残すこと

テレビ、ラジオ、音楽、漫画、映画、演劇、演芸……エンタメ全般で、裏側を書いた本が好きだ。当事者が回顧的に書いた本も、誰かが取材して書いた本も、好きだ。
もちろん、当事者が書いたものでも思い込みがあるし、関係者に配慮してボカした部分もあるだろう。自分をカッコよく見せる嘘も(たぶん)忍び込んでいる。まるまる信じることはできないけどね。

けれど、そこも面白いのだ。「きっと本当はこうだったのでは?」と推測できる。「ここが曖昧な理由は何だろう?」と考えれば、別の事実も想像できる。もし他の誰かの視点から書かれた本があれば、それとつきあわせれば、なんとなく全体像を想像することもできる。

なのでぼくは、放送作家・脚本家は「自分が関わった番組、企画についてのことは書いておくべき」だと思っている。後輩作家にはよく、
「そのことを記録しておいて、あとで書きなさいよ」
と言う。リアルタイムでは遠慮する相手もあるだろうけど、時間が経てばたいていは書けるから。

大袈裟な言い方をすると、それは「エンタメに関わる人間の責務である」とすら思っている。だって、誰かが書いておかないと消えてしまうのだ。プロデューサー、ディレクター…など関係者の誰が書いてもいいのだが、曲がりなりにも「作家」という肩書の者が、まず第一にやるべき仕事だろうと思っている。
そのためには記録をして、資料は残しておくべき。

ぼくが『ラジオな日々』『ラジオにもほどがある』『幸せな裏方』などの本を書き、「この話したかな?」というコラムを連載したのは、そういう理由なのだ。
「そうはいうけど、本にするのはハードルが高い」
という作家たちの気持ちもわかる。
でも現代は、ここみたいなネットがあるじゃないか。放送作家・脚本家たちは、もっとみんな書いて欲しい!

記録して、資料を残す。残しておけば、判断は後世の誰かがやってくれるかもしれないしね。これはエンタメだけでのことではないけれど。

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。