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年末年始

 年末年始の特番で、1年ぶりくらいにちゃんとニューヨークを観た。あきらかにふたりとも垢抜けていた。職種は違えども芸歴が同じなので、きらきらした同期を目にするのは、自分のうだつの上がらなさを目の当たりにするのと同義だった。無意識のうちにきつく目を閉じていた。

 そんな感じで年末年始は働いているような働いていないような、ふわふわした感じの毎日を過ごしている。

 「芸能人格付けチェック」を観て吉高由里子さん可愛いな、吉高由里子さんに言い寄られたいな、吉高由里子さんに翻弄されたいな、ダンスとビッグバンドと弦楽六重奏当たって良かったなと思ったり、「ヤギと大悟」を観ながら大悟さんのコミュニケーション能力を盗もうとしたり、「マジ歌選手権」で伝統芸とノスタルジーを味わったり、神奈川県民ということもありつっかけで箱根駅伝を観に行くなどした。

 大晦日はぬくぬくと年越しピザを食べていたら「あなた仕事的にも紅白観とかなあかんのと違う?」と言われ、ほぼ強制的に紅白を観させられる。仕事に対して無気力になっていたので、無理強いしてもらえたのは良かった。

 そうやって紅白を観ながら、最近の流行の音楽はスマホやイヤホンだと迫力があるように聴こえる音楽が多いのかなと思った。セカオワの「Habit」もNHKホールの裏を闊歩しながら歌う演出は面白かったけど、なんだか音がずっとうっすらちゃかちゃかとしていて、耳がスケートリンクの上のようにつるつる滑る感覚があった。

 印象に残ったパフォーマンスは、3次元の強みを存分に生かした人たちだった。Vaundyのライブ感あふれる堂々としたステージ。藤井風氏のカメラに撮られることを徹底的に意識したであろう気魄あふれるパフォーマンス。石川さゆり氏の年輪が作る声の厚みとゴージャスな音色を奏でる大所帯の楽団。氷川きよし a.k.a Kiina様によるセット、衣装、歌とどこをとっても「生身」を感じさせる生き様と美学。BE:FIRSTの細部までクオリティを高めた歌とダンス。画面を越えて「人間」が浮かび上がってきた。

 なんでも手軽にできる時代だ。手間の掛かるものがどんどん淘汰されている。恩恵も大いに受けている。バンドはメンバー探しも機材集めもコスパが悪いからやりたがらない人も多いらしい。DTMでどんな音も出せるのだからそりゃあそうなるだろう。

 だけど生身の人間にしか成し得ないものはある。感受性やエモーションはデジタルに押し込められるものではないし、本物のエモーションや感受性はデジタルを追い越していくものだから、デジタルで胸を打つことも可能だ。インターネット老人会の昭和末期生まれは、インターネットを通してたくさんの感動を得てきた。

 時代の最先端こそが正義なわけではないし、必ずしも昔が良かったわけでもない。「誰かが」「時代が」ではなく、「自分はどう思うのか」を大事にしたい。無名ライターは神奈川県の片田舎で地元のみかんをむさぼりながら、今年もそんなことを思うのであった。

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