増殖するファミリー

 少子化の世の中。いまや、子どもが三人もいれば、
「おや。賑やかでいいですね」
 と、多い方だろう。
 我々の親の世代はというと、七~八人が当たり前。ずいぶんと兄弟・姉妹が多かった。ところが、それ以上にファミリーが多いのが、「丼もの」。そう、食べ物の丼ものだ。

 まず最初、江戸時代に生まれたのが「鰻丼」。これが、丼ファミリーの長男にあたるわけだ。
 江戸末期に生まれたのが、「深川丼」。まあ、そうメジャーな丼ではないが、アサリやハマグリが乗ったもの。「深川飯」という言い方で、時代小説にも出てくる。
 明治始めには「開化丼」が生まれ、これは昭和の時代に「牛丼」という名前で大きく花開く。
 明治中期には「親子丼」が誕生。さらに、大正時代に入ると「カツ丼」も生まれる。
 ……とまあ、このあたりが丼ファミリーの年長者。兄さん・姉さんグループだ。

「天丼」の誕生がどのあたりかは、残念ながらわからない。けれど、天ぷらは江戸の時代には生まれているので、ま、この同じ兄さん・姉さんの仲間に入るのだろう。
 ところが、こんなものでは収まらないのが、丼ファミリーの凄さ。今度は弟・妹グループの方を、思いつくままあげると、玉子丼、鉄火丼、イクラ丼、ウニイクラ丼、海鮮丼、他人丼、ネギトロ丼、豚丼…………と数限りなくある。
 さらには、中華丼、マーボー丼、という中国からの親戚に加え、韓国からはカルビ丼、インドからはカレー丼、そして西洋からはステーキ丼、ロコモコ丼なんてものまで。

 なにしろ、丼にご飯を入れて、その上にナニカを載せれば「ナントカ丼」ができあがるのだから、新メニューはいくらでもできる。丼ファミリーは、これからもどんどん増殖していくことだろう。
 増えれば増えたぶんだけ、新しい味の楽しみも増えるというわけだから、大歓迎ではあるが。

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