エリザガラコン4/22現地感想。

4/22のガラコンが大変素晴らしかったので、今更ながら感想を綴りたいと思います。

『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』公式サイトはこちら

もう10日以上経ってるけど…いや何か観劇の衝撃で語彙力が黄泉の国に旅立ったのを連れ戻しに行ったり色々考察してたらあっという間に10日経ってて私もびっくりですよ…。

感想を一言で言うのなら「歌唱力と演技力でボッコボコに殴られた」。これに尽きます。
誰の歌を聴いても誰の演技を見ても素晴らしい。目も耳も足りない!!!
何でこの公演の配信とフル収録がないのか…お金ならいくらでも払うからフルで円盤化して欲しい。願わくばBlu-rayで。クラファンでも良いですよ…梅芸さんどうですか…。

ストーリー

これを読んでくださっている方は『エリザベート』のストーリーをご存知の方がほとんどだと思うのですが、簡単に説明します。
※本家のウィーン版と宝塚版ではストーリーが異なりますので、今回は宝塚版をご紹介します。

地方貴族の娘として生まれたエリザベート(シシィ)は自由を愛する少女。
貴族の生活に息苦しさを覚えていたが、ある日木登りをしている時に運悪く落下、命を落としてしまう。
黄泉の国に連れて行かれたエリザベートはこの世の物ならぬ美しさの男性と出会うが、彼こそ黄泉の国の帝王・トート(死)であった。
トートはエリザベートの可憐さと強い生命力を目の当たりにして初めて人間に恋をし、エリザベートを生き返らせる。トートの目的は「いつか生きた彼女に愛される」ことだった。

生き返ったエリザベートは、姉と皇帝(フランツ・ヨーゼフ)のお見合いに同席するが、そこでフランツに見初められてオーストリア皇妃となる。
しかし自由を愛するエリザベートにとって、厳格な皇室での暮らしはさながら牢獄で過ごすようなものであった。
数々の苦難や絶望の折にトートはエリザベートの元に現れ、時に甘く、時に激しく死へと誘う。

トートに惹かれつつも拒み続けるエリザベートだが、訪問先のジュネーヴ・レマン湖でイタリア人テロリストのルイジ・ルキーニの手によって暗殺されてしまう。
彼女は最期に何を考え、誰を想ったのか。
自由を愛し求め続けた女性の生涯を、ハプスブルク家の衰退と、そこで生きる人々を通して描く。

オーストリア皇妃・エリザベート(花乃まりあさん)

ここからは各キャストの感想を1人ずつ書いていきたいと思います。
まずは花乃まりあさん演じるエリザベート。

少女時代のシシィは無垢な幼さが際立ち、可憐な印象でした。
いたずらっ子ではあるけれどおてんば度は低め?そして歌の高音がきれい!
こんなに可憐なシシィ、今後ゾフィー(お姑さん)と渡り合えるのかしら?と心配になってしまう可愛らしさ。

そしていざ迎えた結婚2日目のゾフィーとの直接対決(言い方)。
花乃さんのいたいけなシシィだからこそ、戸惑いと絶望が際立つのですね。
シシィの自我が確立する第一幕 第11場の「私だけに」はとにかく歌が見事で、儚げに見えて実は芯の強いシシィが印象的でした。

皇后としての立場が確立する第一幕 第17場【鏡の間】からは凛とした表情と自信が美しさに華を添えて、その後の年齢を重ねて深みを増していく様子がすごく好きでした。
第二幕 第13場の「夜のボート」を歌い上げたあとの台詞 “いつか、たどりつくところ” は、人によって言い方が全く違うと思いますが、個人的には花乃さんのどこか愛しささえ滲んでいる口調と視線が一番腑に落ちたかもしれません。

そして第二幕 第15場【エピローグ】で最期を迎えた後はドレスを脱ぎ捨てて無垢な少女に戻り、泣きそうな顔で愛おしそうに、本当に嬉しそうにトートの腕の中に飛び込んでいく姿に私の涙腺が崩壊しました。

そうそう'14 花組公演で花乃さんがエトワールを務めていらっしゃいましたが、今回のガラコンはめちゃくちゃ歌が上手くなっていらして音源が欲しいわと思いました。梅芸さんお願いします。

黄泉の帝王・トート(明日海りおさん)

