子どもにはわからない

 人の味覚ってのは不思議ですね。
 子どもの頃に大好きだったものが、大人になるとそんなに好きでもなくなることがある。反対に、子どもの頃はとても食べられなかったものが、大人になると、「お。これうまいじゃないか」となるものもある。

 人の味覚で、一番早く発達するのは「甘くておいしい」という感覚でしょうね。実際、子どもは甘いものが大好きですから。
 さらに「しょっぱくておいしい」「酸っぱくておいしい」なんて感覚も身につける。最近はスナック菓子なんかで、「辛くておいしい」なんて味覚も身につけてますね、子どものくせに。

 でも「苦くておいしい」という感覚は、ある程度成長してはじめて身につく味覚なんじゃないか。「ほろ苦い」とか「苦みばしった」とかいうのは、完全に大人の味。

 秋刀魚の塩焼きのワタ―つまり、内臓―のうまさってのは、その苦味の代表でしょう。
 失恋の一つや二つ経験し、仕事や人間関係なんかで思い通りにいかないことも経験し、
「ああ、人生、うまくいかんもんだなぁ…」
 なんてほろ苦さを知ってこそ、初めて味わえるんですよ、苦味ってのは。

 この秋刀魚のワタのうまさ、子どもに判ってたまるか。

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