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VOICARION Ⅷ REMOTE THEATRE Le Reve-ル・レーヴ-

すっかり遅くなってしまいましたが、VOICARIONの新作を聴いたので、その感想を。
藤沢朗読劇はリモートでこんなことができるのか!と改めて驚きました。お手紙形式ならお互いの掛け合いは必要ないし(編集によって掛け合いのように感じる部分は多々ありましたが)、別録りで音楽まで合わせてくれるとか凄すぎ!と感動しっぱなしでした。
藤沢朗読劇の中でも特に好きなChevre Noteコンビ、中村悠一さんと沢城みゆきさんが演じるmushroomを鑑賞しました。なぜ、サブタイがmushroomかは、作中で分かります。面白かった。ずっと自分の端末で聞き続けられるなんて、本当に贅沢です~

以下、結末を含むネタバレがあります。ご注意ください。
いつも通りのお願いですが、個人的な見解ですので、ゆるっと暖かい目と心で読んでいただけると幸いです。

まず、タイトルのLe Reveとはフランス語で”夢”という意味ですね。
もれなく意味をググったのですが、お店の名前に使われてることがめっちゃ多いですね!あとユリの花の品種にもあるみたいで、お花屋さんの店名とかいっぱいヒットしちゃいました(笑)
しかし、”夢”というのもこの話の中では非常に重要になってきます。物語の主人公はSFの祖・ジュール・ヴェルヌ(ジェロ)。
幼い頃、幼なじみのカロリーヌと語り合った空想の世界がのちの彼のSF小説を書く原動力となっていくのですが、カロリーヌとの時間をいつまでも大切にしたいと心のどこかで思いながらも、社会的に”大人”になることを求められ、父と同じ弁護士になるために大学へ通うジェロ。大学はつまらない、わくわくしないと気づきつつも、子供の頃の僕ではいられないんだ、とカロリーヌを振り払おうとする。この辺の対比が手紙を通して行われていて、とってもいいギミックだなと思いました。
最初はジェロとカロリーヌの手紙でのテンションの差がすごくある。だけど、後半に向けてジェロのテンションが上がってくるのに、カロリーヌは病が悪化して、テンションが下がる。最初の方は、カロリーヌが手紙を催促していたのに、後半はジェロが手紙を催促するようになる。そして、やがて訪れるカロリーヌの死…流れが非常にきれいで分かりやすい。
手紙の筆跡、筆圧、インクの質からお互いの状況を推理し合うところとかもよい演出でした。パリの下水の話とか、マッシュルームから物語を着想するところ、花を贈るところとかも良かったな。音楽もお互いの心情に寄り添っていて、聴いているだけで、情景が浮かぶような、素晴らしいBGMでした。

以下、お二人の感想。

・中村悠一(ジュール・ヴェルヌ/ジェロ)

最初の都会でのつまらなそうな大学生活を送るお坊ちゃんの声から、カロリーヌが送ったマッシュルームをきっかけに海底2万マイルの原案を思いつくあたりの人の変わりようが素晴らしかった。ウキウキして興奮して、オタクっぽく早口になるところとか、最高ですね。興奮の後、少し冷静になって、カロリーヌを心配するときの優しい声。中村悠一、好きだぁぁぁぁぁ~~~~(悶絶)
んで、珊瑚のネックレスのエピソードは史実にあったっぽいんですって!フランスとインドがあんなに遠いって知らなくて、インド行きの船に忍び込んでしこたま怒られる。好きな子のためなら無謀になれるんだなぁ、これ!夢がある!
”冒険は夢の中でしかしない”これは、ジェロの生きる指針になったはず。現実では野心も冒険心もないけど、空想の中では元気に想像の翼を広げることができるのが彼の強み。無邪気に子供みたいに話す声と自信喪失して情けない声、それと大人になった後のカッコイイ声の使い分けが本当にビシビシくる。怒濤の中村悠一(何)
行き詰まってた中でデュマ(父)に出会って、生き生きしてくる声が輝いてて、素晴らしい演技だった。手紙もきっとウキウキした字だったんだろうなぁ。
カロリーヌの死後のお墓参りで泣いてる演技も好き。"さみしいよ…”ってあんな情感込めて言えます?泣けました。

・沢城みゆき(カロリーヌ)

姉さん…こういう役をやらせたらピカイチです!!
本当はつらいことがたくさんあるはずなのに、こう若い男を奮い立たせるというか、そういう振る舞いができる姉さん、最高過ぎません???人の話を聞かなくて、素直で自由に発言できて、ジェロからしたら、本当に眩しい存在。
11歳の夏から、私、あなたが大好きよ!!
このときのみゆきちの声、めえええええっちゃ好き。私もこんな声で”大好き”って言われたいです(何)
大人にならなきゃいけないと焦るジェロに”いいのよ、あなたはあなたで。心は子供でいいんだ”そう言ってくれるのマジで才能延ばすの上手!最高!!
いつも元気でジェロの一番の理解者で、勇気づけて、小説のアイディアをくれていたのに最後の手紙の時は聖母みたいな全部の苦痛を乗り越えちゃったみたいな声で、みゆきちのそういうとこ~~~~~~!!!!って悶えた。
あなたの物語のおかげで、私は、ベッドの奴隷なんかじゃなかった!!
泣いちゃうよ…そんなこと言われたら。あと、最初の頃ジェロに"とってつけたような、心を込めて、とかいらないから”って言ってたカロリーヌが最後の手紙で”心を込めて”って言ってくるのズルくないですか?(聞くな)
”君はどうして冒険がそんなに好きなの?”ってジェロが言ってたけど、本気で夢を見ていたのは、カロリーヌの方だったんだよね。長く生きられない事を知っているから。そういうの本当に想像できる声を出しているということにほんと、ただただ感動。カロリーヌにも泣かされました。

