おぞましいこと「虎に翼」第84話(ドラマ鑑賞備忘録)

15分と言う短い時間の中で複数の人生が語られ、それが全部心に刺さる。
4月からずっと幸せ。
このドラマが最終フェーズに入っていることを認めたくない。
ずっと続けばいいのにと願いながら幸せな時間を過ごしている。

さて、本日前半の優実のパート。
同級生は、先生にお願いされて優実と親しくしていたことがわかる。
ああ、それよく聞くやつだ。
私もそれやられたことある。点数稼ぎか「いい子」なのか地味に傷つくやつ。本人にばらしてしまうことを思えば点数稼ぎか…。
勝手に過去の傷をえぐられていたけれど、優実はその10000歩先を行くというか、自分があるというか冷静、対応が素晴らしかった。

「声をかけてくれてありがとう。」

…なんて、そうそう言えない言葉だ。

「でもお互い無理をしても誰も幸せじゃないし、そこから友達になるのは難しいと思う。」

真実すぎる真実。
さすがと言うか、状況把握力が高すぎる。
でも、「良いことをしている」と思っている同級生には理解できない感覚だろうな…。
優実の言葉はその通りだけど、共感を得られにくい考え方で雑多な人間が集められた学校という空間では孤立するかもしれない。
航一さんと似ているな。
彼が、この先優実のよき理解者になってくれたらいいなと願わずにはいられない。

そして、変顔対決からの寅子の抱擁。
どう接していいか、触っていいかわからないもどかしさの溝を埋めた…というより、寅子の想いが溝を飛び越えたように見えた。
人の心の動きを繊細に気づき、自分を抑えてしまう優実、一方、心の機微には疎いけれど、違和感には真正面からぶつけりなんとか理解しようとあがく寅子。
微妙にかみ合わなかった二人が初めてピッタリ合わさった。
ここからが2人の新しいスタートになりそうだ。

後半は、たまちゃんと涼子様の告白。
久々に耳にした、そして人生でまだ一度も使ったことがない「おぞましい」という単語。

涼子様はお母さまを始め、身近な人が卑屈な物言いをするのを嫌と言うほど見てきた。それに対し、いつも言葉を呑みこんできた。
その涼子様がたまちゃんを𠮟りつけるように吐き出した言葉。
生きるよすがになっていた大切な人が自身の命を軽んじるような発言をすることに我慢ならなかったのか…厳しい口調がかえってたまちゃんを唯一無二の存在だと思っている証のように思えた。

最後、たまちゃんが英語で親友(bosom friend)になってくださいと伝えたこと。英語が二人の身分の壁を取り去ったようで本当に美しい場面だった。

このドラマでは、家族や夫婦以外になる以外にも「共に生きる」道があると教えてくれる。
男と女がいても恋愛関係にならなくてもいいし、家族でなくても共に生きることはできる。
ずっと一緒に暮らしていなくても近い親戚のような関係を気づくこともできる。
一緒に暮らすことのいろんな形、絆で結ばれる2人の形、色んな2人や2人以上、1人がある。

ところで、別の世界線(「花子とアン」)では、花が翻訳に精を出し、1952年「赤毛のアン」を刊行している。
この年は、寅子が新潟に赴任した年。
たまちゃんは原著で「赤毛のアン」を読んでいたからこその「bosom friend」。別の世界線かと思いきや、ちゃんとつながっているのがうれしい。

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