役に立つこと
数人のチームで、なにかをすることがある。仕事の場合もあれば、スポーツ競技の場合も。我々が、よく経験することだ。
チームには、それぞれ得意な技を持った人間が集められる。仕事ならば、計算の早いやつと、交渉上手なやつと、力自慢と、接客のうまいやつと……というような具合。
スポーツならば、足の速いやつと、ジャンプ力のあるやつと、頑丈なやつと、先読みのできるやつと……という具合。
ところがそんな中で、
「あれ? あいつ、いったい何の役に立っているのか?」
と、思うケースがある。
とりたてて何かが勝れている、というわけではない。
「別に、一人くらいいなくてもたいして変わらないんじゃないか?」
というわけで、チームから外してみる。
ところが不思議なことに、そうすると、なんだか全体がギクシャクして、うまくまわらなくなる。こういうことはないだろうか?
一見、目に見える役割がないように思えても、全体にとっては欠かせない存在であることも、あるのだ。
ところで――、
ビーフシチューを作る時の材料は、当然ながらまず牛肉、そしてタマネギ、ニンジンなどの野菜に、トマトピューレ、ドミグラスソース……どれ一つ欠けても、おいしいビーフシチューはできない。
ところが、この他に「ブーケガルニ」を入れることを、忘れてはいけない。月桂樹の葉やグローブ、セージ、それにローズマリーやタイムなど、ハーブの類を束ねたもの。
食べるわけではないのだが、これがなければ主役のビーフが引き立たない。
「人生、ブーケガルニのような生き方ってのも大切なんだよ」
なんて一人つぶやきながら、今夜は、うまいビーフシチューを食べる。
(以上「ビーフシチュー」三題 2007/2/10 放送)
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