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TOKYO 2020オリパラでボランティアしました

もう随分前ですが、先日開催されたTOKYO 2020(東京オリンピック・パラリンピック)に私はボランティアとして参加しました。

一生に一度あるかないかの機会なので、備忘録として私のボランティア内容や感じたことを書き留めます。

会場で大会関係者を支えるField cast

ボランティアは会場で大会関係者を支えるField castと会場周辺で観戦者や一般者を支えるCity castの大きく2種類がありました。

私はせっかく活動するならボランティアじゃないと入れない場所で活動したいという気持ちでField castを選びました。

開催前の準備

オリンピックが始まる前の期間は、パンデミック前に集合研修に約2回参加、その後一度制服を取りに行ったくらいで、あとはe-learningやメールでのやりとりのみでボランティア活動初日を迎えました。

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2019/12 Field Cast共通研修

オリンピック:ハンドボールのヘルスケアサポート

オリンピックではハンドボールのヘルスケアサポートという、選手に怪我など救急対応が必要になった場合にサポートする役割になりました。

私は獣医師で製薬企業勤務なので選ばれたのだと思います。とは言っても一般人の枠だったので、必ず看護師などの医療従事者とセットで活動しました。

活動場所は試合会場の国立代々木競技場の他、各国チームが試合の合間に練習できる会場が都内に3箇所ありました。私は開会式の7/23に代々木、オリンピック中2日間練習会場で計3日活動しました。

私が担当したチームは男子バーレーン🇧🇭、男子スペイン🇪🇸、女子韓国チーム🇰🇷でいずれも準々決勝の前日の練習でした。

練習中に怪我をした選手はいなかったので、メディカルらしいこととしては練習前にAEDの点検を行ったくらいで、実際は練習の様子を眺めたり、練習前後に他のボランティアの手伝いをしたりしました。

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国立代々木競技場

パラリンピック:5人制(ブラインド)サッカーのアスリートサービス

ブラインドサッカーの合宿場でボランティアした経験があるおかげか、パラリンピックではブラインドサッカー(パラリンピックでは5人制サッカー)で活動することになりました。場所はTOKYO 2020のために作られた青海アーバンスポーツパークです。

私の役割はアスリートサービスという選手を帯同する役割で、バスで会場に到着してから着替え部屋へ、練習ピッチや本番ピッチへ、そして帰りのバスへ、全て帯同しました。

事前に1回の会場研修と開会式の日の下見があり、試合のある2日間活動しました。
私が担当したのは2日とも男子日本チーム🇯🇵。予選リーグ最後の準決勝進出をかけた中国との試合と、スペインとの5位決定戦でした。

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テレビ中継された試合。真ん中の入口に私が座っています笑


以上が私の活動内容のご紹介でした。ここからはオリパラボランティアを通じて私が感じたことをいくつかお伝えします。

ウォーミングアップは大切

ボランティアが始まって最初に衝撃を受けたのは、ハンドボールチームが最初にサッカーを始めたことです。

もちろんサッカーピッチではなくて体育館で、サッカーボールではなくハンドボールでプレーしているのですが、国代表のチームが2つに分かれて片方のチームがビブスをつけて、コーチなども参加してとても楽しそうでした。

そう、「楽しそう」でした。点が入る度に皆で大盛り上がりしていました。

普通にドリブル上手いし予想以上に長く試合をしていたので、「本当にハンドボールの選手たちなの?」と思うほどでした。

しかしサッカーが終わると途端に真剣モードでハンドボールを始めました。監督・コーチの指示を集中して聞いている様子。

他にも練習の最初に瞑想するチームもあって、ウォーミングアップの質を上げるために世界レベルの各チームは様々な工夫をしていました。

このような練習の様子を見て私は、スポーツに限らずオフィスワークにおいてもウォーミングアップを実践したらパフォーマンスが上がるかもしれないと考えました。瞑想、ジョギング、ニュースを読む、頭の体操をするなど色々ありますが、「仕事を始めるぞ」と気持ちが高ぶる何かをルーティーンにすることが大切なんだと思いました。

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ハンドボール練習会場

マニュアルにない「空気を読む」対応

5人制サッカーで帯同するチームが負けてしまったときのボランティアでのこと。マニュアルでは、選手が着替えているとき、着替え部屋(チェンジングルーム)の出口近くで立って待つように言われていました。着替えの必要がないスタッフ数名はすでに部屋の外にいて、マニュアル通り私もすぐ近くにいました。

すると近くにいた別のボランティアスタッフから声を掛けられました。

「もう少し離れてください。近くにいるべきなんですけど、あの、空気的に。」

え!?と思いましたが、すぐに離れました。確かに、沈んだ気持ちがにじみ出ている選手チームスタッフに囲まれて私が立っているのは、場違い感はありました。そうか、空気を読んで行動を変えなければいけないのか、と学びました。

マニュアルにはない状況は他にもたくさんありました。「これからプロジェクターを使いたいからすぐ用意してくれ」と言われたり、雨で選手の通り道に水が溜まってしまったりなど。会社でもトラブル対応はよくありますが、ボランティアに関しては経験がほぼないし、その日会う初めての人とその日限りのチームワークを発揮しなければいけませんでした

自分はこういう経験に慣れていないんだと痛感し、接客業の人やボランティアリーダーなどこういう状況に多く遭遇してその都度適切に対処している方々に尊敬の念を抱きました。

