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小説『フランケンシュタイン』感想と舞台への期待。

来年1月に七海さん主演の舞台「フランケンシュタイン-cry for the moon-」が予定されていますね。
原案となった小説(翻訳)が、舞台仕様の帯付きで販売されたので、早速購入して読んでみました。

私はまえがきと序文で早々に心が折れそうになったので(読書は好きですが文体との相性が悪いと全然読み進められない)、苦手な方は本編から読み進めるのも良いかもしれません。

手紙形式で始まる物語にとまどいつつ読み進めると、少しずつ謎が明らかになっていく過程が面白いですね。
読者は手紙の宛先人である「ミセス・サヴィル」となって、差出人の「R・ウォルトン」と共に「フランケンシュタイン」の話に耳を傾けます。

訳者の小林章夫さんが解説で書いているように、「フランケンシュタイン」と「怪物」以外のキャラクターはあまり人物像を作り込まれていないので、前半部分は少し退屈に感じてしまうかもしれません。

けれど怪物が誕生し動き始めると、その心理描写がとにかく見事で物語中盤からは一気に引き込まれてしまいました。
今まで他の作品に登場する「怪物」は、知性や感情を乏しく描かれがちな印象でしたが、原作小説ではその繊細さと旺盛な知識欲、思考力に驚かされました。

もちろん何もわからない状態で生まれ、誰にも真摯に向き合ってもらえない境遇ですから、欠けている感覚や感情はあります。
それでもまっさらな状態から、愛や悲しみ、切なさ、純粋さゆえの残酷さ、憎しみ、愛を渇望する孤独…様々な感情を覚えていく怪物は、とても魅力的なキャラクターだと感じました。

常々七海さんの愛憎入り混じって感情が爆発するような濃いお芝居を堪能したいと思っていたので、この怪物を七海さんがどう演じるのか、今からとても楽しみです。

と言うのも、『ROSSO』の青年役や『令和千本桜』の義経様といった王道で爽やかなお役は七海さんにとてもよくお似合いで、もちろんすごく素敵で大好きなのですが、
『刀剣乱舞』のガラシャ様や『風の聲』の白狐様といった、愛憎や闇を抱えたお役も同じくらい魅力的だと思います。

男性役でも女性役でも、人間でも人外でも、どんなお役でも体の内側から感情が溢れ出すような七海さんの演技が大好きなので、もっと泥臭かったり、人間臭いお役でのお芝居も沢山見てみたいのです。

ただ舞台のホームページを見ると、既存のイメージを覆すような「麗しい怪物像」と書かれているので、必要以上に美化されているのではと少し不安ではありますが…まあ私の希望が世間一般のニーズとかけ離れている自覚はあるので、仕方のない事ではあるのですけども。

舞台副題の“cry for the moon”は「ないものねだり」。
「麗しい怪物」以外にも、原作小説とはキャラクターや筋書きも変わってくるようですが、切なく美しい物語になりそうな予感がします。
幸い東京公演を観に行けることになったので、あと1ヶ月と少し、楽しみに舞台を待とうと思います。
配信もあったら嬉しいな…こんな時期だからあると思っているのですが。

舞台に携わる皆さまも、舞台をご覧になる予定の皆さまも、どうか無事に当日を迎えられますように。
東京公演も大阪公演も無事に幕が上がって、千秋楽まで誰一人欠けることなく駆け抜けられますように。

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