頭の中の小橋さん「虎に翼」第67話(ドラマ鑑賞備忘録)
「これをやったらもっとよくなる」と思って動いたのに、周りの理解が得られずちょっと孤立したような気持ち、自分のやる気が暴走ではないかと不安がよぎるとき、過去の嫌~なツッコミが頭の中で盛大に回り続ける。
同僚は「???」の表情、実際には何も言っていないはずの小橋さんが寅子ににらまれるという、完全当て逃げの「し・ら・ん・が・な」なエピソードであった。
(小橋にとっても寅子は、本当にちょっとウザいんだろうなというのがわかるし、そりゃ急にあんな顔されたらね…という納得のシーン)
今回もすごく「わかる!あるよね、あるある!」となった。
そして、寅子の反応に「そういうとらえ方もあるんだ」という新鮮な驚き。
周りの協力が得られなかったり、温度差を感じる時、不安になって頭の中で過去に投げかけられた発言が針のようにチクチク自分を刺してくること、ある。すごくある。
そんな声につぶされそうになることもある。
自分の中の不安が過去の記憶を呼び起こしているのに、現在進行形で過去の他者発言がチクチク(ザクザク)刺してくる。
そんなチクチク妄想に寅子は「やめて―!!」と叫びながら耳をふさぐ。
妄想シーンの後、同僚に「現実って何ですか?理想は掲げ続けなければただのごみくずですよ」と言い放つ。(もちろん同僚は小橋との妄想やり取りは知らない)
寅子、弱くて強い。
自分の信念を口に出すことで弱気を打ち消し、自分を鼓舞している。
私の中にも頭の中の小橋がいる。小橋一人ではない。小橋的な奴(!)が入れ代わり立ち代わりチクチク私を刺してくる。
その時こそ、寅子に習い「やめて―!私はこう生きるんだ!!」と強く宣言したいと思った。
ストーリーに戻ると、これまでの寅子は無邪気で闊達な印象が強かったけれど、年齢を重ねて様々な人格(側面)が混然と存在するようになった気がする。
無邪気で人の言葉を真に受け自分を抑えられず暴走しがちな生来の寅子。
信念を持ち一心不乱に突き進む寅子(優三さんが大好きだった寅子)。
弱気で罪悪感から抜け出せない寅子(弁護士をあきらめて、優三さんの死を受け止められずにもがいていた寅子)
自分の行動や言動を批判的に捉える他者視点を持った寅子
人は無邪気なだけ、信念を持つだけでは生きられない。
寅子のこれまでは確かに彼女自身の努力が大きいけれど、生まれ育った環境や時代、周囲の支えや犠牲、寅子自身が払った犠牲、ラッキーやアンラッキーなどもひっくるめて今の寅子になったんだなと感じた。
「傑出した人だから」という前提ではないから寅子に共感できる。
そして、登場人物一人一人に共感できる要素がちりばめられていて、ふとした表情や仕草にいちいち心を奪われている。
これからもずっと楽しみ。
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