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シェイプオブウォーター感想(もやもやした人の感想)

デル・トロ監督の映画は、パシリムしか見てないんですけれどね…
大流行したじゃないですか。オタクがこれを見ずに何を見るか!的な。
ロボット怪獣対決は大興奮だったし、何よりあの音楽とあのシステムにテンションが上がらずにはいられない!
そりゃあ円盤も特典付きで買いましたわ!!

でも一点だけ、どうしてももやもやしたところがあって、それは、チャックが死んでお父さんが生き残ったことなんです…
映画のセオリーとしては逆じゃないですか!
普通親が死んで、子供が後を継ぐ的な話になるじゃないですか!
インディペンデンスデイだってお父ちゃんが特攻したし、アルマゲドンだってそうだった。
何故、あえて、息子が父を置いて死んでしまったのか。
あの後のハーク父ちゃんのことを考えると、本当にいたたまれなくて…
奥さんを亡くし、一生懸命育ててきた最愛の息子を亡くし、一緒に生きてきた親友も亡くし…
だからといって、ハークが死ねば良かったのかというと、まあ違うんでしょうけど、ただ今までの映画だったら、多分ハークがペントコストと自爆していたと思うのです。
非常にそこがもやもやしていました。故にEDも素直に喜べなかったんですよね…


で、シェイプ・オブ・ウォーターなのですが。
非常に良い映画です。とにかく音も画面もとても綺麗。ずっと水の中にいるような、ふわふわした浮遊感もあり、あの古い音楽も、映画館の上のアパートも何もかも素敵。
「彼」だってかわいい。
イライザもゼルダもジャイルズもとてもキュートだし、頭もいいし、楽しい。

んですけど、あのラストを見たとき、私は、えっとなりました。
これは…ハッピーエンドじゃないのでは…と。

私だったら、イライザは彼と別れ、現実世界に戻り、寂しいけど少しだけ何か変わった日常に戻った話にしたと思う。
実に陳腐で面白みないと思うんですけど...。そして最後までそうなると思っていたんですw
いかに脳が貧困か分かりやすい...年を取るって嫌だぜ…。

ところが、この映画はそうでなかった。
彼女は現実世界から消えてしまう…。
彼と二人だけの世界に行ってしまうわけです。
これは、つまり、現実世界で、結局彼女は幸せにはなれなかったということです。
或いは、もっとB級映画にして、アマゾンの奥地で、彼と二人で暮らすシーンが流れても良かったんです。
まあそんなん嫌だけどさw
何が言いたいかというと、彼女があの後も「現実世界に」戻ってきて欲しかったんです。
が、結局はそうならなかった。美しい水の中、冒頭の夢の世界に永遠に行ってしまうわけです。

イライザは普通にカワイイやんと思っているのですが、この同じように、中年もてない女であり、美容院で「彼氏いたのいつですかね」って聞かれて絶望するレベルな自分は、当初非常にイライザに共感していました。
毎日同じ時間に起きて、同じことをして、同じ時間に会社にいって、ちょっと自分の好きな物を集めたりして。
だから、彼女には現実世界で幸せになって欲しかったんです…
でも彼女は現実世界からは出て行って(追い出されて)しまった。
これじゃあ、結局、中年もてない女は、夢の世界でアマゾンから異形の王子様見つけるしかねえじゃん!!

ということで、非常に絶望したのでした…

これをハッピーエンドとして捉えている方々は、イライザやジャイルズほどアウトサイダーではないのでは...?
ジャイルズの視点から見れば、唯一の友達であるイライザを突然失うことになるし、ゼルダも結局、あのどうしようもない夫とつまらない仕事から解放されない。
つまり、現実世界では何も変わらないし、イライザが抜け、何人かが死亡した分、より辛い現実が待っているだけなのでは、と思います。

あと気になった点ですが

・よく言われているように彼は彼女に惚れたのかがよう分からん
 いやテーマソングにあるように、別に彼の理解は、イライザは求めていない と思うんですよ。
 だからそれはそれでいいんですけど、最後にイライザが「一緒に行けない」と言ったのに、無理矢理彼女を連れ去るというのがどうにもこうにも
 ただ卵くれるし一緒にいて欲しいというだけで、彼女を現実世界から一方的に連れ出すのは、随分暴力的だし子供っぽいなあ、と思いました。これじゃあお母さんが欲しいと変わらなくない?
 相手を気遣うのが愛だと思うんだ…そしてその暴力をおしてでも彼女が愛しいという雰囲気があまり?