線引きするチームと協業するチーム

オリンピックでは2つの異なる会場で同じ内容のボランティアをしましたが、会場によってボランティアチームの協業体制が全く違ったのでとても驚きました。

1つ目の会場では、私の役割であるメディカルとは別のチームリーダーから最初に「メディカルの方もぜひ積極的にこちらのチームに協力してください」と言われました。メディカルは全然忙しくなかったので、同じメディカルの方と一緒にできることを探して動きました。活動時間以外も、チームの隔たりなく一緒にランチを食べたり一緒に帰ったりと、「いい雰囲気だな」と感じました。

一方、2つ目の会場では、別のチームとほぼ何の絡みもありませんでした。あまりにも暇だった私は、1つ目の会場で別のチームがする内容を少しだけ理解していたので、手伝おうと近くの人に声を掛けて動いてみました。しかしその後リーダーらしき人が現れて「手伝っていただけるのは嬉しいのですが私の指示なしで動かないでください」と言われました。最初の会場のリーダーとは逆の方針でした。(その後は指示されながら手伝うことができたので良かったです。)

リーダーの方針やカラーがチーム全体の雰囲気に大きな影響を与えるのか、と衝撃を受けました。もし私がチームを率いる立場になったら、1つ目の会場のような線引きしすぎないチーム作りをしたいと考えました。もちろん状況によっては2つ目の会場のようなチームにする必要もあるかもしれないので、それこそ臨機応変に対応したいと思います。

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青海アーバンスポーツパークボランティア受付

時間に融通が効く人に限られる

これは正直たくさん感じました。私はたまたま有給休暇を取りやすい職場でしたが、数週間以上前から有給休暇の日を決める必要のある職場や長期間休みづらい人はオリパラボランティアに参加するのは難しかったと思います。実際Field Castは私のような時間に融通の効く職場で働く人、パート・専業主婦(主夫)の人が多く、あとは職場経由で参加した人もいました。以下、私がこう感じた出来事です。

シフトが直前まで決まらなかった:「複数会場でシフトの打診が来た場合は全ての会場で最低1日活動しなければいけない」というルールがあったことを知らずにシフトを提出していた私は、その後電話やメールで個別にシフト調整することになってしまい、結果シフトが決まったのは7/14でした(開会式は7/23)。これは特殊なケースではありますが、他にも無観客試合になった影響などで多くの人が同じ状況になったと想像します。

活動当日の朝にキャンセルになった:逆にシフトを入れていたのに直前に活動がなくなることもしばしばありました。特に誕生日に合わせてボランティア休暇を取ろうとしていたのに、朝起きたらキャンセルの連絡が来ていたのはとてもがっくりしました。理由としては、ハンドボール練習会場ではチームが練習をキャンセルした(休息を優先した)、5人制サッカーでは悪天候などを想定して予備日として確保していたが順調に試合が進んだからでした。いずれもスポーツボランティアあるあるなのかもしれませんが、私の普段の生活にはあまりないことなので驚きました。

ワクチン接種2回目の日程が直前に変更になった:Field Castのうち希望者は武田/モデルナ社製ワクチンを接種できるということで、私は6月末に1回目・2回目の日時を予約し、2回目直後の数日間予定を入れないようにしていました。しかし7/20に「当初ご提案していた日時から、2回目接種の日程が変更となっております。」とのメールがあり、2回目として予約していた7/30が期間外になっていました。1週間後にずれた期間内で運よく会議が入っていない日を見つけて予約し、休日の予定も急遽変更しました。

まとめ

その他、雨でびしょ濡れになりながらボランティアしたり、4時に起きて始発の電車に乗ったりと大変なことはたくさんありました。

しかし貴重な経験もたくさん味わえました。

ハンドボールではスペインチームのコーチからボランティア全員にオリジナルバッチをプレゼントされました!すっかりスペインチームのファンになって試合を応援していたら、3位になり銅メダルを獲得🥉自分ごとのように嬉しかったです。

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5人制サッカーでは試合の緊張感漂う空間をピッチのすぐ横で体感できました。日本の黒田選手のミラクルシュートを生で観ることができて、その場にいたボランティア・スタッフと大盛り上がりしました!その直後にハーフタイムでチェンジングルームへ帯同したときに晴眼者の日本チームスタッフがリプレイを見て「かっこいい!」と興奮しているのを嬉しく見ていました。日本が勝った後の写真撮影・記者会見の様子も眺めることができたり、お礼のボードを作成したところ監督と一緒に写真を撮ってもらったり、ボランティアをしていないと体験できなかったことばかりでした。

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試合会場には選手関係者やField Castだけではなく審判・警備員・自衛隊・報道関係者・清掃・運搬の人などなど本当にたくさんのスタッフがいて、たくさんの人により作られている場だと実感しました。いろいろ批判のあったTOKYO 2020で、私も一部思うところはありましたが、私は選手・サポートスタッフ・ボランティア、多くの人が輝く場所としてとても有意義なものだったと思います。

踊ることと同じくらいスポーツが大好きで、スポーツを通じてたくさんの喜び・楽しさ・悔しさを味わった私が、オリンピック・パラリンピックにほんの少しだけ関わることができて、本当に良かったです。

ちなみにTOKYO 2020は性別適合手術したトランスジェンダー選手が初出場しましたね。その件についてはYouTubeで私の意見をお話ししていますのでぜひご視聴ください。



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