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試写会『アフターサン』(登壇:シャーロット・ウェルズ監督、女優/岸井ゆきの氏)

※本記事は2023年4月に参加した試写会レポートです。
※この日はシャーロット・ウェルズ監督と、シークレットゲストに女優/岸井ゆきのさんが登壇しました。


あらすじ

あらすじ:11 歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす 31 歳の父親・とトルコのひなびたリゾート地にやってきた。 まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、ふたりは親密な時間をともにする。 20 年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、懐かしい映像のなかに大好きだった父との記憶を手繰り寄せ、当時は知らなかった彼の一面を見出してゆく……(引用:filmarks

オープニングトーク

上映前にシャーロット監督と、途中からサプライズで女優/岸井ゆきのさんが登場し、映画に触れない範囲で作品について語ってくれました。
🍸…シャーロット監督、💐…岸井ゆきのさんの言葉になります。

🎤試写会場(=ヒューマントラストシネマズ渋谷)ではシャーロット監督も敬愛しているシャンタル・アケルマン監督特集もちょうど開催されていますがこの作品のなかでも影響されている部分はありますか?

🍸シャンタル監督作品や、その他の作品から少しずつインスピレーションを受けている。この作品は自分の人生が具体的に含まれている作品でもあるので、これから観てもらえることを嬉しく思います。

🎤岸井さんはこの作品をどのように感じられましたか?

💐色んな人がみて自分の物語だと思える作品だと思った。父親が多くを語らないから、呼吸や後ろ姿から父親の人柄や感情が伝わってきて素晴らしい映画。

🎤シャーロット監督はそれを狙っていましたか?

🍸私の作品づくりで意識しているのは''観客の方が入れる余地を作ること''なんです。それはこれまでの短編作品で学んだことでもあり、今回は長編作品ということもあって''どのくらいのスペース''が正しいんだろうと模索しながら制作・編集をしていました。もしかしたら忍耐が必要な作品かもしれないですが、最後には素晴らしいサプライズがあると思うので楽しんでいただけたらと思います。

🎤岸井さんにとって印象的だったシーンは?

💐(しばらく沈黙)うーん…やっぱり背中。皆さんはこれから鑑賞されると思うので、なるべく特定のシーンには触れないほうが良いかなと思って…背中ですね。あと親子の関係がとても自然で、二人とも自然な雰囲気を感じられたし、お父さんの呼吸をすごく感じた。どんな演出をなさって撮影したのかがとても気になっています。

🎤シャーロット監督、その点いかがでしょう。

🍸シャンタル監督が別作品の取材で''足音をとても大事にしている''と語っていたんです。それもあって足音を意識しました。足音からキャラクターを形成し、それが呼吸にも繋がっているのではないかと思う。私は演技が自然なものであることを好むので、たとえば作品自体がリアリティから離れたところにいたとしても、その世界観の中で自然であることが大事だと考えています。ポールは素晴らしい役者で、自分を信頼し、自分の解釈、彼の解釈を話し合っていく作業ができたのは良かった。また娘への愛情を素晴らしく表現してくれたと思う。

🎤岸井さんからメッセージをどうぞ。

💐この作品の空気感を感じることで、自分の正体は何なのか等、いくつかの答えを得るきっかけになった作品です。

🎤シャーロット監督からメッセージをどうぞ。

🍸この作品は前情報なく観ていただいたほうが良い作品だと思っています。才能ある人たちと一緒に、8年越しに製作した映画です。ぜひスクリーンでご覧ください。


⚠️ここから先はネタバレを含みます。
⚠️未鑑賞の方は、ご注意ください。

引用:公式サイト

⚠️アフタートーク(ネタバレあり)

試写後のアフタートークでは、一般参加者からの質問にもシャーロット監督が答える場面もあり、とても興味深いお話がたくさん聞けました。一部ネタバレも含めた内容になっていますので、未鑑賞の方はご留意ください。

🎤シャンタル監督の影響といえるシーンは?