・アウトサイダー像あまりに典型的ではないか
 いや、ジャイルズもあんな誘い方したらあかんでしょう…何故や…別にホモフォビックでなくたって、異性にだって、いきなり触れられたゲッアウだよ…
 
・ストリックランド
 彼だけやたら設定が詳しく、多少同情できる雰囲気にしているのは何故なんだぜ…。あいつ最低だけど、非常にしんどい思いをしているわけじゃないですか。
 それを、スパーンで終わらせるのは…なんかもったいないというか、それで終わり?もっと痛い目あわせなくていいのという感じ。
 私は喉を切られて声を失って、奥さんは子供連れて離縁され、キャデラック廃車になるのを目の前で見せられればいいのにと思いました。
 それでも、彼は生きてる、彼だってもしかしたら歩けるかもしれない、それが希望という話なのではないかなあ

・ホフステトラー
 私の推しなんですけど。推しなんですけど。(二度)
 死ななくてもええやんか…というかなんか設定がちょっと。うーんうーん…なんかおとぎ話にしては、死んで解決していくのが安直な気がするんですよね…
 この美しい話に、それいるか?っていう。
 まあいいか、シンデレラの継母も酷い目にあって死んだっていうもんな。おとぎ話は残酷なんだ…ってヤツですかね。
 ありがとう好きです。こういう立ち回りの人に弱いです。

・そこで何故型にはまったセックスなんだよ!!
 最早この映画自体セックスではみたいな感じなので、なんでそんな愛の中で「性愛」にこだわるか?って
 いうつっこみは置いておくとしても、せっかくの異形なんだぞ!!!なんで人間みたいにち○○をま(自粛)なわけ!
 なんか「普通と違う」ということを全面的に押し出しているストーリーにしては、そこだけ保守的というか普通すぎて、なんだよ…と思いました。
 もっとなんか全然違う感じでもよかったんじゃないの!?ここは納得いかねえな!!イライザの手話はかわいかったけど!

・美女と野獣の解釈が違う
 パンフレットに書いてありましたばっちり。美女と野獣が好きじゃない。人間は外見じゃないというのに、と。
 美女と野獣こそ、外見ではないということを、明確に示しているストーリーだと思います…
 だからベルは、ビーストが王子に変わったって、拒否しなかったんですよ…逆です逆
 
ここからは大分ふざけたことを言うんですが、この「美女と野獣」のデル・トロ監督の解釈からも、私、この監督、あんまり人間のこと好きじゃないのでは?信頼していないのでは?と思ってしまいます。
私はなんだかんだ言って人間の世界が好きなので(一応皆様と同じかそれ以上にはいろんな人にやられてきてますけど)、人を信頼しているし、だからこそ、お話のキャラクターに随分没入するタイプなんですよね。
しかし、この監督は、多分そうではなくて、あくまでもキャラクターは、パーツなんじゃないかなと思います。
人間の感情が話を進めていくのではなく、絵画に人間を落とし込んでいくというか、自分の世界に人間を当てはめていきながら、舞台が進行していく感じ。
いや、パシリムとシェイプオブウォーターだけ見て、決めつけるのお恥ずかしいんですけど…
まあ、少なくとも二作にそういう印象を受けました。
だから、いちいち周辺の人に感情移入する自分には、もやもやが残るんだと思います。

いい映画なんだよ、綺麗なんですよ。イライザが赤いヘアバンドや、ヒールをはいてきた時の美しさ、そのハイヒールが、最後片方水の中に脱げていく、壮絶な美しさ。
でも、私には、救いというより、置いていかれたという壮絶な絶望感を覚えました。

多分、私にはこの監督合わないんだなあと思います…
まあ、またパシリムのサントラ聞きながら、自分がジプシーデンジャーになった感を漂わせつつ、通勤電車に乗るんですけどね。

#映画 #シェイプオブウォーター

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