明日海さん演じるトート閣下は妖しくて指先の動きまで色っぽいのに迫力があって、更に歌は上手いしこれぞ帝王。
ソロで歌うシーンがとにかく多い閣下ですが、文字通り独壇場でもう明日海りお(さん)オンステージじゃん…何なのこの歌唱力と存在感好きです…とひれ伏すしかありませんでした。
今回初めて生で拝見したのですが、'14 花組公演時の映像より更にパワーアップされていて鳥肌が立ちました。

冷静に考えたらトート閣下ってだいぶ色々拗らせてしまったストーカー(しかもロリコン疑惑)なのに、すごく魅力的に見える不思議。。。

無言でも眼差し一つで感情を伝える演技とか、さすがとしか言いようがないです。
あと同じメロディーでもシーンによって全然歌い方が違ったりとか。例えば「エリザベート(泣かないで)」のエリーザベート♪の甘い囁き交じりの歌い方とかですね。

明日海さんのトート閣下は感情表現が豊かで、怒りや不気味さはもちろんですが、手酷く振られてしょんぼりしてたり、かと思えばドスの効いた声とダンスで強引に迫ってきたり、受け入れられない事に本気で憤慨していたり、 “死は逃げ場ではない!” とエリザベートを突き放した後にエリザベート本人より傷ついた顔をしていたり、何だか憎めないし放っておけない閣下でした。エピローグで本当に愛おしそうに花乃さんエリザベートを抱きしめるのも良き…。

皇帝フランツ・ヨーゼフ(北翔海莉さん)

フランツというキャラクターはこう…人によってと言うか見方によって好みが分かれる人物だと思うのですが。

個人的には、あ、あくまでも役に対する個人的な感想ですよ?
お前最初は ”嵐も怖くはない” とか言っといて家庭内の嵐すら抑えられないのかよこのマザコン皇帝!とか、何が ”安らかに眠りたいせめて今宵だけは” じゃ、こちとら嫁入りしてからずっと追い詰められっぱなしだわ!とっとと大好きなママのところにお戻りになって、どうぞ!とか、シシィへの愛情だけが救いだったのに不貞かよ!とか、二人の間にあるのは誤解じゃなくて超えられない高い壁なんだよ!とか
言いたい事はまあ山ほどあるのですが(口が悪い)(※個人の感想です)

で す が 。
北翔さんのフランツはね…扉開けちゃうし同じゴール目指しちゃいますね。
最初趣味仲間さんから「北翔さんのフランツには同情しちゃう」と言われた時に、いやいや言うてフランツでしょ?同情はしないでしょとか思ってたのに。
北翔さんの星組トップ時代に相手役だった妃海風さんのインスタ↓を見て、ああそんな風に思えちゃうくらい北翔さんのことがお好きなのかーなんて思っていたのに。

北翔さんフランツに切々と訴えられると、
ああ、ようやく重責と苦楽を共にできる妻を得たと思ったら結婚2日目で嫁姑バトルは勃発するし、母親の政治における影響力は多大だし、国内外では問題は山積みだし、それなのに今までの信念を破るほど心から愛する妻には理解してもらえないし、跡取り息子は謀反起こして自殺しちゃうし、お可哀想な皇帝陛下…
と思ってしまう不思議。

あの溢れる包容力と愛情と優しい眼差しと気品、そしてとんでもなく上手いお歌がいけない。好きです。思わず'14 花組公演の音源買っちゃったもの。

'14 花組公演時のオンデマンド視聴の時点で完敗状態でしたが、今回のガラコンでは更に深みが増していて。
ルドルフが革命に失敗した際の台詞 “皇位継承は難しいぞ” 一つとっても、'14 花組公演時には怒りや軽蔑、冷酷さを感じさせるばかりだったのに、ガラコンではルドルフに対する愛情と憐れみと悲しみが溢れていて。
愛情とは別に冷酷な判断をしなければいけない皇帝の悲しみを感じました。

そして第二幕 第13場【レマン湖畔】の「夜のボート」。
フランツのエリザベートに対する愛情、そして決してわかりあえない悲しみをひしひしと感じる歌声でした。

北翔さんフランツ、結婚直後の “母の言葉はきっと君のためになるはずだ” 、子どもをゾフィーに奪われてしまった時の “仕方がないんだ、譲り合おう” 、ルドルフが体罰を受けていると聞いた時の “しきたりだ” 、そして「夜のボート」での “一度私の目で見てくれたなら君の誤解もとけるだろう” という台詞は、全て心の底から本気で思っている言葉なのだろうなと感じさせられて、あまりのわかりあえなさに絶望しますね…。

