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コーヒーの香り
コーヒーの香りがいい匂いだと感じるようになったのはいつからだろう。
コーヒー特有の苦味が好きじゃなくて、20歳になっても飲むことができなかった。
味覚がお子ちゃまだったのか、お砂糖を入れてもミルクを入れても飲めなかった。
匂いも少しつん、と鼻につく感じがして苦手だった。
小さい頃、コーヒーはお酒みたいに大人の飲み物で、大人になれば飲めるものだと思っていた。
そして、私の中では「20歳を越えれば大人」という認識だったから、当然年齢に伴って味覚も大人になり、コーヒーも自然と飲めるようになると思っていた。
しかし実際には、20歳になっても飲むことができなかった。
お酒は飲めたのに。
そんな私が今やコーヒーを、しかもブラックで飲んでいる。
しかも、抵抗があったコーヒーの匂いをいい香りだと思い、少し酸味がきいてる感じがいいよね、とか思っちゃってるのだ。
別に、これは苦味が嫌いな私でも飲めるコーヒーに出会った!とか、コーヒーを克服する方法を見つけた!ということでもなく、そういった紹介記事でもない。
ただ、ふと思った瞬間があったのだ。
先日初めて入ったカフェで飲み物を注文したとき、いつもなら紅茶を頼むけどその時は何となくコーヒーの気分で、「コーヒーをホットでお願いします」と口にしていた。
店員さんが「ミルクとお砂糖どうしますか?」と聞いてきたので、「なくて大丈夫です」と答えた自分がいた。
そしてふと、あれ?いつの間にか自然とコーヒーを注文してる、と思ったのである。
いつから飲めるようになったのか思い返してみるけれど、具体的な年齢もシチュエーションも思い出せない。
多分、これだ!というきっかけはなかったように思う。
自然と、気づいたら飲めるようになっていた。
ふと気づいたら出来るようになっていることって、出来るようになった瞬間は覚えてないもんなんだなぁ。
自分が出来るようになるための努力をしていたとしたら、出来るようになった時の事はわりと細かく覚えていると思う。
自転車に乗れるようになった、とか、逆上がりが出来るようになった、とか。
(因みに私は逆上がりが出来るようになったことはありません。)
だけど、別に願ってもないし、出来るようになりたいとも思ってないけど、何となくそうなれたらいいなぁ程度のことが実際に出来るようになった時って、記憶には刻まれにくいものなんだと思う。
だから、覚えてないし、そもそも脳が重要なこととして捉えてなくて、記憶にもとどめないんだと思う。
知識がないから正確なことは分からないけれど。
ただ感覚として、何となくで思っていたことが出来るようになってると自分で気づいたとき、私はじわじわ嬉しくなった。
一気にガツン!ではなく、お腹の底あたりから、じわりじわりと込み上げてくる感じ。
きっと他にもそういう自分が気づけていないことがある気がする。
今は思い出せないし、自分が気づいていないだけで。
いつかまたふとした瞬間に、あ、と気づいたとき、きっとじわりじわりと嬉しさが込み上げるんだと思う。
そういう普段は見過ごしてしまうような些細なことを、大切に、大事にしたいなぁと思った。
また気づけたらいいな。
何となくそう思った今日この頃です。
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