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「お口ぽかん」は百害あって一利なし ①


【「お口ぽかん」って何?】

口から全身の健康を考える小児歯科医 Sawako です。

「そのぶくぶくうがい、大丈夫②」で、「口呼吸や『お口ぽかん』は新たな現代病とも言われており、子どもの成長発育に悪影響を及ぼします」と書きました。

「お口ぽかん」とは、文字通り、いつもお口が開いている状態を表す言葉です。専門用語で、「口唇閉鎖不全」と言います。
近年、子どものみならず大人にも、この「お口ぽかん」の人が増えています。
新潟大学院医学総合研究科小児歯科学分野・大垣女子短期大学歯科衛生学科・鹿児島大学病院小児歯科の共同研究によると、「『お口ぽかん』の有病率は30.7%で、年齢と共にその割合が増加している」とのことです。
個人的に、「お口ぽかん」は状態であって病氣ではないと思うので、「有病率」という言葉には異和感を覚えるのですが、「お口ぽかん」を含む子どものお口周りの問題に平成30(2018)年4月に「口腔機能発達不全症」と名前がつけられ、令和2(2020)年4月には、「口唇閉鎖力検査」(注)と「小児口腔機能管理加算(リハビリテーション料のこと)」が認められるようになりました。つまり、「お口ぽかん」が保険診療=医療の対象になったのです。
(注)口唇閉鎖力検査:専用の機械を使って唇を閉じる力を測り、平均値と比較して口唇閉鎖力不全を診断する検査

国が何故そこまで「お口ぽかん」問題視しているかというと、日本の超高齢化に関連しています。
人は、加齢によって身体の色々な機能が低下していきます。お口の機能が低下すると、食べ物が食べにくくなり、栄養状態が悪くなります。低栄養状態が長くなると、身体の機能や状態にも障害が現れます。それにより、介護が必要になったり、寝たきりになったりするリスクが高まるのです。社会構造の変化で、独居の割合が増え、介護の担い手が減っている超高齢化社会の日本では、要介護状態の予防が急務です。

口から入る物で身体は作られます。
成長期の子どもの頃に、しっかり食べて、これから何十年も使う身体の土台を作っておかないと、機能が低下し始める年齢になった時にネガティブな影響が避けられないことは、想像に難くないと思います。

平成30(2018)年4月に「口腔機能発達不全症」 が病名になった背景には、15歳未満の子どもの咀嚼機能・嚥下機能=食べる機能、構音機能=喋る機能が十分に獲得されていないケースが多く認められ(子どもの約30%)、その改善が重要視された結果なのです。

長くなるので、次回に続きます。

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