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【微ネタバレ注意】『パラダイスキラー』奇天烈世界観探索&密室殺人事件推理ゲームプレイレポ

ネタバレがある。ネタバレがあるんだ。本当に。
ストーリーの全容を話すような無粋な真似はしないよ。
何も知りたくない人はそのまま戻ってくれ。


パラダイスキラーをやるぞ

オープンワールド殺人ミステリーと銘打たれたゲーム。
無類の推理ゲーム好きだった私は二年ほど前に購入し、しばらく積んでからプレイした。少し積むと香ばしい推理ゲームの匂いがするのである。
なんとなく夏にやりたいタイプの空気感だ。

全く世界観がわからないメインヴィジュアルだ。面白そうと思っちゃった。

さて、次はお品書きを見てみよう。ゲームの説明文だ。
長いので読み飛ばしてくれても構わない。後で説明する。

現実離れした島。死んだ宇宙人を蘇らせようとする悪質な人間たちの文明。密室殺人。

パラダイスは数千年ごとに再生する島だ。そこではエイリアンを崇拝する者たちが堕落した神々に力を与え、いつの日か復活させるべく宇宙に向けてサイキックパワーを放っている。だがその力は各島を崩壊させようとする悪魔たちの興味を引いた。その悪行は議員が新たなリアリティを創生するまで続く——。

システムは完璧ではないが、いつか——次の島、パーフェクト25になれば完璧なものになるだろう。だが再生の前夜に議員が殺害され、パラダイスも殺されてしまう。

そのあおりを受けて、捜査オタクのレディ・ラブ・ダイが犯人捜しのために亡命先から呼び出された。これはあらゆる犯罪を終わらせるための犯罪なのだ。

事実とは何なのか? 真実とは? 二つは同じものなのだろうか?

・パラダイスをよみがえらせよう
あなたに課せられた使命は、殺人犯を見つけ出し、隙のない実証をすること。裁判では証拠をもとに、自分の解釈を展開しよう。有罪判決が下された場合にのみ、事件は解決したものとみなされ、パラダイス島は救われる。

・事実とは何なのか? 真実とは? 二つは同じものなのだろうか?
「真実」とは、殺人犯たり得る容疑者がおおぜいいて、殺人を実行する方法は一つではないということだ。説得力のある起訴をし、誰かに有罪判決が下されたとしても、果たして本当に謎は解けたといえるのだろうか?

・秘密だらけの島を探索しよう
パラダイスは謎かけのような伝承とさらに不可解な謎に満ち、別の未来史をもつ島だ。奇妙な遺物を調べれば、その世界の超現実的な歴史を知ることができるだろう。

・あなただけのパラダイスを解き明かそう
告発する人物を選んだら、有罪に持ち込めるよう立証しよう。パラダイスでは誰もが秘密を抱え、なにかを得ようとしている。これまで仲間だった者が新たな容疑者になれば、証拠、大義、そしておのれの信念のはざまで選択しなくてはならない。殺人の容疑者はおおぜいいる。だが選んだ者によって、あなたにとっての真実が決まる。

・証拠を集めよう
パソコンと電子アシスタントのスターライトに導いてもらえば、別の方面から捜査できる。証拠を集め、証言を記録し、事実を解釈し、君だけの真実を組み立てよう。

・隠されたエリアをアンロックしよう
古代のナイトメアコンピューターでヒエログラフのパズルを解くと、島内で新たなエリアに行けるようになる。そこで隠された証拠を見つけ、恐ろしい秘密を暴こう。

https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000037418.html

ん~~~~~~~~~~~~~????
ふむ?????
全然分からない、こんな世界観で殺人ミステリーなど成立するのだろうか?
兎に角始めてみないと何も分からないね。不安がいっぱいだよ。

ゲーム開始~OP

捜査オタクのレディ・ラブ・ダイ

開始すると、”私”は捜査オタクのレディ・ラブ・ダイという女性キャラのようだ。彼女が主人公で今作のシャーロック・ホームズなわけだ。
相棒には喋る赤いノートパソコンみたいなAI、スターライトが居るようだ。スターライトはめちゃ優秀なので、実直に仕事をこなす”推理兵器”とも言える。私も欲しい。
開始地点は天空に聳える監獄塔、レディ・ラブ・ダイは過去のある重大な失態から300万日間の幽閉をされていたらしい。ざっと考えて821917年幽閉されていたらしい。なんだこいつ、人間じゃないのか?

