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【トリプルネガティブ乳がん闘病記】⑤ 次の抗がん剤のがキツかった

4月24日、パクリタキセル投与初日。
投与前に超音波(エコー)で経過を検査した。腫瘍の縦横の大きさは残念ながら変化がないが、厚みが半分になったらしい。抗がん剤が効いている!なんだか前向きになれた。
今回からは吐き気止めなど10分、パクリタキセルを1時間、生理食塩水を10分で1種類目よりは短いスケジュール。爪はもう全部の指が黒かった、特に親指。

でも足の爪は黒くなかったし今回も保冷剤は持っていかなかった。吐き気止めのステロイドにアルコール成分が入っているためか投与後はふわふわとだる&眠くなった。帰って夕方ぐらいから顔が浮腫んできて目が涙目に。幸いにも食事は普通に食べれそう。
翌日から予定通り仕事。だるい。いつもどおり顔が真っ赤に紅潮して、おまけに体中が痛い、いわゆる全身筋肉痛。さらには手のひらと足の裏が真っ赤になり、足は乾燥で一夜にして踵が少し切れてしまった。

胃も痛い。うわあ、これは働けるような薬ではないわ。日本の上司とチーム全員に連絡して水曜日は仕事を休んだ。
休んだところでだるさも筋肉痛も治らず、手足の状態はますますひどくなってきて、踵は黒い斑点もでき始めた。

