歯の話と今年の抱負の話


本当に、ただそれだけの話である。

小学校で定期的に歯科医師が学校に来て、歯科検診をしてもらっていた。ここでその歯科医師を糾弾しようという意思はない。ただ純粋なわたしから免許による信頼を奪ったのはそいつで間違いない。

ちゃんと覚えていないけど、小学校低学年の時に奥歯が抜けた。たぶん下の左6歳臼歯とかそんな感じの歯だったと思う。その歯が、小学校高学年になっても生えてこなかった。
最初はそのうち生えてくると思っていたが、暫くたっても舌で触った感覚に変わりがないことを不安に思って二度ほど母に伝えた。ただ、歯科検診の結果で問題が無かったし、痛くもないし虫歯もないしでそのうち生えてくるだろうという結論になった。

というより、抜けた歯が生えてこないなんてことがあるとは母も父も思っていなかったのだ。歯なんていつの間にか生えていたし、そういうものだとわたしも思い込んでいた。

幸か不幸か、わたしは虫歯をしたことが無い。歯医者に通うこともなかったので、別の医師に口内を確認してもらう機会もなかった。

小学校5年生にもなってくると定期検診の医師が言う「斜線」が「問題なし」という意味であることは理解していた。その年、その医師がわたしの生えてこない6歳臼歯について、「あれ?ここ去年も斜線だね、じゃあ斜線でいいか」と言ったのを聞いた。

お医者さんの言う「じゃあ」という言葉で初めて、ああ信用ならないな、と思ったのだ。母は前にも生えてこないとわたしが訴えたことを覚えていて、別の歯医者さんに見てもらうことになった。

新たに見てもらった歯医者さんは、定期検診で毎年問題なかったことを聞いて変な顔をしたあと、すぐにレントゲンを撮ってその場で簡単に歯肉を切除し歯は下の方に生えていることを見せてくれた。

そのまま、その歯はおおよそ6~7歳で生え変わる歯であったこと、なるべく早くその歯を正しい位置に戻す必要があること、それは大きな病院で手術が必要になるであろうことを説明し、紹介状を書いてくれた。

そうして紹介された大学病院に、手術と矯正で7年通った。大学病院で矯正科と口腔外科に通ったが、どちらの科でも矯正は早い方が簡単だと言われた。大人になってからの方が動きが悪く痛みもあるらしい。

斜線を引き続けた定期検診の医師に恨み言を言っても構わんだろうという気にもなる。免許は勉強すればとれるのだ。知識があることと、その知識を職務のために活用するかどうかは人間性だ。

今はネットであらかた自分で検討がつけられる。必要なのは検査機器とその結果を読み取る知識だ。自分の違和感を大事にして、納得いかなければ納得させてもらえるまで説明を求める図々しさがなければならない。

それはそれとして、長い矯正期間を終えて最終調整期間に入った段階でわたしは小学生から大学生になってしまい住まいを変えることになった。
それまでは頻繁だった通院も、半年に一回とかになって、その流れで生活が変わり…予約をとることなどすっかり忘れてまた数年を過ごした。
びっくりすることにまだ一度も虫歯になっていないのだ。そのためか、下の歯の前歯の裏にワイヤーが一本入ってることをすっかり忘れて今に至る。

どうしようこれ……抜くべきだよね……。親に話したら、忘れる?普通口の中にワイヤー入ってて!とか言われたけど、そもそも7年間全ての上下の歯には矯正器具入ってて、頬骨にプレートも入れてたし……それに比べたらワイヤー一本位じゃ違和感も何もないっていうか……。

これって普通の歯医者でとれるもんなのかなあ。矯正科あるところじゃないとだめかなあ。っていうか普通に怒られるよなあこれ。通ってた歯医者はカルテ5年で廃棄って言ってたから超えてるし……。ああ憂鬱。歯医者なんて今のところに住んで8年探したこともない。

あ~~~~今年の抱負にしよう。歯医者に行く。