幽閉されているにしては高級ホテルみたいな内観な所だし、何なのだここは、疑問は尽きない……設定に困惑していると明らかに人間じゃないやつが中指(モザイク有)を立てて大笑いしている。名前はシンジという悪魔だそうだ。実体があやふやでどこにでも出現できるが、実体があやふやすぎて物に干渉出来ないらしい。こちらを散々馬鹿にしたような発言をした後に高笑いした後に爆発し霧散した。
なんだこいつ……。なんだこれ……。あたしどうなっちゃうの……。

悪魔のシンジくん……その指のモザイク(未加工)はダメだよぉ……

次々に襲いかかる疑問に答えは無く、設定の奔流がプレイヤーを飲み下す。
「殺人事件が起きたため、貴方を幽閉から解き放ちます。パラダイスが終わりを迎えるまでに真実を明るみに出しなさい、詳細は島に来てからです」
突如現れた上司?からの文言が監獄塔に送られてきて捜査オタクのレディ・ラブ・ダイの幽閉期間が終わりを迎えた。

さあ、監獄塔を飛び出し事件解決に赴くのだ!
~ここでOP演出が入るが、シンプルなのにめちゃ痺れた。~
監獄塔から地上まで大凡云百メートルを生身で飛び降り、かっこよく着地。
何事も無いレディ・ラブ・ダイ。この女やはり人間ではない。

カッコいい黒人のリディア姉さん、多分この人も人間ではない

降りた直後にリディア・デイブレイクという元殺し屋の現タクシー運転手の旧友の女性が迎えに来てくれていた。(設定どうなってる?)
どうやらレディ・ラブ・ダイの上司に言われて来たようだ。(リディアにとっても上司に当たるのかな?)
言われるがまま、車に乗り込むと車が突如ワープ空間へと繋がった。
な、何が起こっているのだ……。
レディ・ラブ・ダイとリディア・デイブレイクは昔話に華を咲かせながらドライブしているようだが、状況が飲み込めなくてそれどころじゃない。
現時点が分からないのに、昔話もへったくれもないのである。
しかし、耳をそばだてていると少しだけ状況が飲み込めた。
先程居た監獄塔はパラダイス=島の末端に位置しており、島に接続されていないようだ。故にワープ車が必要になったのである。なるほど?

ということはメインの舞台は本島であるパラダイスになる。
ああ、ようやくすこし分かった、これが分かるだけでも安堵出来る。
後はリディアが絵を描いている事ぐらいしか分からない。
こんな事で安堵してしまうとは恐ろしいゲームだ。

リディアはワープ空間から島内裁判所へと案内してくれた、そこで待っていたのは――

審判(上司)こいつも絶対人間じゃない……ボイスを聞いても性別も分からん……

上司である。名は審判。彼或いは彼女は眠っていた私(=審判)と幽閉されていたレディ・ラブ・ダイは犯人ではないと言い、事件のあらましを説明してくれる。

事件を説明する前に。
そもそも審判やレディ・ラブ・ダイや先ほど会ったリディアはシンジケートという組織の一員であり、その最上位に存在する評議会の面々に従って目的をこなすチームなのだそうだ。
島にはその評議会が集まる場所があり、そこが現場となっている。
殺人事件の内容は以下の通りだ。
・評議会の者だけが入れる場所で殺人事件起きた
あ~はいはい、評議会の人が犯人ですね!
・評議会員X人全員が殺された。
あ~それじゃあ、他の人っすね!マスターキーとかあったんですよ!
・現場に行くには警備兵を突破し、1~3の全く別の超常的ロックを解除せねばならない。そして当然1~3を知っていたのは評議会の者だけである。
えーと、警備兵入れて4重の密室なんすか?
・そうだ。私に真実という名のシャンパンをご馳走するのです。
情報少なッ、ウッソだろ。

こうしてレディ・ラブ・ダイは密室の謎を解き明かす冒険に飛び出したのです。ここから島内を自由に歩けるため、あくまで私の通ったルートで伝えていこうと思う。オープンワールド探索なんで攻略ルートは無数にあると思われる。

探索・尋問(ストーリー超序盤ネタバレ注意)

