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「1 時間でパッとわかる なるほど現代世界史~ 資本主義VS共産主義、何があった!?」 (その4・最終回)

 最後の一章 

  まずは一章書き上げて、
「こういうんでいいでしょうか?」  
 と送ってみた。編集Mさんの反応は、
「そう、こういうのです! この調子でお願いします」
 というもの。
 ぼくはホッとして、以降一章書き上げるごとに送っていった。毎度、Mさんの反応はよかった。途中滞る時もあったけど、最初に依頼があってから一年近くかかって、ようやく最終章にたどり着いた。
 藤井青銅なんて三文作家に一年の猶予を与えてくれるだけでも、大変ありがたいことだ。しかし、いくらなんでも一年以上かけてはモウシワケない。ぼくは、
「最後の一章をお渡しします」
 と連絡して、喫茶店でお会いする日時を約束した。とはいえ、この時点で原稿は最後まで出来ていない。よくあることで、期日を決めて自分を追い込もうというわけだ。 

 大ドンデン返し! 

 はたして、その当日。
 予想に反して、原稿は仕上がっていなかった。どうするか?  
 先んずれば人を制する! 喫茶店で会うなり、ぼくはMさんに平謝りに謝る作戦に出た。
「申し訳ありません!わざわざ来てもらったのに、最後まで出来てないんです。ゴメンナサイ! あとちょっとなんですが…。あと十日…いや、一週間ほどで最後まで行きます。出来しだいお送りします!」
 自分から呼び出しておいてだから、明らかに分が悪い。ぼくはコメツキバッタのように謝った。
 Mさんはにっこり笑って、「いいですよ」と言ってくれた。よかった…。ところが彼女は、
「実は私の方からも一つ、ご報告があるんです」
 と言うのだ。なんだろう?
「私、出版社を辞めます」
「…へ?」
 ここまで書いてなかったが、彼女はDという出版社に勤めていた。ぼくはその編集部を訪れ、編集長ともお会いしていた。なんと、その編集長ごと編集部丸々がD社を離れる、というのだ。
(ガ~~~~~ン!)

「青天の霹靂」とは、これか。世の中には、こういう大ドンデン返しもあるのか!! 
 この時、ぼくの頭をかけめぐったのは二つのことだ。まずは、
①じゃ、一年に渡って苦労して書いてきた原稿はどうなるんだ? 無駄骨か? 
 この考えが、ぐるぐる頭の中を回る。が、ややおいて、
②だったら、今日会ったとき最初に言ってくれよ。そっちにも弱みがあるんなら、ぼくはあんなにペコペコ謝んなくてもよかったんじゃないか? 
 ま、早まって「先行謝罪作戦」をとったぼくのミスですけどね。
 しかし、もちろんMさんはぼくなんかよりちゃんとした大人なので、
「ご安心ください。新しく移る出版社で、この原稿は本にします」
 と言ってくれ、ほっとした。
 それが、現在の静山社文庫のものだ。 

 原稿を全部書き上げたあと、一応、歴史のプロ・金谷俊一郎先生にチェックしてもらった。金谷さんには、以前『歴史Web』という本をチェックしてもらったことがあるのだ。ミスはほとんどなく、「よくお勉強しました」とお褒めの言葉をいただいた。
 出版後、「これはわかりやすい!」と評判がいいようだ。「世界史の近・現代って、ゴチャゴチャしてよくわかんない」という方は、ぜひどうぞ!

 一冊の本の裏側にも色々と物語がある、というお話でした。

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。