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拾い子と硝子の魔女

はじめに 
 このお話は、ポッドキャスト番組『騒ぎますけど、なにか?』の中で行われた「魔女集会へようこそ」というコーナーで、朔夜が診断メーカーで引き当てた魔女の設定と、「拾ってきた子ドラフト」で決定した拾い子の要素を使って妄想したSSです。
 「拾ってきた子ドラフト」に関しましては、
https://twitter.com/sawanani3072/status/1415311203618869250?s=21
こちらをお聴きいただけると嬉しいです。

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 声を媒体としてガラスを創りあげる魔法を持つことから、「硝子の魔女」と呼ばれるゲルダ。創った硝子製品を売ったり、趣味として野山から薬草を取ってきて薬を作り、街で売ったりして過ごしている。

 ある日、薬草を取りに行った山奥に捨てられていた赤子を見つけた。
どうやら生まれつき生殖器が無く、気味悪がった両親や村の者に悪魔扱いされ、顔にタトゥーを入れられて捨てられたようだ。
 戯れに拾い、インドの太陽神で生まれたときにその熱さから母に放り出された伝説をもつ、スーリヤの名をつけた。

 赤子は成長し、自分の事を「スー」と呼ぶようになった。小さい頃はとても活発で明るく、バプティストと共に野山で遊び、よく喧嘩もしていた。
 また、ゲルダの後をついて歩き、薬草を取ったり、ゲルダが売りに行く硝子製品や小物の参考にならないかとお店に飾られた宝飾品などをゲルダと覗き込んで楽しんでいた。ただし、センスは壊滅的で、そのアイデアがゲルダに採用されたことはない。

 ある日、ゲルダと共に山で薬草を取っていたときに山賊に襲われる。スーリヤは思わず手に取った細めの丸太で山賊を薙ぎ払ってしまった。以来槍や薙刀の特訓が趣味となる。剣よりは長物を得意とする。

 スーリヤは大人になり、落ち着きが出て、おだやかな太陽の光のような表情になった。身長は190cm近く。多少食べすぎか、クマのような体型となるが、相変わらずゲルダの二歩後をついて歩く。本人は運動や戦闘の出来ないゲルダの用心棒のつもり。
 ゲルダ自身は生きていることにあまり執着がないので、何事があろうとも特に用心棒の必要は感じていないのだが、山賊や山の猛獣に襲われるなど、有事の際は急に真顔になったスーリヤがついっと前に踏み出し
「下がっていろ、ゲルダ。」
と一言決まり文句のように言って全てを薙ぎ倒すので、面倒だしいいやと好きにさせている。
 倒した後で、スーリヤがゲルダの後ろに戻ろうとすれ違う瞬間に
「あんた、また呼び捨てにしたわね?」
「構わんだろう、ゲルダ。」
という応酬をするのも決まり文句のようになっている。

 夜になると、スーリヤは暖炉の前の床に座って武器の手入れをする。バプティストが寝てしまうと、大抵ゲルダがスーリヤの背中に自分の背中や体をもたせかけてクッション代わりにし、魔導書を読んだり、声を使って硝子玉や硝子の小物を創るために歌を歌ったりする。文句を言っても無視されるので、スーリヤもされるがままにしている。スーリヤの武器の片付けが終わると今度はゲルダがスーリヤのあぐらの中に座り込んで座椅子がわりにして、作業を続ける。
「スーは椅子ではないのだが?ゲルダ。」
「いーでしょ、でかいんだから。呼び捨てにしないでよ。」
という会話もいつものこと。

 文句は言うが、気が向くと、本を読んだり歌ったりしているゲルダの長い髪を撫でて梳いたり、指でくるくるといじったり、首元に顔を埋めたり、後ろから抱きついてもふったりする。何をされてもゲルダはされるがままで作業をつづけているが、スーリヤに触られているときにガラスを創ると、いつもは青や緑色をしたガラスに赤みが混ざり、普段より柔らかな曲線のガラス小物ができるので、ゲルダ自身はそれはそれで面白いと思っている。

互いに若干の感情はあっても、スーリヤに性別がないのでそれ以上にはならない。バプティストに言わせれば「やれやれ、にんげんってやつは。」らしい。

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