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「お口ぽかん」は百害あって一利なし ③


【「お口ぽかん」は何がいけないの?】

口から全身の健康を考える小児歯科医 Sawako です。

「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ②」で、「❶『お口ぽかん』は口呼吸になりやすい」理由について書きました。

今回は、「❷舌の正しい位置がわからなくなる」について書きます。

【舌ってどんなもの?】

舌は、動物の口の中にある器官です。脊椎動物の場合、筋肉でできています。筋肉を動かすことで、舌は位置や形を自由に変えることができます。
舌の表面は、「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という小さくザラザラとした突起で覆われています。舌乳頭には、味を感じる「味蕾(みらい)」がたくさん集まっています。

舌は口の中にありますが、人間の場合、舌の根元は下顎と喉仏の間にある舌骨(ぜっこつ)という骨にくっついています。つまり、舌は首から始まっているのです。
舌骨は、隣り合う骨や軟骨と関節を作りません。舌骨と他の骨を繋ぐ筋肉や靭帯で、ぶらんこのようにぶら下がっています。
舌骨が宙ぶらりんだからこそ、舌は位置や形を自由に変え、大きく動かすことができるのです。
舌骨は、飲み込みや口を開ける際に、周りの筋肉を制御して中心的な役割を果たします。

舌は、他の筋肉や器官と連携しながら、
①食べ物の味を感じる(味覚)
②言葉を話すのを助ける(構音)
③食べ物と唾液を混ぜて食道へ送り込む(嚥下)
④効率的に噛むために奥歯に食べ物を運ぶ(咀嚼)
⑤口の中に入った異物を感知して選別する
⑥歯を内側から支えて歯並びや咬み合わせを作る
⑦頭の位置を安定させる
などの働きをしています。

舌がこのような役割を果たすためには、他の筋肉と協調して、正確にコントロールされながら動く必要があります。そして、舌が十分に機能するためには、その位置が重要になります。


【❷舌の正しい位置は何処?  「『したはうえに」】

ところで、皆様は無意識に呼吸をしている時、普段ご自分が舌を何処に置いているのか、意識していらっしゃるでしょうか? おそらく、「氣にしたことがない」という方がほとんどだと思います。

人間は本来、鼻で呼吸をするようにできていますので、無意識に呼吸をしている時は、口を閉じて鼻で息をしているはずです。
口を閉じて静かに鼻で呼吸をしている時、舌先は上の真ん中の前歯2本の裏側(「スポット」と呼ばれます)に、舌の根元から舌全体は上顎に接するように上がっている状態が、正しい舌の位置=スポットポジションです。

スポットの位置



舌は、根元は舌骨についていますが、舌先は何処にも固定されていません。
口を閉じて安静にしている時、舌先を何処にもつけない宙に浮いた状態では、舌は疲れてしまいます。舌も何処かにつかまって休みたいのです。そのつかまる場所が、上顎です。
また、舌が力の必要な働きをする時にも、固定する場所が必要です。宙ぶらりんのままでは力が出せないからです。固定するために舌がつかまる場所も、上顎です。

「お口ぽかん」の状態では、舌は上顎につくことができません。
その場合、舌はお口の底を作る筋肉と繋がって下顎に乗っているので、舌がいつも下顎に置かれることになります。この状態を「低位舌(ていいぜつ)」と言います。
低位舌の状態では、舌は①〜⑦のような機能を十分に果たすことができません。
その結果、

・歯並び・咬み合わせが悪くなる
・空気の通り道(気道)が狭くなり、口呼吸になりやすい
・鼾をかきやすい
・鼻が詰まりやすい
・猫背になりやすい、姿勢が悪くなる
・滑舌が悪くなる
・上手く噛めない・飲み込めない

などの影響を及ぼす可能性があります。

長くなってきたので、次回に続きます。

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