パチ依存の父と母

人生で1番古い記憶の景色のほとんどは狭いアパートのリビングでテレビを眺めているところだ。

父は私に退屈をさせぬようにケーブルテレビの有料チャンネルをいくつか契約していた。
そこから幼稚園や学校が休みの時は日中それで時間を潰していた。その割に見ていたアニメの内容はよく思い出せない。

空調は初めから調整されていたけど冬だけはストーブもコタツがあっても酷く寒く、辛かった。なにより心細かった。寒さがあるとそれがより一層酷く感じられた。

父と母はパチ閉店時間前後にやっと帰ってくる。
たまに父1人で帰ってくる。
その時母は仲違いで家出している時期か、水商売をしている時期だったと思う。
父と母が共に帰ってきた時は、大抵は負けて帰ってきて母は危機感がないのか負けたことにニヤついており、父は不機嫌だった。

父が1人で帰ってきた時は何か、何か、私の粗を探していた。そして私に怒鳴った。負けてイライラしていたのだろう。
たまにちょい負けしたときかプラマイゼロだったのか少し買ったのか機嫌が悪くない時は、
しゃがんで私を抱き締めてくれた。
父は長袖のポロシャツにチョッキを来ていた。緑など渋い色ばかり好んできていたと思う。
お互い抱きしめ合うと、パチ独特の色んなタバコが混じった匂いがした。

私はじっとテレビの前で座っているときや、
寒さに凍えて身を縮めているときや、
父に抱き締められて何度も「もう一人にしないから」と言われて裏切られても変わらずに帰りを待っていた日々を思い出すと泣きたくなる。

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