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トム・アット・ザ・ファーム Tom at the Farm

この自粛期間中にグザヴィエ・ドランの作品にはまってしまい、いろいろ観ていた。
そして最後にトム・アット・ザ・ファームを観た。やばい。ずっと気になっていたけど、まさかこんなやばい映画だとは思わなかった。
紹介ページに「愛のサイコサスペンス」ってあって、なんだよ「愛のサイコサスペンス」って、と思っていたら、本当に愛のサイコサスペンスだった。

主人公のトムは突然事故で亡くなった恋人のギヨーム(男性)の葬儀に出るため、モントリオール(カナダの都市)から田舎の村へ車で向かう。彼は非常に都会的なルックスで金髪で下着に至るまでブランドものの服を着ている。

亡き恋人の家庭は想像異常に保守的な農家で、恋人の兄のフランシス(オッドアイのイケメン)は初っぱなからトムに対して高圧的かつ暴力的で、母親のアガットに弟がゲイだったことは絶対話さないようにトムに強要する。

今回のドランは金髪にしてて、都会暮らしでデザイナーのアシスタントをしているトム(主人公)を見事に演じています。

これを恋愛って言っていいのかと思うくらい暴力だらけ。キスシーンすらない。でもなんかとてもエロい。そして顔がいちいち近い。

フランシスがトムに暴力を振るうのは、おそらくフランシス自身がゲイ(バイ?)であるが、保守的な環境で育ってきたせいと、過去の暴力事件のせいで非常に孤独かつ抑圧的な生活をしてきたせいで、暴力によってしか愛情をあらわせないし、性衝動も暴力で発散しているのかなと思いました。(レイプ犯が性的不能になったあと、性行為の代わりに殺人を犯すようになるみたいな)

トムはトムで、恋人に似ているフランシスに惹かれつつ、その環境に同情したりしているうちに、いつの間にかDV夫に依存してしまった妻みたいになってしまったのかなと。

あと母親のアガットが何気に怖い。
最初こそトムの傷についてフランシスを叱るけど、そのあとはそんなシーン全然出てこない。息子が男とダンスしてようが、トムの車のタイヤを外そうが、ベッドルームのレイアウトがおかしなことになっていようがまるで気にしている様子がない。

あと最初の晩に読書していたと言っていたけど、もしかしてだけどギヨームのノート読んでたんじゃないかと思った。全て知ったうえでこの人も嘘をついていたと思うと本当に怖い。

ただ、最後にギヨームの遺品をトムのところに置いていったのはアガットだったんだろうなと思う。やっぱり中身を読んでいて、これはサラでも自分でもなく、トムが持っているべきと思ったのでしょう。

トムとフランシスは結局一線をこえたのか?
映画では最後のほうでトムが目覚めたとき、二人のベッドはくっついているし、しかもトムはフランシスが寝ていた側のベッドに寝ているし、なにか気怠げに起き上がるところを見ても、やっぱり一線を超えている感が否めないなと思いました。

気になったので原作のスクリプトを読みました。(英語ですが、それほど長くないし、基本的に会話文なので気になった方は読んでみてください。)

原作を読んでびっくり。暴力は映画よりもひどかったです。トムは縛られたり逆さに吊るされたりトランクに閉じ込められたりします。ただ、あまり細かくは書かれてはないです。性表現にしてもほとんどないです。ただ、トムからフランシスにキスをして、フランシスはそれを拒まなかったり、トムから一緒に眠りたいと言ってフランシスのベッドに入るシーンなどがありました。あと、例の絹のブラウスはトムが着せられます。(本人が望んだ形ではないですが)

しかし、ラストは…映画のほうがだいぶ平和的に終わっています(あれでも)。トムが人混みの中にフランシスの影を探しているのか、ギヨームの影を探しているのか、観客に委ねる感じも良かったです。原作は結構なバッドエンドでした。

You tell me when to stop. このセリフがいたるところで使われていました。

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