荒木珠奈「うえののそこから『はじまりはじまり』」展図録再読ウィーク
荒木珠奈「うえののそこから『はじまりはじまり』」
会場:東京都美術館(東京・上野)
会期:2023年7月22日(土)~ 10月9日(月)※終了
フライヤーに書かれていた「ちょっと怖くて懐かしい展覧会のはじまり、はじまり」と言う通り何か物語、場所がわからない(ヨーロッパではない)グリム童話の世界に紛れ込んだような雰囲気だった。
第1章の「旅の『はじまり、はじまり!』」では、不思議な小さな版画作品の並びを通り抜けると、天井から無数に吊り下げられたランプシェードの部屋が現れる。
大小さまざまなランプシェード、鑑賞者が新たにシェードを付け加え、明かりをともす。
メキシコシティに暮らす貧困層の住人が、電柱から勝手に電線を引いて電気を使っているところにインスピレーションを得たという。
増えたり減ったりするランプシェードは住民と取り締まり側の鼬ごっこのようにも見える。
第2章は、「柔らかな灯りに潜む闇」。
四方の壁に大小無数のドアが見える。
ドアには鍵が掛かっており、スタッフの方から一つ鍵を借りて、鍵が合うドアを探す。ドアを開くと灯りが見え、小さな絵が現れる。
迷うこと、見つけた喜び、灯りをみる安心感。
あたたかい灯りに郷愁を感じる作品。
このように、物語にいざなわれ、外モノだった鑑賞者が次第に物語に取り込まれ、その一部になるような不思議な感覚に囚われた。
展覧会の物語に子どもも大人も分け隔てなく取り込まれ夜を彷徨う感じ。
展覧会の図録は、その物語の断片を集めた宝石箱で、ページをめくるたびにあの時の感動、ほっとした気持ちなどを追体験できた。
鍵、ランプシェード、白熱灯、扉、骸骨、船、サーカス、鳥かご・・・
物語が好きな人のキーワードが詰まった展覧会だった。
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