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「お口ぽかん」は百害あって一利なし ④


【低位舌になるのは何故?】

口から全身の健康を考える小児歯科医 Sawako です。

「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ③」で、「舌の正しい位置」「低位舌」について書きました。

どうして低位舌になるのでしょうか?
それには、小さい頃からの習慣や生活環境が関係しています。

低位舌になる原因①上顎の形に問題がある

歯が生えていない赤ちゃんの上顎を見ると、真ん中が凹んでいます。この凹みを吸啜窩(きゅうてつか)と言います。

新生児の上顎の模型
画像は、赤ちゃん歯科ネットワークの講習会資料より転載しました。

赤ちゃんはこの凹みと舌でお母さんのおっぱいをつぶすようにはさんで、舌と上顎で乳首をしごくようにして母乳を吸っています。
この凹みにおっぱいが収まることで安定し、赤ちゃんの力でもおっぱいを吸うことが可能になります。
赤ちゃんは、口と舌を精一杯使って、お母さんのおっぱいを吸っているのです。哺乳により、赤ちゃんは日々舌とお口のトレーニングをしていることになります。
おっぱいを吸っている時、赤ちゃんは鼻で呼吸をしています。哺乳により、鼻で呼吸をすることを覚えていくのです。そして、舌を上顎に置くようになります。

この時期にしっかり舌とお口のトレーニングができていると、吸啜窩は徐々に平らになって、上顎は横に広がっていきます。離乳食OKのサインです。

ですが最近は、離乳が完了しても上顎が凹んだ形のままの子どもたちが増えています。この状態を、高口蓋(こうこうがい)と言います。
高口蓋の人は、上顎の幅が狭くなりがちで、舌が上手く上顎に収まりません。
その結果、上顎以外のところ=下顎に舌を置くようになります。

高口蓋(向かって右の状態)
画像は岡崎好秀先生のご著書よりお借りしました

長時間のおしゃぶりの使用や指しゃぶりは、舌が下がった状態が維持されやすく、低位舌に繋がりやすくなります。

人は、赤ちゃんの時には自然に鼻呼吸をしていますが、言葉を喋るようになると口呼吸を覚えます。アレルギーによる鼻詰まりや扁桃腺肥大など、鼻呼吸が困難な場合には、口で呼吸をする習慣が形成されやすく、長期間の口呼吸による低位舌に繋がります。


低位舌になる原因②舌に問題がある

舌は筋肉でできていますから、筋肉の力が弱いと、上に持ち上げることができませんし、持ち上げてもそれを維持することができません。

舌は、舌小帯(ぜつしょうたい)と呼ばれる紐で、お口の底に繋がれています。
生まれつき舌小帯が短かったり、舌の先端に近いところに着いている場合、舌の動きが制限され、上顎に届かないことがあります。

最近多いな…と感じるのは、舌骨が下がっているのでは?  と思われるケースです。
「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ③」で、「舌骨は宙ぶらりんの骨」と書きました。宙ぶらりんで、舌骨にくっついている筋肉によって、その位置が決まります。
舌骨にくっついている筋肉や靭帯は、頭・顎・首、遠いところでは肩・胸の骨にまで繋がっています。
例えば、猫背で頭が前に出ている人は、筋肉が伸ばされて舌骨が下がってしまうので、舌の位置が低いところから始まることになります。
長さが十分でも、本来より低い位置にあるため、上顎に届きにくくなります。

猫背の姿勢

長くなってきたので、次回に続きます。

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