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試写会『そばかす』アフタートークレポート(登壇:玉田真也監督)

※本記事は2022年12月に参加した試写会レポートになります。


あらすじ

あらすじ:物⼼ついた頃から「恋愛が何なのかわからないし、いつまで経ってもそんな感情が湧いてこない」⾃分に不安を抱きながらも、マイペースで⽣きてきた蘇畑佳純(そばた・かすみ)は 30 歳になった。⼤学では⾳楽の道を志すも挫折し、現在は地元に戻りコールセンターで苦情対応に追われる。妹の結婚・妊娠もあり、⺟から頻繁に「恋⼈いないの?」「作る努⼒をしなさい!」とプレッシャーをかけられる毎⽇。ついには無断でお⾒合いをセッティングされる始末。しかし、そのお⾒合いの席で、佳純は結婚よりも友達付き合いを望む男性と出会う…(引用:filmarks

アフタートークレポート

試写会では玉田真也監督が登壇しました。
試写会では一般参加者からの質問に回答する場面もあり、普段の映画雑誌では聞かないような話題もあり、とても楽しかったです。特に監督の「物事をフラットにみる」視点は素敵だなと思いました。

Q.主演の三浦透子さんの印象は?

A.頭がとてもクリアな人。普通に話をしながら、ぼんやりしたものを明確にし、問題を一つ一つ処理していく。そして明確にしながらも、全然理屈ぽくない演技をされる方。あと三浦さんは今回主演なので座長意識というものがあったというか、自分が主演の映画に参加していただいてるという意識ですかね。撮影現場では自分のミスじゃなくても、ごめんなさいと謝ったり周りにすごい気を使われる方だなと。

Q.前田敦子さんの印象は?

A.映画監督としては初めましてで、仕事では以前に自分が書いたテレビドラマの脚本で主演を演じていただいた。三浦さんとは対象的で、とても直感的な人。そしてずっと自然体で、なにがあっても動じない器の大きさがある。緊張感あるシーンの前でも直前まで寝てたり笑 ほんとに素の状態というか自然体で。ちょうど撮影中は、前田さんは(別作品の)舞台の稽古が佳境に入ってるときで。『まだ台詞が覚えきれてなくて大変なんですよー』と言って撮影現場に舞台の脚本を持ってくるんだけど、ふと見ると脚本読まずに寝てたりとか笑 たぶん僕が見てないときには読んでたと思うんですけどね笑 三浦さんと前田さんが対象的なキャラクターな分、とても良い組み合わせになったと思う。

Q.劇中では長回しのシーンが多いですよね?

A.おそらく7割くらいがワンカット長まわし。もともとは、あんなにたくさんワンカットを使おうと思っていなかった。最初にカメラマンの方と話したのは、かすみ(=三浦透子)の生活を観察するような撮り方にしたい、というもの。かすみのいる環境や周りの人たちも混みで観察したい、というところから、カメラマンとワンカットでの撮り方について話し合った覚えがあります。クランクイン初日のシーンは山から帰ってきたかすみが、父親と話すシーンだったんですよね。実際撮影を始めてみたら、ワンカットで良いものが撮れた。そうすると他のシーンでも『ワンカットで撮れる映画なんだ』という意識というか、そういう''映画のトーン''が出来上がる。それで結果的にワンカット長回しのシーンが多くなりましたね。

Q.掛け合いのリズムで苦労したことは?

A.撮影を始める前にリハーサルを必ず3〜4日をしていて、その現場で導線や演技のテンポであったり、カメラマンと一緒にカメラ割りを作っていく。大勢が早口で掛け合いをするシーンも、そのリハのお陰でスムーズだった。

Q.恋をしない女性を撮るうえで苦労したことは?