仕方なく木曜日は働いてみたが、もう椅子に座っているのも難しくなってきた。ふと、先週説明を受けた”希望退職プログラム”のことが思い出されてきた。勤続15年以上もしくは50歳以上で7年以上勤続、の条件を持つ人が使用資格がある、という説明で、辞めるつもりがない私は早々に辞退していたのだが、28日の明日までに前言撤回も可能、という条件が付与されていたことが思い出された。このままパクリタキセルをやりながら働くのは難しいから休職を早めなければならない、そうすると傷病手当金でやっていくわけだが税金がひかれるとそんな手当金は雀の涙になってしまう、だけど希望退職プログラムで出る退職金は向こう1年半分の今の給与、普通の退職金も含め2年以上は貯金に手をつけずに暮らしていける。。。休職をしたとしてもいつ戻れる状態になるか分からない、そうするとチームに穴が開いたまま、且つ現行のメンバーは自分で責任をとろうとしない人ばかりだから相当グダグダな状況になる。。。そもそも病気発覚直前まで転職活動をしていて今にも辞めようとしていたわたし。。。ぐるぐるぐるぐる考え続けた。夜もほとんど寝ずに考えた。
28日金曜日の朝、夫に「わたし会社、希望退職プログラム受けて辞めるわ」と宣言した。夫は正直わたしの収入をあてにしているところがあったし(わたしの方が相当収入が多い)、再来年あたりマンションを買おうとしていたのでわたしが会社員でいて欲しいと思っている節があった。でもそんなことを押し付けている場合ではない状況なのはよく理解していたのでしぶしぶ「分かったー」と言っていた。
日本の上長にもすぐに連絡した。そうですか、とあっさり承諾して、引継ぎスケジュールを考えてください、と言ってきたので「引き継げる相手がいないので、ひとまず内容と引き継ぎ書を次々に作っていきますね」と答えた。上長は同じ業務エリアの人ではないので引継ぎようがないし、”部下”もわたしのやっていたことを引きつげるキャパシティー(能力の意味で)はなかった。でも、わたしはもう辞める!長年この会社でこのエリアの仕事の日本代表だったけど、もう自分のからだを治すことに専念するんだ!
週末鍼灸師の幼馴染に「もう免疫ダダ下がる薬じゃないし、この筋肉痛をなんとかしてほしい!」と泣きのLINEをした。来週末からできる限り毎週マッサージをしてもらうことになった。
5月1日、パクリタキセル2クール目。
担当医に手足がすごいことになってしまったこと、全身筋肉痛で座っているのもつらいこと、を端的に話したけど、「筋肉痛⁇関節痛じゃなくて?」といぶかしげ。手足の荒れに関してはヒルドイドクリームも効かない、と報告するとステロイド軟膏を処方してくれた。今回の投与は試しに保冷剤を持っていって、足はむくみとり効果のある薬局で売っているぎゅっとしめつけられるハイソックスを履いた。今週は火曜日も休んでそのままGWだったので、自分の体のケアに専念できた。投与時の冷やし効果か、ステロイド軟膏が効いたのか、手足の荒れが木曜日には治っていた!今週は顔の紅潮もさほどではない。一方で水曜日からなんだか手の指がしびれるというか軽く麻痺してきて感覚が鈍くなってきた。身体も痛いしだるい。んで、週末鍼灸師の幼馴染にマッサージをしてもらったところ、劇的改善!ひとまず筋肉痛はペロっとなくなった。
5月8日、パクリタキセル3クール目。
待ち時間によい眉毛シールがないか検索をした。眉毛がほとんどなくなって来ていて、描くのでは限界がきていた(むちゃんこ”描いてる”眉毛になってしまう)。新進のカツラメーカーで超理想的なシールを販売しているのを発見!種類も豊富で、色や形が合いそうなのを試しに注文してみた。このまるで違和感がないと大好評の眉毛シールが、わたしの抗がん剤ストレス軽減にこの後大活躍してくれた。
今週から担当医の紹介で大学の研究員さんが開発中のフローズングローブを使えることになった。水着の素材を使ったでかい手袋に保冷剤が3個入れられるようになっていて、抗がん剤投与中の手の冷やし効果を向上できる、というもので、他の病院では必須でやっているところもあるがこの大学病院ではあまり推奨しておらず、彼女は効果を研究中で学会で発表もする予定らしい。そして彼女はアロマセラピストでもあるとか、私が手が痺れ始めたと話したところリンパマッサージをしてくれた。少しすーっと痺れが消えた気がした。でも残念ながら翌日から痺れがひどくなり、ボタンの開け閉めが難しくなってきた。爪も湾曲し始めていることに気付く。下痢も続いている。
水曜日からなんとか働いた。香港の祭日と日本のGWとですれ違いになっていた香港の上司と、わたしの退職についてやっと直接話すことができた。彼女とは長い付き合いで家族のことも趣味も何でもお互いに分かっている、友達関係に近かった。今までの思い出、わたしのどこが素晴らしかった、どこが好きだった、と切々と彼女が語り始め、思わず号泣してしまった。彼女も号泣していた。最終出勤日までにあと何回か電話しよう、と約束した。
木曜日から筋肉痛が復活してしまう、椅子に座れないので、夫が前に買ってくれた座椅子にクッションを沢山重ねて座ってみた、なんとかいけそう。すぐに座椅子用デスクを注文した。
