離婚後、母は家庭裁判所に通っていた。どれくらいの期間どれくらいの回数かは小学校低学年だった自分の記憶ではあやふやだが、本人が言っていたから間違いはないだろう。
どういった話をしていたのかも知らない。家裁での調停が必要なくらいだから多少は揉めたのかもしれない。親権は養育費は父親には定期的に会わせるのか。
母の不利になるようなことはなかったのか。そもそもの原因は父親の不始末にあるのだと一度だけ聞いたことがあるくらいで、それ以上のことは聞いていないし調停で何が決まったのかも聞いていない。
数年して住居のことが定まったり、兄と一緒に父親に会うことも増えたので、振り返ればそういうことだったのかもしれない。
ぼくたちに会う時の父親は満足気だった。兄はともかく、ぼくのほうは戸惑いの方が大きかった。自宅も知れているから向こうが直接玄関を開けて、今度来いということもあった。母はそれが嫌そうだったし、ぼくも嫌だった。
常識的に考えれば調停までもつれた離婚の元妻の家にくるというのは体裁も悪い。父親は再婚すらしていたのだ。
と言いながらぼく自身、母の本音と向き合ったことがない。彼女も同性ではない相手に話す気持ちが薄かったのかもしれない。ぼくは自分のことしか頭になかった。被害者意識に近い。
ぼくはテレビでも新聞でもインターネットでも女性の話の方を選んで読むことが多い。
などというとなにやら怪しく思われそうではあるが、事実だから仕方がない。
もしかしたらそれは母の本音を最後まで聞くことがなかったことと関係があるのかも、と今さらながら後悔する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?