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梅子の高笑い「虎に翼」第64話(ドラマ鑑賞備忘録)

人はどんな時に白旗を振るんだろう。
今回は、寅子の同窓生梅子の人生転換となった。

++梅子のこれまで++
長年、大庭家で召使のように扱われてきた嫁の梅子。
夫と離婚し、親権を得るために弁護士を志す。その弁護士受験当日、夫から離婚届と親権は渡さないという言葉を突きつけられ、絶望の中、幼い光三郎を連れて家を出た。
ほどなくして夫が倒れ、大庭家に連れ戻される。
光三郎と一緒に住めるというその条件だけで長く夫の介護に身をささげた梅子。夫のようにはさせまい、思いやりのある子にという一心で育てた光三郎が、夫の死後、愛人すみれと恋愛関係に陥ったことを知る。

光三郎の幼さ、やさしさ、優柔不断な甘えがしたたかなすみれに利用されただけかもしれない。(ぜったいそう)
それでも梅子にとっては信じがたいものだったんだろう。
息子たちがすみれを追い出す⇔出させないと争いを始めた時、梅子の表情と背中に絶望が見え、恐ろしくそしてとても美しかった。
目から光が失われる→目を伏せる→諦めた表情→あきれたように笑いだすまでは一瞬で、笑い始めたらもう止まらない、肩に重くのしかかっていた荷物がばらばらと砕け落ちたように見えた。

「私は全部失敗した。結婚も、家族の作り方も、息子たちの育て方も、妻や嫁としての生き方も全部‥‥(中略)‥‥育ててあげられなくてごめんね。でも、お互い誰かのせいにしないで自分の人生を生きていきましょう」

3人の息子と姑は「梅子に自分たちを切り捨てる力や決断はできない」という得体のしれない自信と甘えを持っており、見くびっていたんだろう。
見くびった相手に切り捨てられた息子たちと姑の表情が何とも言えず、幼子を見ているかのようだった。
結局、大庭家の中で自分という芯を持っていたのは梅子だけだった。

高笑いと独白、旧体制にNOを突きつけ、過去を脱ぎ捨て軽やかに光の方向に歩き出す梅子には希望しか見えなかった。

梅子の敗北宣言は、なぜか家父長制からの独立宣言に聞こえた。

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