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52ヘルツのクジラたち(映画鑑賞備忘録)

2024年 日本
監督:成島出
主演:杉咲花
52ヘルツのクジラたち : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
映画『52ヘルツのクジラたち』公式サイト (gaga.ne.jp)

期待以上、想像以上に素晴らしく心にしみた。
小説が出たとき、映画化されるはずと我慢していたかいがあった。

ストーリー
傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた貴瑚は、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会う。かつて自分も、家族に虐待され、搾取されてきた彼女は、少年を見過ごすことが出来ず、一緒に暮らし始める。やがて、夢も未来もなかった少年に、たった一つの“願い”が芽生える。その願いをかなえることを決心した貴瑚は、自身の声なきSOSを聴き取り救い出してくれた、今はもう会えない安吾とのかけがえのない日々に想いを馳せ、あの時、聴けなかった声を聴くために、もう一度 立ち上がる──。

ABOUT THE MOVIE | 映画『52ヘルツのクジラたち』公式サイト (gaga.ne.jp)

心を失っているときの杉咲花さんのビー玉のような瞳、志尊淳さんのちょっと困ったような、寂しそうな微笑み、小野花梨さんの嫌味のないストレートな愛情表現。
心が壊れたときの足元から何かが崩れるときのあの絶望的な叫び声。
俳優さんって…すごい。
演技のすごさ、衣装、映像、脚本、、、素晴らしかった。

杉咲花さん
「望みを持つことをやめた表情」から自分自身を生きるという決意が宿った目、助けられる側から助ける側に歩き始めた力強い瞳が印象深かった。
痛めつけられても、理不尽な仕打ちに合っても決して人を攻撃したり悪意を向けたりしない主人公。親からの虐待で他人に対する要望を持つという欲求も消えてしまった様子が痛々しく、すごくリアルだった。

志尊淳さん
役柄として、美しい容姿に頓着しない、控えめな感じがとても気になった。
なぜ髭を生やしているのか、車から守ろうと主人公の腕をつかんだ時、手を柔らかいと言われたときなぜさっとその手を離したのか。
ためらいながら生きるその表情や視線がどういう背景からくるものなのか、理由を知ったとき涙が止まらなかった。
志尊さんはすごく誠実で、不当な差別を受ける人にとても敏感な方なんだろうなという気がした。もちろんご本人のことは知る由もないのだけれど。

主役級のお二人以外にも魅力的なキャストばかりで映画の世界にどっぷりと浸れた。少年役の桑名桃李さん、彼氏役の宮沢氷魚さんも本当に素敵だった。(宮沢さんは「残念過ぎる」彼氏で嫉妬に支配される無様な様子は育ちの良さがにじみ出ているだけにそのギャップが最高だった)

今回、この映画のクレジットに、トランスジェンダー監修、LGBTQ+インクルーシブディレクター、インティマシーコーディネーターの方々のクレジットがあった。
誤解を与えないような描き方、当事者への配慮、俳優への心身の配慮など作る側の誠実さも感じる作品だった。

映画館で見てよかった、この作品を見てよかった!
そして、これでようやく原作を読める。















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