🍸具体的なシーンはないけど、音や音楽の使い方は影響を受けている。視点を誇張するために使われたり、シーンとリンクした音楽であったり。特に呼吸については意識していて、父親の声が大きくなっていくのに対して、娘の呼吸が落ち着いているシーンなど対比を表せるようにした。

🎤二人の親子が本物の親子に見え、あらゆるシーンでとても自然だった。特に会話がとても自然で脚本に含まれているのかアドリブなのか、どのような演出プランを立てたのか教えてください。

🍸会話のほとんどは脚本どおり。キャストが決まったときに、その人なりの抑揚があるので脚本を微調整した程度。現場でアドリブの会話もあったし、それは構わないけど自分にとっては編集のときの悩みのタネではありました笑 演出プランとしては娘役のフランキーにはト書き(*補足:台本に書かれた、登場人物の動作や行動、心情などを指示した台詞以外の文章)がない台詞だけの脚本を渡しました。また、前もって渡さず、撮影現場で渡し、あまり台詞を覚えてない状態で現場入りしてもらった。そのほうが自然なものが撮れると思った。撮影の際には時々助け舟を出して台詞を言ってもらうなどした。また、撮影に入る前に2週間ほど準備期間を設けた。ポール(父親役)には2週間の間でフランキー(娘役)のケアができるようになって欲しいと伝えた。もちろん他のスタッフも入りながらのコミュニケーションではあるが、一緒にいるときにトイレや食事などのケアができるようになってもらった。例えば今彼女はお腹を空かせていないかな?とかね。実際、撮影を終える頃にポールは''自分よりもはるかに年下の女のコとこんなに良い絆が生まれるなんて!''と驚いていたよ。

🎤自分は2度目の試写会で、今回も号泣しました。素晴らしい映画をありがとうございます。劇中に流れる曲が印象的で、どれもラブソングではなく、愛の喪失が歌詞のなかで表現されている。これらの曲はどのように選んだのですか?

🍸泣かせてしまって申し訳ない。楽曲の1つでもある『テンダー』は元々脚本の段階から入れてあった楽曲で、そこまで歌詞を重視せずに入れていた。音楽はときに人間の感情を動かし、また映像と合わせるとさらにエモーショナルな部分を音楽が担ってくれる。編集のときには、少しあからさま過ぎないかと心配したけど、仕上がりとしてはちょうど良かったと思う。3曲のうち1つは、自分が人生で初めて覚えた曲で思い入れがある。音楽によって、シーンに抑揚がついたり、あるいは逆に抑制したりと、音楽がストーリーテリングの一部になったんじゃないかなと思う。

🎤幼少期とソフィと現在のソフィの描き方について、シーンの途中でインサートするような手法をとったのはなぜですか?

🍸脚本を仕上げている段階で、これは大人のソフィの視点から描かれた物語だということに気づいたんだ。そして大人になったソフィをどう描くかを考えたときに、少女時代を現在進行系のように撮りたかった。大人になったソフィが夜中に起きるシーンは、最初から脚本のなかにあったが編集段階でそのシーンを入れるかはけっこう悩んだ。最終的にプロデューサーの助言と自分の直感とさても入れたほうが良いと判断して予定通り入れることとした。そして彼女が''大人になったソフィ''なんだというのを分かってもらうことが自分にとっては挑戦の一つだった。台詞ではなく、あのカーペットでシンクロさせる手法が編み出せたのは良かったと思う。幼少期が''現在進行系ではない''というのは、サプライズにするつもりはなかったので幼少期のソフィと大人のソフィを少しずつブレンドしていって、誕生日をきっかけに子供時代の記憶を反芻しているように見せたかった。

🎤消したテレビの反射に映る登場人物など、カメラの遠隔的な表現が印象的。自分はエドワード・ヤンの作品を思い浮かべたのですがアジア映画の影響はありますか?

🍸イエス。エドワード・ヤン監督に限らず、アジアの様々な監督作品の影響を受けている。エドワード・ヤン監督については、撮影監督が彼のファンでその影響で自分も作品を鑑賞した。特に人のいない空間がとても美しいと思っている。人のいない空間を美しく撮影さるには、ものすごいスキルが必要で、また撮影にもたくさんの時間をかけている。本作においても、後半にかけては人のいない空間の美しさを意識して撮っている。

🎤最後に一言メッセージをお願いします

🍸今日はありがとうございました。日本での公開、そして試写会イベントへの参加について声をかけられYES!と即答しました。日本で公開されることをとても楽しみにしています。もしこの作品を気に入ってもらえたら、ぜひ友人たちにオススメしてほしいです。もし気に入らなかったら友人たちにはナイショにしておいてください笑

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岸井ゆきのさんがシャーロット監督の作品を観ているように、シャーロット監督も岸井ゆきの主演作品『ケイコ 目を澄ませて』を観たことがあるそうで、お二人がお互いをリスペクトしているような空気感がとても素敵でした。

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