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変な色の歯が生えてきた⁉️ エナメル質形成不全を知っていますか?


【エナメル質形成不全って何?】

口から全身の健康を考える小児歯科医 Sawako です。

「永久歯が生えてきたら、歯の色が黄色っぽい」「変な色の歯が生えてきた。これって虫歯?」 小児歯科の診療室で、保護者からよく聞かれる言葉です。歯の色は「白い」と思われていますが、実は真っ白ではありません。

乳歯と永久歯でも、歯の色が違います。乳歯は青みを帯びた白色をしていますが、日本人(アジア人)の永久歯は、黄色味を帯びた色をしているのが普通です。

特に、生え替わりが始まったばかりの頃は、白っぽい乳歯と黄色っぽい永久歯が隣り合っているので、余計に色の違いが目立つのだと思います。

ですが中には、歯の色が斑だったり、透明感がなく歯全体が白濁していたりする、保護者の仰る「変な色の歯」の場合もあります。

「変な色の歯」 第1大臼歯のエナメル質形成不全

画像のような、何らかの原因で歯のいちばん外側の硬いエナメル質がうまく作られず、脆い状態(石灰化不全)で生えてきた場合を、エナメル質形成不全と言います。
日本小児歯科学会と富山大学の共同研究によると、エナメル質形成不全のある子どもの割合は日本全国で19.8%と報告されています。子どもの約5人に1人の割合です。

《エナメル質形成不全の特徴》
①虫歯ではないのに、歯の色が黄色や茶色になっていたり、歯の色が斑になっている
②虫歯ではないのに、歯に透明感がなく、白濁している
③虫歯ではないのに、歯の表面が不自然に凸凹していたり、窪みがあったりする
④エナメル質が薄く、しみやすいことがある
⑤乳歯にも永久歯にもできる
⑥永久歯では、6歳臼歯(第1大臼歯)と前歯(切歯)にできやすい

《エナメル質形成不全の原因》
①栄養不足・栄養不足・低出生体重児・早産
② エナメル質の元になる細胞(エナメル芽細胞)が作られる時期の薬や病気の影響
③乳歯の外傷、外傷や虫歯で歯の神経が死んで歯の根に膿が溜まった場合
④遺伝:8,000人〜15,000人に1人の割合、乳歯・永久歯全部の歯に生じる
フッ素の摂取過剰:歯が作られる時期(0歳〜8歳頃)に高濃度のフッ素を長期間摂取し続けた場合(歯のフッ素症)

『フッ素塗布について知ろう①』で歯のフッ素症に触れました。歯のフッ素症=多数の歯に生じたエナメル質形成不全です。
日本では、歯のフッ素症を生じる程高濃度のフッ素配合のオーラルケア製品は市販されていないので、「フッ素の過剰摂取は心配しなくてよい」と長年言われています。

が、約5人に1人の子どもにエナメル質形成不全があることを鑑みると、フッ素配合のオーラルケア製品や高濃度のフッ素塗布の影響が全くないとは言い切れないと、私は思います。検証することはできませんが。

何故なら、乳幼児の多くは、歯磨剤(歯磨き粉)や歯磨きジェルを上手く吐き出せず、飲み込んでしまうことが多いからです。
ご家庭では、歯磨剤や歯磨きジェルが、適正な使用量より多めの量が使われる傾向にあります。
また、虫歯予防=フッ素のイメージから、歯科医院に来院の度に高濃度フッ素塗布を希望される保護者もいらっしゃいますし、保護者が希望するから…と、月1回の来院の度に高濃度のフッ素を塗布する歯科医院があると耳にしたこともあります。

口の機能の発育は個人差が大きく、3歳で上手く吐き出せる子もいれば、8歳になっても上手く吐き出せない子もいます。
8歳以下の子どもの保護者の皆様は、「子どものオーラルケア製品は食べ物と同じ」と考えて、高濃度のフッ素塗布や頻回・多量のフッ素配合オーラルケア製品の使用に慎重になって頂ければと思います。

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