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「お口ぽかん」は百害あって一利なし ⑤


【低位舌の何がいけないの?】

口から全身の健康を考える小児歯科医 Sawako です。

「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ④」で、「低位舌になる原因」ついて書きました。「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ③」
では、「低位舌による悪影響」に触れました。

低位舌で生じる最大の悪影響は、「鼻呼吸がしにくくなる」ことだと私は考えています。
何故なら、上顎が鼻の土台になるからです。

鼻の骨は、鼻背を作っている鼻骨(紫の骨)と外側を作っている上顎骨(オレンジ色の骨)でできています。

「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ④」で、「高口蓋」ついて触れましたが、ヒトの歯並びは、外側からの頬筋や口輪筋の力、内側からの舌の力のバランスがとれた所に作られます。頬筋・口輪筋・舌により上顎の形が作られ、上顎の成長を追いかけるように下顎が成長して、歯が並んでいきます。

低位舌の人は、舌が上顎に着いていないため、高口蓋になりやすいです。口蓋=上顎の幅が狭いため、下顎も幅が狭くなります。咬み合わせが悪くなるので、咀嚼回数が減ります。それにより、上顎の奥歯は外側に向いたままになり、下顎の奥歯は内側に倒れ、歯列は正常な形態にならなくなってしまいます。

上顎は外を向いたまま、下顎は内側に倒れるので、奥歯が上手く咬み合わなくなります。

鼻の土台を作るのは上顎骨ですから、口蓋の幅が狭ければ、鼻腔の容積が狭くなります。
鼻腔には、鼻毛の生えている前庭という部分と、その奥に上鼻道、中鼻道、下鼻道という3つの空気の通り道があります。鼻腔の容積が狭くなると、空気の通り道も狭くなるため、鼻の通りが悪くなりやすくなります。
鼻の通りが悪いため、口で呼吸をするようになり、口呼吸をするので舌は上顎につかないまま、口呼吸により「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ②」に挙げたような不調が起きやすくなり、お口ぽかん→低位舌→高口蓋→歯列不正→舌の置き場がなく更に口呼吸に…の負のループの完成です。

一度負のループができ上がってしまうと、年齢が上がっても、低位舌と舌の使い方は、自然には正常に戻りません。
それは、「『お口ぽかん』は百害あって一利なし ①」に挙げた新潟大学院医学総合研究科小児歯科学分野・大垣女子短期大学歯科衛生学科・鹿児島大学病院小児歯科の共同研究の結果からも明らかです。

子供の頃に「お口ぽかん」の人は、大人になっても「お口ぽかん」のままなのです。
そして、マスクを着けた生活や、スマホを見るための姿勢が、「お口ぽかん」になりやすい環境を作り、「お口ぽかん」の人を増やしています。

呼吸は、生命維持に欠かせないものです。普段、私達は無意識に呼吸をしていますが、1日の呼吸の回数は、成人で約3万回になります。
長くなるので、「呼吸の大切さ」はまた別の機会に述べたいと思いますが、1日3万回の呼吸を「間違った」方法で続けた場合、これまで述べてきた悪影響がずっと続く可能性が高くなることは、想像に難くないと思います。

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