週末はゆっくりしたかったのだがドキソルビシンによる”無菌”期間が終わったので姉がどうしてもうちに来て話をしたい、という。わたしは元来姉が苦手だった、性格も趣味も考え方もおまけに顔も似ていなかったし、大人になってからは甥が生まれるまではほぼ話もしなかったくらいだ。何を思ったか姉貴風を吹かせたいようなので仕方なく来てもらったが、やれ胃が痛くなるから甘いものの前に何かお腹にいれたい、とうどんを作らされ、用意していた抹茶あんみつもわらび餅も「食べれない、クッキーとかないの」と言うから夫がわたしに買っておいてくれた高級洋菓子店の焼き菓子を出すと2個もたいらげ、コーヒーが飲みたい、といれさせられ、しこたま手術はいつか、だけ繰り返され、洗い物だけして"いただいた"。これはお見舞いなのか??すごく疲れてしまい来てもらったことを後悔した。でもその日は昔の職場の大好きな先輩から千疋屋のフルーツが届き、加えて職場の香港の同僚&日本社にいる台湾人の友達から高そうなストールが届いた、なんてみんな優しい!わたし、結構友達いるじゃない。自分で自分を見直してしまった。
5月15日、パクリタキセル4クール目。
木曜日から胃痛がひどくなり、筋肉痛もよりひどくなる。ちょうど持病の胃の病気の薬をもらいに行くタイミングだったので相談しようとしたところ、パリエットという胃酸を調整する薬が1日1錠しか今後出せないというショッキングな宣告を受ける。相当製薬会社に交渉はしてくれたらしいがもう無理みたい。なんだか胃痛がひどいし、来週大学病院の医師にヘルプ要請してみよう。週末幼馴染のマッサージで筋肉痛は治せた。今回から指の痺れ対策の鍼も始めた、親指以外の指の痺れが軽減。それに彼女は病気のことも仕事のことも全部細かくズバズバ質問して聞いてくれるので、間違いなくココロが癒されていた。色々な副作用にパニック気味だった中で、彼女の存在があって本当に良かった。
一方で今週は筋肉痛と仕事が忙しいのとで平日ウォーキングすらしていない、運動不足なのが不安だった。もともと入会していてあまり使っていなかったティップネスのオンラインで”有酸素運動”と検索すると、それを目的にしたコースが沢山あるではないか。やってみるとエアロビみたいで楽しいし、ほどよく汗もかくし、全身運動だしで最高!これで少し筋肉がつくことを祈る。。。
5月22日、パクリタキセル5クール目。
今日も研究員さんに手のリンパマッサージをしてもらった。痺れはどんどんひどくなってきて今回はとうとう足指にも痺れがきてしまった。投与中から軽い吐き気と頭痛がして、投与後血圧を計るとかなり高め、なにこれ??その後も頭痛と耳鳴りがして、胃痛がひどくて寝込んでしまうくらいなので今週は火水木で仕事を休んだ。6月末退職までに引き継ぎ書の作成間に合うかな。。。手の痺れは週末にかけてどんどんひどくなる。週末は幼馴染のマッサージ、ひとまず血圧計を買って毎日計るよう促された。手指の鍼はやはり親指以外には効いて、人差し指はほぼ痺れがなくなった。帰ってすぐAmazonで手首で計れるコンパクトな血圧計を注文した。
胃痛がひどくてコーヒーを飲むのを止めていたが、昨年から気に入って買いに行っている2つ隣の駅にある焙煎珈琲屋でディカフェの取り扱いを始めていることに気付く。夫にそのことを伝えると仕事帰りに買いに行ってくれた。ディカフェなのにきちんと深みとパンチがあって予想以上に美味しい!食べる楽しみがほとんどなくなってしまっている中、こういうアイテムの補充は重要だった。
5月29日、パクリタキセル6クール目。
半分の投与スケジュールをこなしたね!と医師が嬉しそうに言ってきたが、こちとら見た目も具合も悪すぎて最悪の気分です、と答えるしかなかった。そして先週相談をうっかり忘れてしまった胃痛のことを医師にやっと話した。吐き気止めに入っているステロイドがおそらく胃に悪さをしているのだろう、とのことで、胃粘膜保護の薬を処方してくれた。胃カメラもできればやったほうがいいかも、と言われた。が、この胃粘膜保護の薬がドンピシャだった。金曜日にすぐ胃カメラしようと予約もしていたけど、水曜日には早々に胃痛が落ち着き始めたのでキャンセルした。一方で今週から歯茎の調子が悪くなってきて痛み出した。また先週から続いている耳鳴りが治まらず、一貫して調子のよい日はなくなってきていた。
それにしてももう5月末、来月末で退職するのにチームの誰にも退職を告げさせてもらえていなかった。香港の上司とは週に何度も連絡するし少なくとも1回は電話していたが、日本人上司はびっくりするくらいなんの連絡もしない人だったので、「もう引継ぎが間に合わないのでアシスタントマネジャーのI子には明日話します」と逆宣言のTeamsチャットをしたところ、夜に「かまいません」と返事が来ていたので、木曜日のWeeklyタッチベース時にI子にとうとう話した。休職ではなく退職!?と絶句していたが、希望退職プログラムを受けられることや治療の辛さを丁寧に話したところ、超納得して、送別の品物何がよいですか、希望のもの絶対買ってきます!と言ってくれた。


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