最後まで聞いた感想は、やっぱり藤沢さん脚本だな!と思いました。
ラストの掛け合いっぽくなるところ(死後の人間との会話パート)もよくあるし、史実をベースに創作ってところもやっぱり藤沢さんの脚本に通じるところありますしね。
今回は、朗読なんだけど、なんか読み聞かせをしてもらっているような気分でした。手紙の途中に読み手側の気持ち(台詞)が食い気味に被ってくる演出とか、リアルに手紙を読んでいるときの感覚と近くて、そういう演出はさすがだなぁと思いました。

本当は舞台で生で見たかったけど、叶わなかったこのご時世に、こうやってリモートで収録して新しい朗読劇の可能性を見せてくれた藤沢さん及びスタッフさんに感謝。
他チームも物語の大きな流れは変わってないみたいですけど、セリフが微妙に違ったりするらしいので(サブタイも違うので、キーになってくる“海底2万マイル“を思いつくエピソードが違う?)他チームの感想ものぞきに行こうかと思います。ぜひ書いてください〜。よろしくお願いします。

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※9/13追記
VOICEパンフレットということで、原作の藤沢文翁さん、中村悠一さん、沢城みゆきさんの対談音声データがアップされましたので、それについての感想もちょろっと追記です。

まず、最後の最後までリモートということで、こちらの対談もリモート収録(たぶんZoomとかですね…)しょっぱなから、「まず沢城は猫を黙らせろ」と中村さんから言われるくらい普通に(割と頻繁に)「にゃ~ん」とみゆきちの飼い猫の音声が入る、猫好きにはたまらない対談です(笑)

いろいろ面白い話はあったのですが、やはりお互いがお互いの声を聞かずに収録したことによって、生まれたものがあるという話が興味深かった!ケンカっぽくなるところは実際にどちらかの音声を聞いた状態で収録したら、もう少し強い口調になっていたかもしれないとか、こういう声のトーンで正解だったか…?とか。あと、私はみゆきちが「悠一くん」って呼んでたのが、一番ドキドキしました(何)「悠一くん、ちゃんと台本読んだとき、カロリーヌ、私でイメージできた?」ってみゆきちが確認してて「俺は…大丈夫だよ、ちゃんと沢城でイメージできたよ」ってゆうきゃんが答えてて、こういう二人のやりとり好き~~~って勝手に悶絶しましたw
あと色っぽい沢城より天真爛漫な沢城。「あなたねぇ、自分で自覚してるよりもずっと天真爛漫だからね?」ってゆうきゃんに言われてたのも笑ったw
俺の中で峰不二子のイメージの方が逆にないから!?
みゆきちはゆうきゃんのジェロの声がとってもお気に入りだったらしく「シグマの音声サンプルの一番上にこの音声もってきてもらいなよ!」と思わず言うほど。いつも何か背負ってる(信念や使命)系の役が多いゆうきゃん。今回は普通に生きる大学生の青年の役(特に大きな目的もない)ということで、純粋なちょっと子供っぽいしゃべり方でしたね(沢城さん曰く、胸で低音を響かせないタイプの中村悠一だそう。。。)拗ねる演技とか可愛かった♡
あと、みゆきちが「悠一くんっていつから悠一くんの声なの?」って聞いた時に「(低音が今ほど出るようになったのは)25歳くらいかな。それまでは石田彰さんみたいな声だった」と言っていて、!!!と全員が固まったのが笑ったw みゆきちが「回線が止まったわけじゃないのよ」って言っててwww

あと、ゆうきゃんめっちゃ真面目で、台本のページとかも教えてくれて、最後のカロリーヌのお墓参りに行くシーンだけ、感情があふれすぎて声の制御ができなかったので、そこだけ流れではなく一回録音を切って別録りしたのだとか。こういう裏話は自宅録音ならではの話ですよね。
カロリーヌがきちんと成仏(で、あってるのかしら…?)できるようにピクニックの準備をして、お墓に来たのにあまりにも悲しみにあふれた声だったらダメだ、と思って、そこで仕切り直すことにしたそう。そういう裏話大好き。

本当にお三方おっしゃっていましたが、新しいロールモデルを作った作品だなぁと思いますね。音楽制作も一度も会うことはせず、オンラインで収録したりしたんだそうです。すごい。

ぜひ、まだチケットは買えますので、興味があったら聞いてみてください。感動すること間違いなし!です。