨日までのその人と、今のその人との「差分を見る」ことなのです。ついつい私たちは自分の中にある物差しと今のその人との差分を見てしまうのだなと改めて痛感しました。
そして、その人のプロセスの差分を見る場合、どこを見たとしても「人」を見ています。しかし、物差しとの差分を見る場合、物差しをいうフィルターを通してその人を見るのか、物差しとその人を見ることになります。ここに大きな差があるのではないかと思います。「ただその人を見ること」と「物差しとの比較で、自分の中の正解というフィルターとフィルターを通した相手を見ること」の違いです。
またここで1つの疑問がわきます。その人なりの見方を通さずに人を観察することが可能なのか。
やはりそれはできないと思うのです。必ずその人なりの見方や関係性の中での見方を通して見るので、何もバイアスをかけずにただ観察することはできない。
じゃあ結局は「ただその人を見る」ことは叶わないのか。私は無理なのだと思います。だからこそ、観察にはそれぞれのフィルターがかかってしまうから、観察者の表現に、相手へのメッセージがこもらないように「驚く」ことが大切なのだと思います。

褒めることはあなたへのメッセージ
驚くことは私の感情

だからこそ、
褒められると人に依存して、
驚かれると、人に影響を与えたような感覚になり、その行為自体に価値を感じるようになるのではないか。

私は子育てで1番大切なことは
子どもが何かしたときに反応をすることだと思っています。その方法のかなり有効な手段として「驚く」があると思います。
自分が社会に対して影響を与えられるのだと感じること。そして自分自身も社会から影響を受けて、社会と調整しながら生きていかないといけないのだと感じること。

そのために、社会だけが軸になっても、自分だけが軸になってもいけないのだと思います。

褒めるは社会が軸になってしまう。
それに対して驚くは自分の軸と社会の軸のバランスがよいのだと思います。

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