心からエリザベートを想っているのは伝わるのに、同じボートには乗れないし同じゴールも目指せない。いっそ政略結婚だったならもっと割り切れたかもしれませんが、愛があるからこそ、よりもどかしく切ない関係になってしまったのだなと。

なぜこんなに素晴らしい演技なのに配信とフル収録と音源販売がないのか。梅芸さん本当にお願いします(n回目)。

ルイジ・ルキーニ(望海風斗さん)

宝塚を退団してわずか10日あまりの望海さん、この日が退団後初舞台でした。なので二幕冒頭【キッチュ】では、ご挨拶がありました。

記念すべき初舞台に立ち会えた幸運に感謝します。
梅芸さんこのシーンは丸々収録されますよね?お願いしますね?

ルキーニも人によって最初と最後だけ狂人ぽいルキーニか、ずっと狂人らしく演じるかで分かれるお役なのかなと思いますが、
望海さんは'14 花組公演の映像では最初から最後までずっと狂気度が高めで様子のおかしい演技に驚いたのですが(褒めてます)、ガラコンでは全体的な狂気度は高いまま強弱がついた様子のおかしさを感じました(伝われ)。

退団直後ということで抜群の存在感と格好良さ、でもバート・イシュルでシシィとこしょこしょ話しているのが可愛かったり、キッチュのシーンのお茶目さ、その直後の台詞での切り替え、マダム・ヴォルフとのセクシーで楽しそうな絡み、トート閣下に対する崇拝のような感情、そして最後の圧倒的な狂気。目が離せない魅力的なルキーニでした。

皇太后ゾフィー(純矢ちとせさん)

こんな姑には絶対勝てない(褒めてます)。
登場時の決してボリュームは大きくないけれどはっきり聞こえる地を這うような歌声の迫力よ。
重要アイテムの扇子を使いこなして感情を表現し、厳しいだけでなくハプスブルク家を守り抜くという信念と、その重責を感じさせるゾフィー様が大好きです。私も冷たく見下されたい←

皇太子ルドルフ(桜舞しおんさん/七海ひろきさん)

桜舞しおんさん演じる子ども時代のルドルフは、皇帝教育による歪みと言うか、不安定さや残酷さ、子どもらしい淋しさや反抗心と次期皇帝であるというプライドが混じり合って、気の毒でなりません…。
でもいくら淋しいからって初対面の明らかに怪しい大人に ”友達さ” とか言われてあっさり信じちゃいけません。あと頼むから猫は殺さないで。

七海ひろきさん演じる青年ルドルフ。
4/10の配信ではその素晴らしすぎるビジュアルと(軍服似合いすぎるし脚長すぎませんか???)まさかの死の接吻の遠隔アングルで落ち着いて演技を堪能出来なかったので、実質初めての観劇です(?)。

でも2回目なのに劇場でお姿を見た瞬間に「ふぇえ…」って変な悲鳴が出ましたけどね。見るたびに新鮮に驚きを覚える格好良さ。もはや罪。

↑これは初回配信時、あまりの事態に荒ぶるワタシ。

閑話休題。
他の方の演じる青年ルドルフと、七海さんの演じるルドルフが印象が違いすぎて、どう表現したら良いのかずっと言葉を探していました。
(某所で七海さんのルドルフを理解するには『うたかたの恋』を観ると良いとの天啓を得たので、そちらもオンデマンドで視聴しました。)

最初は基本的に虚ろな瞳をしているし、革命のシーンも他の急進派の言葉にはそれほど心を動かされていないのに、トート閣下の言葉だけには反応しているので、トート閣下に操られている部分が大きいのかなと思っていました。

けれどルドルフはただ操られているわけではなくて、
他の方の演じるルドルフが国を思う熱意と皇帝や現体制への反発、若さゆえの暴走がトート閣下を引き金に暴発してしまったのなら、
七海さんのルドルフは皇帝である父親と分かり合えず、現体制では自分が役割を果たすことが出来ない絶望感と憂国の気持ちにトート閣下が入り込んで闇に囚われてしまっている感覚と言うか。
俗に言うと闇落ちしたルドルフ?(台無しである)

ルドルフが最期にトート閣下の元に駆け寄るシーンで、立ち上がる前に背後のトート閣下の存在に気付くところ、4/10の配信では薄く微笑んでいたのに(多分)、4/22のガラコンでは明らかに嬉しそうに笑っていて。
安らぎを見つけた安堵と、死に魅入られている狂気を感じられると言うか。闇の表現が上手いなと思いました。

