エンジョイフットボールの難しさ

 うちのチームは「サッカーが大好きである」ことに最も重きを置いている。楽しくなければ意味がない。それには私も大いに賛成である。前にも書いたが、罵声を飛ばし、子どもを罵り、ミスに対して前時代的な罰を与える…子ども達が全く楽しそうではない。それでは本当にサッカーが楽しめているのか疑問である。「どんなに辛い練習をしても、「サッカーが好きでしょうがない」という奴にいつか負ける日が来る。」私もそう思う。

 でも、最近考えることがある。エンジョイ、という意味について。うちは弱小チームだし、エンジョイすることに重きを置いている。だけど練習がゆるい、というわけではない。走りのトレーニングだってあるし、厳しい練習も沢山ある。怒鳴る代わりに「自分自身で沢山考えて動く」練習がとても多い。コーチは怒鳴らないけど、ふざけてたりやる気がなかったりするメンバーには「帰っていいよ、もう練習しなくていいよ」ということもある。ただ、エンジョイするというのは人によって全然違うのだということ。
 例えば「今日はちょっと練習行きたくないな…疲れたし、めんどくさいな…」という日は練習をお休みする。練習はしょっちゅうお休みするけど、試合になると来る、という場合。その子にとっては、めんどくさい練習は行きたくないけど、楽しい試合の時だけ行きたい。無理してまで練習に行っても楽しくない。これはその子にとってサッカーをエンジョイしている、ということなのかもしれない。エンジョイは他人に定義される事じゃないからだ。エンジョイフットボールを標榜するチームは、練習は休んで試合にだけ来るというような場合でも、その子が能力的にまわりに追いついていなくても、出場の機会を与えられることが多い。 その結果、試合に負けてしまうとしても。これは、一生懸命やりたい、強くなりたい、そして試合に勝ちたいという子のエンジョイを奪ってしまうことにはならないだろうか。以前ツイッターで「練習を家族旅行で休んだらスタメンを外された、ひどい!!」というものを見かけた。それがひどいのなら、完全に実力主義にすべきということだろうか。そうしたら「すごく上手な子はどんだけ練習を休もうと絶対にスタメン」「上手い子にはスタメンを保証して練習を休むことを許可」ということになってしまう。練習を優先させていたら、家族旅行なんてずっといけない、という気持ちも分かるが、家族を優先させたい場合はすれば良いと思う。でも、休んでいる間の練習で控えの子がすごく上手くメンバーにハマって良いプレーが出来た場合、スタメンを奪われるリスクがあるのは当たり前だと思う。この考えは古いのだろうか。
 でもただスポーツを楽しんでやりたいだけで、毎週末とかは望んでないという場合もあるだろう。そういう場合はサッカーはもちろん習い事としてのスポーツは沢山ある。「チームや少年団に入る」だけが選択肢じゃないということはもっと知られても良いと思う。スクールであれば、サッカーでも野球でも週に1〜2回、身体を動かすことが出来るし、スタメン争いや毎週末拘束されることもない。「本気でやりたい子」のエンジョイを奪うこともない。

 これが部活となるとなおさらである。昨今「部活のブラック化」が叫ばれているが、部活の全入を定めている中学校の部活は「ガチでやりたい子」「そこそこで楽しみたい子」が混在してしまっていることが原因なのではないかと思う。先生の労働時間の軽減から、外部コーチの導入や部活動の時間日数の制限が検討されているようだが、それでは根本的な解決は出来ないのではないだろうか。おそらく中体連の全国大会、関東大会、県大会すべて廃止、というのは現実的ではないから部活動の日数制限をしたところで強豪校は「自主練習」という名の練習や、「保護者会主催練習」として残ってしまうと思う。それに「たくさん練習したい」という子だっているだろう。(もちろん長時間練習すれば良いというスポ根には私も懐疑的ではある)
だから私は部活動も大学のように「部活」と「サークル」に分けられないのかなぁと思っている。同じスポーツでも「サッカー部」と「サッカーサークル」がある、みたいな感じで。ただでさえ少子化なので難しいだろうか。昨今の風潮では、本気でやりたい子は「クラブチーム」へ、スポーツを楽しみたい場合は「部活」へという流れが強いように感じる(実際私のまわりでもそういう話をよく聞く)それが現実的なところかもしれないが、そうすると「クラブチーム」を選択出来ない経済状況の子の芽を奪うことになってしまうのではないか。そういう子に、奨学金制度みたいなものが出来ないだろうか。海外ではすごく才能のある子(ネイマールとかがそうだ)にはむしろ家族に経済支援するチームもあるらしい。

 小学生のスポーツ環境でも、自分のレベルや意識によってチームを選べるくらい充実していれば良いのだが、ただでさえ少子化なのか人数集めに苦慮する少年団やチームも多いので現実的には難しい。選べて「しごき系強豪クラブか否か」ぐらいか。欧州では少年クラブはレベル別のリーグ戦のみをおこなっており、移籍自由、育成に重きをおくため順位を競わないところもある、とも聞く。スポーツを本気でやりたい子も、ゆるく自分のペースで楽しみたい子も、みんなが様々な環境でエンジョイ出来る環境、それが日本スポーツの全体の底上げになるんじゃないかなーと思うのである。

いただいたサポートは次女が海外挑戦するときの費用として大切に貯めておきたいと思います!!よろしくお願いします。