さやか星小学校の自慢話シリーズ2〜太陽と月の集い〜
さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎
さやか星小学校には、全ての児童が学校で安心して、安全に過ごせるようにするためのプログラムがあります。その名も、「安心・安全プログラム」です。その内容は、「いじめ」「不登校」「防災」「児童指導」と多岐にわたります。なかでも、いじめを防止するための中核をなす取り組みが、月に1回、全校児童が参加して行う、「太陽と月の集い」です
学校で生活していると、こんな場面がありますよね。授業で話し合い活動をしている時のことです。A男君が発言している最中に、B子さんやC男君が、「え〜?」とか「やだ〜。」といったネガティブな発言をする。一生懸命発言をしているA男君は、嫌な気持ちになります。
他にも、こんな場面はどうでしょう。体操着に着替えるのが遅いD子さんがいたとします。D子さんは、怠けているわけではなく、一生懸命着替えているのだけれど、時間がかかってしまう。その友達を見て、E男君が「D子さん、なんでそんな着替えるのが遅いの?」と悪気なく言いました。それを聞いていたF子さんとG男君が、D子さんを見て笑いました。D子さんは、悲しくなって泣いてしまいました。
これらは、いじめに繋がる危険性が極めて高い、いや、既にいじめと呼んで良い状況かもしれません。こうした場面は、全ての教室で起こり得ますので、危険性の認識が教員によってズレていては、学校としていじめを防止することは難しくなります。「様子見る」などという悠長なことを言っている暇はありません。直ぐに手を打つ必要があります。そこで、さやか星小学校では、いじめに繋がる可能性を感じたケースを持ち寄り、その場面における適切行動を検討しています。そして、全校でロールプレイ型の授業を行い、適切行動を学習・練習します。それが、「太陽と月の集い」です。
いじめを防止するための授業は、全ての学校で数多く行われているはずです。しかし、「いじめはダメなことです。」と教師が教え、「いじめは絶対しません。」と予定調和的な振り返りを子どもたちが書いて終わってしまう授業が実に多い。さやか星小学校の授業の大きな特徴は、どのような行動がいじめになるのかを具体的に提示すると共に、代わりとなる適切な行動を教えて練習する点にあります。そして、練習した行動が、学校生活において高頻度で生起するように工夫し、強化していくことで、「言うだけ」「書くだけ」にならず、スキルレベルでいじめに繋がる行動を減らし、ポジティブに関わる行動を増やしていくようにしていきます。
ここまで3回の授業を行いましたが、全て違う教員が主たる授業者となっています。ベースとなる指導案はあるものの、その時に課題となる行動に応じて授業者が必死に指導案を考え、授業を作り上げます。授業者はもちろんのこと、授業を見合うことで教師も成長していきますので、教師にとっても授業力を向上させる貴重な機会となっています。
太陽と月の集いは、「全校道徳」という名称でしたが、10月から名称を変更しました。友達を励ます言葉、失敗を恐れず新しいことにチャレンジする行動は、太陽のような輝きを放ちます。しかし、人間は誰もが、時にネガティブな思考に陥ったり、他者を傷つける行動をとったりしてしまいます。そんな時の人は、真っ暗な闇夜の中にいるように感じます。それでも、行動分析学をベースにしたポジティブな行動変容が、闇夜を照らす月明かりにように、進むべき道を具体的に照らしてくれるはず。さやか星小学校の子どもたちには、自らの人生を明るく照らす太陽のような、闇夜にあっては道を照らす月のような人間になってほしい。そんな願いが、この授業の名前には込められています。
今日、前期が終わります。あっという間の半年でした。さやか星小学校を旅立った時、子どもたちが、この学校で学んだことを糧にして、それぞれの人生を輝かせる「さやか星」になれるように。我々は子どもたちの人生の先を見越して、これからも授業を作っていきたいと思います。