干支シリーズ(1999年/社会・文化)

NHK-FMの「青春アドベンチャー」で、毎年一年の最後に放送する通称「干支シリーズ」と呼ばれたものがありました。1993年から2009年までの17年間、私は毎年この番組を書いていました。

その残っている原稿データから、ランダムに紹介しています。まあ、こうやって再掲してみると、我ながら「くだらないことを書いてるなあ」と思います。が、それも含めて「これが時代の記録なのだ」と考えることにしています。
今回は「1999年」。1999年といえば…そうアノ年です! この年なにがあったか憶えてますか?

この日のジャンルは「社会・文化」。「オープニングの導入部分」と「コント部分3本」と最後の「銀河連邦への報告書」だけを抜き出します。
1999年の干支「ウサギ」役は女性、翌年の干支「タツ」役は男性でした。誰が演じていたかは、最後に記載します。

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【1999年のOP】
SE  ピョンピョン跳ねるバネの音

ウサギ 私はウサギよ。この可愛いウサちゃんの姿に変身して、ピョンピョン跳ねながら、今年一年この国を監視してきたの。そして来年は?
タツ ごくろうさま。今度は私だ。
ウサギ よかったぁ。これで助かった。
タツ 何が?
ウサギ だって、ウサギって鳴き声がないでしょ。ラジオじゃ伝わりにくくて困ってたのよ。でも、年が変わればあなたにバトンタッチできるもんね。ウサギ年の次、来年は何に変身するんだっけ?
タツ これだよ。

SE  燃えよドラゴンのテーマ

ウサギ カッコいい! ブルース・リーに変身?
タツ ブルース・リー年なんて干支はないだろ。
ウサギ じゃ、カンフー年?
タツ その方がもっとなさそうじゃないか! ドラゴンだよ。
ウサギ あぁ、タツね。
タツ そう。来年はタツ年。
ウサギ ……で、タツってどう鳴くの?
タツ さぁ………。
ウサギ 事態は全然変わらないじゃないの!

TM CI~BG

N  [タイトル]

   ~FO

SE  SF的コンピュータ音~BG

ウサギ この星の文明を監視するために、私たちは銀河連邦から派遣されてるのよね。
タツ なにせ、この太陽系第三惑星というやつは文明が荒っぽいので有名だからな。銀河連邦に入れてもいいレベルに達するまで、我々が見ておいてやらなきゃ。
ウサギ 12年に一回の持ち回りで、今年は私、来年があなた。
タツ この引継ぎでさ、今回はアノ話を聞くのを楽しみにやって来たんだよ。
ウサギ アノ話って?
タツ ほら「1999年の7の月」。
ウサギ そうそう。今年がそうだったのよね。
タツ で、どうだった? 地球人は大パニックになった?
ウサギ じゃ、まずはそれからいきましょうか。今年一年、この国でおきた社会的な出来事をレクチャーするわ。

SE  ワープ音

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【1999年の社会・文化①】
SE  鉄階段を走る靴音

男1 ようやくつき止めた。たぶんやつはこの中にいる。俺はいま入口だ。そっちはどうだ、オーバー?

SE  トランシーバー音

男2(フィルター)こっちは、いま裏口の方に向かっている。突入するのはもう少し待ってくれ、オーバー?

SE  トランシーバー音

男1 OK。気付かれるんじゃないぞ、オーバー?

タツ あのぅ、お取り込み中のところ、すみません。
男1 なんだ、オーバー?
ウサギ カッコいいですね。コートの襟なんか立てて。
男1 これはコートじゃない。オーバーだ、オーバー?
タツ 張り込みですか?
男1 ま、そんなようなもんだ。オーバー。

SE  トランシーバー音

男2(フィルター)ただいま裏口に着きました。逃げ出した形跡は見られません、オーバー。
男1 よし。踏み込もう。1・2の……3!

SE  ドア、バンと開ける

男1 やっとつき止めたぞ。
男2(OFF)ここにいたのか。さあ、隠れてないで出てくるんだ。
先生(OFF→ON)見つかったかあ……。すみません、私が悪かったんです。許して下さい……。
ウサギ この方は?
男1 ノストラダムス研究家の一人でね。「1999年の7の月に人類が終わる」……みたいなことを本に書いて大ヒットを飛ばしたんだ。(作者注・ほとんど五島勉さんだが、そうではありません。別の誰かです。誰だかは知らんが)
ウサギ あれはあなたが作ったの?
先生 作ったんじゃない。ちゃんと元の本に出ているんだ。

M おどろおどろしい曲~BG

先生(エコー)ノストラダムスの「諸世紀」第10章その72
1999年の7の月
空から驚くほど強い恐怖の大王が降りてきて
アンゴルモアの大王をよみがえらせる
その前後、マルスはほどよく統治するだろう

   ~FO

先生 ……とね。
これは予言を遊ぶエンターテインメントと解釈して書いたんですけど、まさかこんなに長い間世間を騒がせるネタになるとは思わなかったんです。すみません!
タツ そうか。結局何もおこらなかった責任をとらせようと?
男1 いえ、そうではないんです。先生、お願いします!
男2 お願いします!
先生 は?
男1 どうか今一度、あらたなる予言を!
ウサギ ちょっと、どういうこと?
男1 私、出版社の人間です。
男2 私、放送局の人間です。
男1 あの予言のおかげで、私たちの業界はずいぶん儲けさせてもらいました。
ウサギ そういえばこれまでに、ずいぶんいろんな本が出ましたもんねぇ。他にもテレビとかラジオの番組、映画、アニメ……と。
男2 しかし、長年利益を生んだ金の卵も今年で賞味期限が切れてしまった。
男1 そこで、あらたなる人類滅亡の予言をば、お願いしたいのです。
タツ だって、ノストラダムスがもうそう書いてるんだから今更変えようがないだろ?
男1 いや。たとえば「1999の7の月」ではなく「1999と7」を足すんだとして、2006年がハルマゲドンだとか。
タツ そんな都合のいい。
男1 構うもんか。「魏史倭人伝」の解釈なんて、学者がみんなこんなことやってるんだから。
ウサギ じゃ、あと7年後にこの世が終わるの?
男2 それだと早く商売が終わってしまうな。できれば20年後あたりを滅亡の年にしてもらえると……。
先生 ならば、この予言は第10章に書かれているので、1999に10を足して2009年が終末というのは?
男2 もう一声!
先生 そこにノストラダムスの年齢を足して、12星座の数を引いて、悪魔の数字である6も足して、でもって意味もなく下一桁を切って……2020年にこの世が終わるという解釈は?
男1 いいですねぇ、ほどよい数字だ!
男2 決定! これでまた一儲けできる!
三人 ワハハハ……。
ウサギ・タツ 懲りない人たち……。

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