薄幸の推しはしんどい…でも似合うし色気がたまらん…脆さと繊細さと闇を抱えた七海さんルドルフ大好きです…(引きずられて闇落ちするファン)

アンサンブルキャストの皆さま

アンサンブルキャスト、という書き方が正しいのかわかりませんが、他に表現する言葉が見つからない…。
特に如月蓮さんと天真みちるさんに注目して観ていました。

お二人とも七海さんをきっかけに知って、お人柄や文章が大好きなのです。
特に蓮さんはエリザベートをきっかけに宝塚に入団したけれど、現役時代にはご縁がなかったこともあり、今回キャスティングされて本当に良かったなあと思います。
パンフレット読むと「(メインの役名)他」という表記になっているのだけれど、「他」の役名?役割?もちゃんと知りたかったなあ(ミルクを求める市民、とかになるのか?)。それだけが悲しい。

今回のガラコン、蓮さんの演技で好きだったのは「ミルク」の鬼気迫る歌と演技、そしてマダム・ヴォルフとの絡みのガッツポーズです笑
天真さんの演技ではウィーンのカフェでトート閣下と握手をする場面が特に印象に残りました。握手の感覚で一瞬怪訝な顔をするけれど、違和感を振り払うように切り替える細かい演技が上手いなあと。

配信だとカメラワークでどうしても見られない部分があるのですが、会場だと好きなタイミングで追えるのが嬉しいですね。

まとめ

冒頭でも書きましたが、全てのシーンが、演技が、歌が、そして生のオーケストラと観客の熱気、舞台と客席が一つになる感覚、全てが素晴らしい公演でした。本当にフルで円盤化して欲しい。願わくばBlu-rayで。

いくら配信技術が発達しても(配信はより多くの方や何らかの理由で現地に行けない方が観劇出来るという利点はありますが)、舞台はやはり生で観るものである、観客がいてこそ成り立つものであると強く思った観劇でした。
このような状況の中、有観客で開演してくださった関係各位・キャストの皆さまには心から感謝申し上げます。

残念ながら緊急事態宣言発出により4/28以降の公演は中止・予定を変更しての無観客配信となりましたが、画面の向こうから想いを飛ばしたいと思います。
5年後に開催されるであろうガラ・コンサートではまた会場で熱演を楽しめますように。割れんばかりの拍手を届けられますようにと願っています。

カーテンコール

湿っぽくなってしまったので、おまけ?で楽しい話も。
数々の明日海さん語録が最高だったカーテンコール。

とにかく「無料で」を強調しつつ北翔さんと望海さんにご挨拶を要求する場面では観客全員が「有料でもええんやで…」と心から思ったことでしょう。
冗談で言ってるのか本気で言ってるのかわからないテンションと、絶妙な言葉選びが癖になります…そこだけ集めて編集して欲しい。元気のない時に見返したい。
涙、涙の観劇でしたが最後のご挨拶に救われる、素敵なひと時が大好きです。

蛇足(ラストシーンについて思うこと)

この先は個人的に残しておきたいだけで、本当に蛇足なので読み飛ばしてください。

ラストシーンの私なりの解釈は「自由を求めてその生涯を生き抜いたエリザベートが、最期の瞬間に死(トート)を受け入れて愛した」なのですが。

宝塚版ならではのトートがエリザベートを愛する状況にも納得出来ますし、エリザベートが惹かれつつも拒み続けたトートを最終的に愛するのも理解出来ているつもりです。
ただ、最後黄泉の国に二人で向かう時にエリザベートがトートの腰に抱き付くじゃないですか。あそこでちょっとモヤってしまうのです。

あのポーズ自体は宝塚作品でよく目にしますし、娘役さんは相手の男役さんを立てるもの、というルール?価値観?も知っています。
絵的には大変美しいポーズで、もちろん感動もするのですが。
でも作品のテーマと言うか女性の葛藤や自立、自由を描くのなら腰に抱き付くのではなくて、同じ目線で抱き合ったままでも良いのになあと思ってしまいます。エリザベートなら対等の目線や立場を望むのではないかなと。

ウィーン版のラストシーンでは「死からは逃れられないけれど、精神は最期まで自由である」というメッセージに受け取れたんですよね。東宝版はどうなのかしら。
とは言えこれは宝塚版。きっと素直に感動出来ない私がひねくれているのです(^_^;)

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