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哀れなるものたち(映画鑑賞備忘録)

2023年 イギリス
監督:ヨルゴス・ランティモス
主演:エマ・ストーン
哀れなるものたち : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

純真無垢で社会のルールや倫理規範を持っておらず、それゆえの残忍な行動も見える主人公のベラ。
その彼女が社会や他人の感情に触れ、自身の感情を学び、他者や世界を知る。意志を持って自身の足で歩く寓話的要素が多分に含まれる冒険物語。

オープニングのタイトルや場面が変わる際に差し込まれるチャプターの文字まですごく特別で、トーキー映画を見ているようだった。
モノクロで始まった映画が色彩にあふれていく様は、主人公ベラの世界が広がり彼女自身の世界への解像度が上がっていく状況と重なり、それを一緒に体験することができた。

細部までこだわられた舞台美術や衣装も素晴らしく、そして物語の鍵が隠されていて、一時停止して何度も確認したくなった。
(ここはエンドロールでも楽しめた)

人間の醜悪な部分や性描写、臓器など普段隠されているものをこれでもかと見せられたけれど、嫌悪感を持つことはなかった。
食欲、性欲、睡眠欲などの生理的欲求、知的欲求、支配欲、様々な欲望と、欲におぼれ、足をすくわれ、傷つけ合い、時にすがり、欲を元に立ち上がる…そんな無様な人間の姿がなぜかとてもすがすがしかった。

生きるためにいろいろ実験する、そういう考え方で人生を進むのも悪くないと思えた。

大画面でもう一度見たい。

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