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出がらしになれるか「虎に翼」第70回(ドラマ鑑賞備忘録)

昨日の第69回もまだ十分咀嚼できないまま穂高先生の謝罪が始まる朝8時。
日常と同じくドラマもどんどん先に進む。

先生がわざわざ寅子の職場を訪ねるというフットワークの軽さ、そして率直に自分の想いを伝える勇気に脱帽する。
これは寅子に共通した資質だと思う。

昨日まで、先生は自身の心残りを解消してきれいに旅立ちたいだけなのでは?ちょっとずるくないですか?という思いでいっぱいだった。
ただ、今日の先生の行動で、それだけなのかな?という思いがしてきた。

寅子は、退任する恩師への本心と、公の晴れの場で糾弾してしまったという事実の間で頭を抱えていたようだけど、翌日になっても自席で頭を抱えるくらいの後悔の本当の理由は何だったんだろう。
思い返せば、寅子は自分から人との縁を切ることはなかった。
そんな彼女が、死を予感する人に最後通牒を渡す発言をしたこと、自分から縁を切るきっかけを作ってしまったことが後悔の理由なのだろうか。

何にしても、先生は寅子の前に立ち、頭を下げた。
彼の言葉はぎこちなく、一生懸命寅子の立場を想像して気持ちを読み解こうとしたことがわかる。
それでも、どうしても理解が及ばない、何となくちぐはぐな感じが否めない。真心のつもりが埋めがたい溝を作ることになる。
埋められなさを、「生きた時代の違い」や「世代の違い」、「男女の違い」、「立場の違い」、「性格の違い」など原因を探しても全部そうかもしれないし、それとは別の理由かもしれない。

「気を抜くな。君もいつかは古くなる。常に自分を疑い続け、時代の先を歩み、立派な出がらしになってくれたまえ」

穂高先生と寅子の最後の会話、お互い遠慮がちで「本音の本音」という感じではなかったけれど、すべてのものは古くなることを心せよという思いはしっかり伝わった。
常に自分を疑い更新し続けることは容易ではない。
これもまた寅子が選んだ地獄なのかもしれない。

+++心に残ったフレーズ+++

(桂場さんの理想とは)
桂場:司法の独立を守ること。そして二度と、権力好きのジジイ共に好き勝手にさせないこと。法の秩序で守られた、平等な社会を守る。

寅子:理想のために虎視眈々

穂高先生が最高裁判決に記した反対意見:
この度の判決は、道徳の名のもとに国民がみな平等であることを否定していると言わざるをえない。法で道徳を規定するなど許せば、憲法14条は壊れてしまう。道徳は道徳、法は法である。
今の尊属殺の規定は、明らかな憲法違反である。

TVそのものが権力になっている、権力と一体化している今、それに対し、納得できないことを納得できないと言えるこのドラマの尊さよ。

+++穂高先生ファッション+++
丸襟にネクタイが素敵。好き。

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