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ノベルセラピーから生まれた物語「光をとどけに」

どこまでも広がる草原に、巻き貝の形をした会社がありました。真っ白な巻き貝ですが、ときどき光の加減で虹色が差します。外側も内側も、そんな白い建物です。

そこで働いているのは、小さな小さな白い人が、たったひとりでした。そこでしているのは、世界中に白や虹色やオーロラ色の光を飛ばすことです。その光は、人の心を優しくしたり、穏やかにしたり、癒したり楽しくさせたりするのです。
でも、たったひとりで仕事してるので、それはそれは忙しくて大変です。小さな小さな白い人は、手伝ってくれる仲間がほしいと思っていました。

そしてある日のこと、その仲間を探しにいく旅に出ることにしました。巻き貝から出る光に乗って、小さな小さな白い人は飛び立ちました。

しばらくの間は雲ひとつない青空で、旅は順調でしたが、急に強い風や雨に襲われました。それは、空を流れる光に気づいた雨や風の神さまがイタズラをしたのです。小さな小さな白い人は、世界を清浄にするために光を届ける仕事をしていて、その仲間を探しに行くところだから邪魔をしないでほしいと一生懸命話しました。

雨や風の神さまは、小さな小さな白い人の話を最初はバカにして聞いていましたが、仕方がないなと笑って、人間の世界に運んでくれました。
たどり着いた人間の街には、草も木もありません。硬い四角い高い建物がたくさん並んでいて、その間の硬い道を人間は下ばかり見て歩いています。
小さな小さな白い人はビックリしましたが、よく見るとその人たちの胸の辺りには、きれいな光が小さく灯っているのに気がつきました。それは、小さな小さな白い人にしか見えないモノでした。小さな小さな白い人は、その胸の光のホンのかけらを、ちょっとずつちょっとずつ集めました。そして、巻き貝の会社に持ち帰りました。

みんなから、ちょっとずつちょっとずつ集めた光のかけらは、大きな大きなエネルギーとなって、巻き貝から世界中に光を放ち続けることができました。おかげで小さな小さな白い人は、今までよりずっと楽に仕事ができるようになりました。

さて、仲間探しですが、あれから雨や風の神さまは、人間の世界から巻き貝の会社まで、人の心の光のかけらを届けるお手伝いをしてくれているのです。
実は、雨の神さまも風の神さまも、雨で洗い流したり風で吹き払ったりと、小さな小さな白い人と同じ目的をもって働いていたのです。人の心の中にもその力のかけらがあるなんて、その神さまたちも知らなかったのでした。
                おしまい

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