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三浦コウさん ピアノリサイタル

初めて三浦コウさんのリサイタルにお邪魔しました。忘れがたい素敵な時間の記録です。

6月12日(土) 13:30~
場所は「早稲田奉仕園 スコットホール」という、歴史ある瀟洒な建物だった。

この状況下に隣県から。なので移動は車一択。私は運転が好きで、愛車はターボ搭載。首都高は夜に走りたいタイプ。しかし今回は日中。大人しく貴婦人の乗車だ。(どうでもいいね)

今回のリサイタルは、コウさんのCDアルバム発売を記念してのもの。
それがこちらの「COLORS」。

「人の心にスッと入り、心地よく残る」
完全オリジナルアルバムだ。

クラウドファンディングで制作され、支援された方々のお名前もクレジットに記されている。様々な「想い」の込められた芸術作品。とても美しい。
楽譜も発売されており、いずれもサイン入りで、丁寧に梱包されて手元に届いた。

音楽のライブ配信が盛んな昨今だが、絶対に生演奏がいいに決まってるのがジャズとクラシック。(※個人の見解です)
ホールの床から伝わるクラシックの低音の震動はたまらないし、ジャズは会場が狭ければ狭いほどいい。スネアドラムの波動が頬を撫でるあの感じが好きだ。現在の世論と家族の視線の隙間を縫うようにして、時々コソコソ出かけてしまう。

そして今回。
クラシック以外の、オリジナルピアノ作品のリサイタルを聴くのは初めてだった。
久石譲さんのコンサートには通うが、バックにはいつも新日本フィルがいる。あの編成と音圧・迫力は本当にすごいけれど、今回はピアノとピアニストが1対1で紡ぐ音の空間を、とても楽しみにして出かけた。

■プログラム

春の訪れ
reflection
夏の訪れ
GRADATION
秋の訪れ
Autumn Leaves

[Classics]
献呈
幻想即興曲

冬の訪れ
優しさ

[アンコール]
Stay Home (指パッチンver.)


結論から先に言う。

最高だった。

「COLORS」は四季と色彩をテーマにしたアルバムだが、その「色」がホール全体に広がるイメージを感じた。時に淡い緑だったり、深い青だったり、暖色のグラデーションだったり。ライティングに凝ったアーティストのコンサート、あれを聴き手が心の中で作り上げる感覚だった。

ピアノはベヒシュタイン。
高音のアルペジオがとても美しかった。

とりわけ印象的だったのは「優しさ」。
コウさんの演奏は「優しい音色」と形容されることが多いが、その持ち味を余すところなく盛り込んだ、アルバムの最後を飾る名曲だ。
他の曲は主に色や自然を題材としているのに対し、この曲は人間の内なるものを表現している。
アルバム各曲に短い詩が添えられているが、この「優しさ」の詩には心が震える。音楽のチカラ・言葉のチカラは、時に凄まじいパワーを持つ。

冒頭のシンプルな和音。もうここで「優しさ」が伝わる。座っていた木製の椅子がふんわりと温かくなったような気がした。
会場の厳かな空気とのシナジーもあってか、「癒し」「赦し」「慈愛」「祈り」、そんな大きな包容を感じる素晴らしい演奏だった。

演奏は終始、耳で「聴く」、目で「見る」に加えて、聴き手はさらに別の感覚を使うように思えた。それはリサイタルの前後の時間にも波及しており、例えば、ホール周辺に咲いていた花の色や、帰路の車窓の空でさえも、私にとってはリサイタルの一部として捉えられている。こんなピアニストさんに出会ったことはない。

コウさんの演奏は実直だ。
曲やピアノとの関係性がフラットとでも言おうか、俺がこうしてやるぜ!ここが見せ場だぜ!といった、ご本人の感情が透けないのがいい。(透けに透けて、そこが魅力的な方もいるが)

四季と色彩を表現することに、ただただ集中する。それが音となり、ホールに広がり、聴き手に届く、それだけ。余計なパフォーマンスがなく、実にナチュラルなのだ。だから心地好いし、何度でも聴きたくなる。そのスタンスはクラシックやカバーを弾かれても変わらない。ピアノの職人さんのようだな、と思う。

あれこれ「やらない」上で表現する。
これはとても高度で難しいこと。
その域へ到達するには、選ばれし才能と並々ならぬ努力が必要で、見えないところでご苦労されていることは、一介のピアノ弾きとして察することができる。
しかし、そこを察することは野暮かな、と感じてしまうほどの、美しい完成形。音色の引き出しの多さと選択のセンス。圧倒された。

既存曲を「弾く」配信や教育ばかりが過熱するピアノ界において、こういった素晴らしいオリジナル作品を生むピアニストさんに出会えたこと、動画や配信、時に生演奏を聴かせて頂けること、とてもとても幸せに思う。

だってあれですよ。オリジナル曲をご本人が弾くってことは、ショパン本人が英雄ポロネーズ弾いてくれてる、リスト本人がラ・カンパネラ弾いてくれてるのと同じでしょ?数百年後の「COLORS」はクラシックになってるわけで。それだけでもう、ピアノ界・音楽界にとって大変価値の高いことだと思うわけです。
オリジナル曲だけで一本のリサイタルが成立する、これとても貴重なことなんじゃないでしょうか。

あ、あと、これを書かなければ。
アンコールの「Stay Home」。
なんと観客は"指パッチン"で参加!私が出来ないやつだ。しかしここは絶対参加したい!
・・・その思いが天に通じたか否かは謎だが、左手からパッチンが出るようになったのだ。火事場のなんちゃら恐るべし。ここからさらに磨きをかけていこう。

今後のコウさんのご活躍が楽しみ。
長く聴いていきたいから、健康で長生きしなくちゃ!いやホントに。

個人的主観満載の記事、最後までお読み頂きありがとうございました。

「COLORS」
スマホのスピーカーではなく、是非イヤホンやヘッドホンでお聴き下さい🎧️

オリジナルCD&楽譜『COLORS』

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~ 三浦コウさん ~
東京都出身。平成元年生まれ。
東京音楽大学ピアノ演奏家コースを経て、同大学院音楽研究科修士課程修了。専修免許取得。
2011年 ヨーロッパ国際ピアノコンクールin Japan 第1位グランプリ。ガラコンサート出演。
在学時より、弘中孝、稲田潤子、村上隆の各氏に師事。
また、A.トルガー、R.オホラ、野島稔、小川典子の各氏にも指導を受ける。
室内楽を山洞智氏に師事。作・編曲を村田昌己氏に師事。
(オフィシャルウェブサイトより)