恐らくこのゲームの醍醐味はこの探索パートになる。人によってこのゲームが面白いか面白くないかを決定付ける重要な要素になる。
結論から先に言うと探索は面倒臭い序盤から快適な後半に姿が変わった。
レディ・ラブ・ダイと相棒のスターライトは300万日の幽閉でなまっているのだ、そこで各所の強化アイテム達を用いて能力を復元していく事になる。
圧倒的に探索の幅が広がり面白みが増す、というわけだ。

手に入るアイテムはめちゃめちゃ多いが、その殆どが意味の無いものであることは言っておかねばなるまい。
推理小説においては「チェーホフの銃」という用語がある。要するに推理するために無駄なものは省け、または置くんじゃないという教えである。
無駄な要素は読者にとってフェアな推理作品では無くなるためである。
ところがどっこい、この作品の魅力は恐らくこの無駄に凝縮されている。
それがこの奇天烈な世界観の補完になっているからだ。
世界観の補完は多岐に渡る、このパラダイスは24号であり、1~24までの経緯がそれぞれ手に入る。これだけに24アイテム。
24号に住む登場はしないが存在する住民のアイテムが20~30個。
神々や悪魔のアイテム、登場人物に縁のあるアイテムがetc……
繰り返すようだが、これら全ては攻略に必要な要素ではない。ただの遊び心であり、価値の無い収集アイテムだ。私が最も気に入ったのがシンジだ。あの冒頭にちょろっと出た悪魔のシンジとの会話が島中に存在している。
意味があるようで全くない、あるかもしれないが捉えどころがないシンジの魅力が詰まっていた。シンジは悪魔であるが、殺人をしていない。体質上出来ないのだ。故に容疑者から外されている。
だが、彼の破壊本能と残虐性と知性は「こいつは犯人になりうるのか?」と誑かされてしまうほどだ。悪魔的魅力と言えよう。
当然ながら攻略には全く必要がない。
この攻略には全く必要がないアイテムに埋もれて偶に超重要証拠があるからやめられない。情報収集はトレジャーハントなのである。

しかし、能動的に得られる攻略情報もある。
それは登場人物達への尋問である。

シンジケートの団員+容疑者の市民

左から
ユーリ・ナイト(カルメリーナの秘書)
ヘンリー・ディビジョン(最重要容疑者・市民・悪魔憑き)
サム・デイブレイク(バーのマスター、リディアの夫)
アキコ14大元帥(保安軍大元帥)
リディア・デイブレイク(タクシー運転手、サムの妻)
カルメリーナ・サイレンス(パラダイス建築士)
Dr.ドゥーム・ジャズ(医師)
終焉の証人(島の終わりを見届ける者)


おいおいおいおい、登場人物が濃すぎてこんな味付けだと肝臓が悪くなっちまうよ(大好物)
※ちなみにまだ登場人物は居ます、お楽しみに。

まずは既に拘束された容疑者のヘンリー・ディビジョンくんに話を聞いてみることに。本島とは少し離れた孤独島に収監されているようだ。(推理ゲームの鉄則ですが、最初の容疑者が犯人なわけないんですよね)

悪魔に体内部を燃やされた、一般人(人間・悪魔憑き)のヘンリーくん。素行は終わってる

ヘンリー「俺はやったかもしれないが、覚えてねぇ」
「は?」
ヘンリー「俺の中に悪魔がいる、だからそいつがやったかもしれねぇ」
「え?(悪魔……?シンジ……?)」
ヘンリー「シンジケートだが知らねぇが神様にお祈りばっかしてたから全員死んだならよかったんじゃねえか?(つば吐き)」
「素行悪っ」
ヘンリー「そういうことだから、別に俺がやったかもしれないが分からねぇ。悪魔に憑かれている時は俺が俺で無くなるからよ。俺がやったとしても別にクソ野郎共が野垂れ死にしただけだからどうだっていい。俺もこのクソッタレな人生から開放しやがれクソ野郎」
「ううむ……」

「……素行は絶望的だが、入り口の警備員を殺し、評議会の者だけが入れて、超常的ロック(てか超常的ロックって何)を3つも突破して、評議会の者をこの少年が全滅させることが出来るだろうか?
悪魔というのはそんなに万能なのだろうか、近くに居たアキコ14大元帥に話を聞いてみよう

