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「1 時間でパッとわかる なるほど現代世界史~ 資本主義VS共産主義、何があった!?」 (その3)
熱弁
「最近の編集者は、売れてる作家に『なにかお願いします』と頼むか、売れてる本のモノマネ企画を立てるか、ばっかりなんです」
と旧知の編集者I氏は言う。
「そうじゃない。編集者っていうのは、自分が面白いと思った人に頼んだり、面白いと思った企画を立てるべきなんです。その編集者(M女史のこと)は、面識のない藤井さんの連絡先を探して、わざわざ頼んで来たんでしょ? 今や、そういう編集者は貴重なんです」
と彼は熱く続ける。
「だから藤井さんは、世界史が得意とか不得意とか言ってないで、絶対に受けなきゃいけません!」
なるほどそうだな、と思った(冷静に考えれば、彼は「あんたは売れてない作家なんだから」という大前提で喋ってるわけだが、ま、それは真実だから腹も立たない)。
「それに…、藤井さんに頼むということで、編集部で企画を通したわけでしょ? 企画を通すのは大変なんですから」
「あ、そうか…」
と今さらながらに気がついた。編集会議で「藤井青銅」なんて三文作家の名前で企画を通すのには、苦労したはずだ。「誰だ、それ?」「書けるのか?」「売れるのか?」なんて色々言われたに違いない。
ようやくGOが出て、いざ作家に連絡を取ると、「お断りします」じゃ、あまりにひどいじゃないか!
ぼくは深く深く納得して、反省して、すぐ件の編集者M女史に連絡した。
「頑張って、書いてみます」
段ボール箱がド~ン!
さっそく編集部にうかがって、編集のMさんと、編集長にもお会いした。電話で話した時に感じたように、Mさんは聡明な女性だった。
引き受けたとはいえ、ぼくはそんなに現代世界史に詳しくはない。
「少し勉強する時間を下さい」
と素直にお願いした。
「大丈夫です。お待ちします」
という暖かい言葉をいただいた。
そして数日後、自宅に段ボール箱がド~ンと届いたのだ。中を開けると、資本主義の本、共産主義の本、マルクスの本、現代史の本…などがギッシリ入っている。
「これを読んで勉強しなさい」
ということだ。
ぼくはこれまで、こういう形で編集者さんとタッグを組んだことがなかったので、嬉しかった(と同時に、プレッシャーも感じたけどね)。
それから数ヶ月、この資料本を読みつつ、一方自分でもあれこれと参考図書を買って読みながら、ひたすら集中勉強した。
ウォール街の鐘の声
いろいろ本を読んでいる途中で「見えた!」と思い、以下のフレーズがうかんだ。
ウォール街の鐘の声
諸行無常の響きあり
レーニン廟の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる国も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
たけき国も遂にはほろびぬ
ひとえに風の前の塵に同じ
これを書いた、たった一枚の原稿を見せて、
「これでいきます!」
と宣言した。
編集のMさんは、
「?????」
という顔をしていたけど……。
(このパロディ詩は、本の巻頭と、さらに巻末にもう一度掲載しています)
こうして、ぼくは順調に書き始めた。
ところが!!
このあともう一つ、予想もしない展開が待っていたのだ。
(まだ続くノダ!)
お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。