A.基本的にアセクシュアル(※注釈︰Aセクシュアル、エイセクシュアルなどと呼ばれ、他者に対して性的欲求や恋愛感情を抱かないセクシュアリティ)であるという前提だが、それを『台詞にしない』というのは決めていた。物心がついたときからそうで、そのことに葛藤しているから人よりも恋愛に対して考えた時間が多かったと思う。そしてこれまで人に伝えても、理解されない経験があるから、半ば諦めてるというか。そういうのをスルーして生きているような人。なので、主人公が(能動的に)説明するシーンは描かないようにした。伝えるとしても、説明せざるを得ない状況で初めて伝えるという設定にした。


(ここから先は試写会に参加している一般の方からの質問になります)

Q.なぜタイトルが『そばかす』なのか?

A.それは僕も分からなくて笑 脚本を書いたアサダさんには理由があると思うので、あとで聞いておきます笑 TwitterとかSNSで発表しますねw

Q.なぜアクセルシャルを描こうと思ったのか?

A.すみません、これもアサダさんにしか分からない笑 自分は監督ですが、監督をオファーされる側だったので。自分が面白いなと思ったのは、世の中に''恋愛映画や恋愛ドラマ''はたくさんあるけど、それって恋愛(感情)が『あるもの』という前提で描かれている。そうではなく、もっと根本的な部分として『恋愛って必要なのか?』『恋愛を構成するものはどういう概念なのか?』みたいなところまで掘り下げている作品は少ないと思ったし、アセクシャルはまだそこまで広く認知されていないセクシャリティなので、先駆けて(映画を)作ることに魅力を感じた

Q.ラストのカメラワークについて

A.ラストだけ手持ちカメラで撮ってます。手持ちカメラになると絵が感情的になるんですよね。他のシーンは固定カメラなどで端整に撮っていたんだけど、あのシーンは映画全体を通して最も感情が揺れたシーンでもあったので、あえて手持ちカメラして、感情の爆発を伝えたかった。

Q.洗濯物を落とすシーンは演出?

A.うーんと、たしかリハをしているときに、(わざとではなく)ホントに洗濯物を落としたんですよね。で、リハでテイクを重ねていくうちに、洗濯物を落としたときの双方のリアクションが却って親子関係を表してるように思えたので、最終的にこちらからも『洗濯を落として』という演出でのリクエストを出した。

Q.主人公がタバコを吸うシーンが印象的でした。

A.ドライブ・マイ・カーでも煙草のシーンがあったので『みんなからドライブ〜を意識してるよ笑』と思われたら恥ずかしいなって思っていました。特に意識はしてないです笑。三浦さん自身も喫煙者だったのと、煙草を吸いたいときって、わりと一人になりたいときというか。それでタバコのシーンを入れた感じですね。

Q.とあるシーンで会場笑いが起こったのが不思議でした。当事者に近い自分とは違う感情の反応というか…。

A.自分が映像を作るうえで大切にしていることは『1つの感情だけにならないこと』なんですよね。例えば同じシーンでも、3割の人が泣いて、3割の人が笑って、残りは怒って…みたいに色んな感情があるほうが豊かなシーンだと思ってます。例えば『真面目なシーンだから真面目なトーンにしよう』というのは、僕の美意識に反するというか。一つの感情だけになってるシーンは、個人的には面白くないと思っているので、大勢いるシーンで、5人いたら5人通りの感情になるほうが、場面としては豊かだと思ってます。

Q.アセクシャルという単語はあえて外した?

A.初稿の脚本では『アセクシャル』という言葉が入っていた。ただ、その単語を使ってしまうと、その問題だけにフォーカスされてしまうというか、アセクシャル固有の問題として取り扱われてしまうと思った。恋愛というのは普遍的なものだし、アセクシャルではない人にも『今は恋愛に興味がない』とか似た境遇になることはあったりするので、あえて外した。

試写会アフタートークレポートは以上になります。
1つ1つの質問に丁寧に、そしてカジュアルな雰囲気で回答してくださって素敵な監督さんでした。

最後に、自分の大好きな(not) HEROINE moviesのコンセプトを紹介します。
愛だの恋だのちょっと苦手…という自分にはとても刺さるコンセプト。
これからの作品も楽しみです。

引用:https://notheroinemovies.com/index.php


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