超高圧的な女性元帥アキコちゃん、慣れるとツンデレみたいでカワイイよ

アキコ「アバズレ」
「えっ」
アキコ「アバズレと言ったんだ、貴様の用が済んだ。ここに真犯人がいるからだ」
「いやあのその」
アキコ「ウスノロが、この悪魔憑きがやった!やったに決まっている!評議会入り口に血だらけのナイフを持って倒れていた!何よりの証拠だ!」
スターライト「ナイフの血液の照合結果、議員の血と一致」
「ええ……(絶望)」
アキコ「とっとと裁判を開き、この悪魔憑きを血祭りに上げろ!」
「検討しますぅ……」

嘆いても居られない、情報は足である。
絶望的な状態でも何かあるはずなのだ。会話だけでは無理ゲーな気がしてきたが、ヘンリーの犯行当日の動きを追ってみることにした。
オープンワールドなのでこの辺も島全体を駆けずり回りながら考察するのだ。
こうして評議会の建物にやってきたが……

入り口の警備員が死んでる、二人も……
(警備員達はアキコの部下に当たる存在だ、そりゃアキコちゃんもヘンリーにキレるわな……そしてヘンリーを即刻吊るし上げない私にも……)

捜査のため死体をそのまま放置してくれていたようだ。
調べてみると事件当日ギザギザな刃物で切られたようだ。
そういえばヘンリーが使った刃物はどうだったかな……?聞いたっけ?
死体もほどほどに評議会の建物に入ってみると、件の超常的ロックがお出ましだ。宇宙空間に繋がっている扉を抜けると4つの紋章と先の扉がある。全パターンを試しても開かない。ヘンリーはどうやったのだ?
待て、こんなのが後2つもあるの!?
ということは私は殺人現場にすら楽に入れないのではないか!?

トボトボと帰路に着く最中、距離について考察する事が出来た。
ヘンリーは孤独島からこの評議会の建物へやってきて、複数の殺人をこなして入り口で血まみれで倒れていた。それがそもそもおかしい、犯行は速やかに行われた鮮やかなものだった、悪魔憑き(どんな悪魔か知らないけど)の半ば暴走状態とも言えるヘンリーがそんなスマートな殺人が決行出来るとも思えない。
そもそも実行可能な距離ではないのである。人間の足ではもっとかかる。
悪魔が人間を操るかもしれないが、肉体的な制約を突破できない以上ヘンリーには無理だ。殺人を行い帰ってくるなど、時間があまりにも短すぎるのだ。


まてまて、となるとヘンリーに罪を被せようとしている輩がいるぞ……。
へへっ、面白くなってきやがった!
でも現場にすら入れないけどどうしようね!

――その後、各所で見つかるシンジケートメンバーの証拠品。意外な探索場所。島全体の秘密。そして顔の無い追加の死体と、実体の無い容疑者X。
探索すればするほどどいつもこいつも怪しく見えていく。
それから尋問と同時に友情を育むシステムも完備(ダンガンロンパシリーズみたいな)これからお前を犯人って言わなくちゃいけないかもしれないんだ!やめてくれ!

複雑怪奇な終わりゆくパラダイス島で、パラダイスキラー(楽園殺し)を探し出すぜ!

世界観と推理を除いたストーリー(雰囲気ネタバレ注意)

1.
突如神々が外宇宙から地球へやってきて、圧倒的なパワーを与えました。
特に神々を崇拝していたシンジケートの初期メン達はリアリティフォールディング・ドライブ(すんごいでかいエンジン。作中見れます)を作り、パラダイスも作り、エネルギーを供給しています。
パラダイス自体は宇宙のどこかの次元に存在していて、神を迎え入れ、悪魔を迎え撃つ準備をしています。

2.
途中、戦争とか内乱とかごちゃごちゃがあり、パラダイスには悪魔が霊道を通ってやってきてしまうことがありました。悪魔の処理自体は保安軍(アキコの部隊)がやるんですが、悪魔が人間に取り憑いたり、悪魔自体を倒すとパラダイスの土地に腐敗が出来ます。こうなるとパラダイスは腐っていく一方なので捨てるしかなくなります。

3.
パラダイスを捨てるということは新しいパラダイスを作って移住する形になります。捨てたパラダイスはかき消えます。神々の崇拝者たるシンジケートのメンバーは問題なく乗り換えが出来ますが、他の一般市民は現実世界から連れ去ってきた奴隷と同じようなものなので次のパラダイスに渡ることは出来ません。滅ぶのみです。
現在は24号島なので、それだけ凄惨な歴史を繰り返したわけです。

4.
次のパラダイスはパーフェクト25と呼ばれ、悪魔の腐敗を防ぐコンクリートが売りです。パラダイス建築士のカルメリーナ・サイレンスが設計しています。
既に25号島は出来ており、後は移住するだけのタイミングで件の殺人事件が起きました。
事件は無事解決し、次のパラダイスは健全なパラダイスとなるでしょうか?

