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料亭とぬいぐるみ

おじいちゃんは 起業家だった
創業者であり 社長さんだった
私はその初孫として 
ずいぶん可愛がってもらった
ただし 男の子として という感覚で

実にいろんな経験を 
プレゼントしてくれたが
印象に残っているのが 高級料亭
夜の繁華街にある 行きつけの接待場所
いつも美しい和装の美女が おもてなしくださった

大好きなステーキをペロリ のあとは
若い着物の仲居さんが 手を引いて
夜の街にある駄菓子屋に お連れくださった
その道すがら ぬいぐるみを売る店があり
小さな私は 大人の街でなぜぬいぐるみ?と訊いた

仲居さんは朗らかに笑って 答えた
この街で働く女性へ 男性がプレゼントするためですよ
男の子のような私は 全く理解できなかった
子どもの自分ですら ぬいぐるみなどいらないのに
大人の女の人は なぜ子供が欲しがるものを悦ぶのか?

何十年も経った今 夫と繁華街をデートする度に
あの頃の 小さな女の子を思い出す
今は 女の人生を存分に謳歌している私
夫には素直に いろんなものをおねだりできる
ぬいぐるみやスイーツは やっぱりいらないけれど


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