プレイ後記

めちゃめちゃな世界観に圧倒され続けたが、それよりも推理の感触が非常に良い。ゲーム的には分かりにくい硬派な部類だと思う。(他のレビューの方も「人を選ぶ」という言葉に留めている)
ネガティブな表現で褒めるのは恐縮だが推理ゲームにありがちな「やらされているゲーム」ではなかった。

「やらされているゲーム」とはヒントを過分に設置し、導線を整備しきった推理ゲームの事だ。推理ゲームとはいったがパズルゲームでも同じことが言える。
論理的なピースを埋めていく作業は楽しいがゲームに「ここにピースがはまるよ!」と教えられピースを埋めるのと、試行錯誤の上に閃いた開放感は比べ物にならない。こうした閃きを古代ギリシア語ではエウレーカと呼んだりするが、当にこのエウレーカが推理ゲームの面白さの肝だと私は考える。
パラダイスキラーはエウレーカの泉であり、論理的推理が好きな人には脳汁が止まらない代物である。
そして広大な島のマップのどこを探しても恐るべき事に大体何かある。探索が好きな人にとってもオススメできる内容となっている。
ついでにトンデモ世界観もついてくる。

世界観ついでに語っておこう。グラフィックについてはAAAゲームと比較すると上等なものとは言えないが、インディー系のゲームでは上等な部類である。登場人物はもちろん、世界観を彩るアーティファクトも独創的で面白い。
そしてこの制作会社「Kaizen Game Works」は日本のカルチャーを多く取り込んでおり、パラダイスキラーにも日本の団地を思わせる風景や空気感、アイテムを盛り込んでいる。明らかに海外テイストの作品なのにこうした日本文化が混ざると、途端に物語にヘレニズムが生まれたような感覚になる。登場人物達の多様性に説得力が付くような感覚と言えばいいだろうか……。
とにかくやりたいことをやりたいようにぶちこんだ感じが最高にクールだ。
そしてBGMが良い、探索中に心地の良いテクノ・ポップ・ジャズ。探索と共に曲が増えるので気分もチルい探索、熱い探索、知的な捜査とコロコロ切り替わった。いい仕事だった。

このゲームはいつでも裁判パート(物語の決着)へ突入できる。
「貴方の真実を陳述せよ」と司令が下り、調べた内容を突きつける事が可能だ。
即ち、どのタイミングで裁判をするか自由なためにどのタイミングで事件が解決できるか自分で選択できるということだ。
このシステムのおかげで推理ゲームの論理パズルは一気に難解になる。名作アドベンチャーゲーム逆転裁判ならば全ての証拠品を集めたタイミングで裁判となる。そうしないと詰んでしまうからだ。
しかし、パラダイスキラーは詰まない。無実の人間を罪人に仕立ててもストーリーが進んでしまうのだ。
マジに「貴方の真実を陳述せよ」なのだ。
何の情報パーツがあれば良いのか、そこから考えていく必要がある。そしてドツボにハマる。登場人物には思惑があり、嘘をついている可能性がある。
事実と真実は違う』
「嘘偽りがなく本当であること」と「現実に存在する事柄」が相反することがあり得るのだ。
骨太な推理をこなし、クリア後も悩んでみて欲しい。

正直こんなぶっ飛んだ世界観でちゃんとミステリー出来るとは思いもしなかった。非常に素晴らしい体験だった。今回話したことは本ゲームのほんの一部でしかないので、興味を持たれた方が居たら是非プレイしてみて欲しい。

※これはSteam版パラダイスキラーの全クリのみならずトロフィーコンプ間近までやり込んだ感想です。

Steam
https://store.steampowered.com/app/1160220/_/

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000037418.html


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