覚えててほしい人に覚えててもらうこと

誕生日の話。

何をするか。
プレゼントは?料理は?
ホテルのディナーを予約してくれていて、すごく豪華なご飯を食べさせてもらったこともある。その人は、確かその時は、名のあるブランド品をプレゼントしてくれた。
すごーいと思った。
けど、これっぽちも嬉しくはなかった。
こういうお祝いを自分のためだけに用意してもらえるなんて、すごく恵まれているなと思うし、少し憧れていたものでもあるし、料理もプレゼントも写真におさめて、特別な日にしてくれたんだなと、
でもそれだけで。
非日常感が強いのと、普段の、本当の自分とはかけ離れている、どこか浮ついた、地に足ついていない、ふわふわした、変な居心地の悪さ。

プレゼントに、準備に、どれだけのお金をかけたか、そんなのはどうでもよくて、
自分のことを覚えているか、
それだけの事なのだと思う。
自分の誕生日を覚えていてくれて、
その日に合わせて時計を気にして、
日付が変わった瞬間に連絡をよこして。
きっと、この、おめでとうの一言だけで、
本当はもう何も要らないのだ。
プレゼントだって特別に物が欲しいことなんてない、
ただ、お祝いしたいというその思いで、
自分の普段話していることを覚えてくれていて、
自分の好みのちょっとしたもの、欲しいと思いつつ手を出さずにいたもの、そういう、自分をこの人はずっと見てくれているんだと感じられるようなもの、
だから、お金なんてかけてくれなくていい。
ビスコでもいいぐらい。
いつだったか、全粒粉のビスコの箱に油性マジックではぴばと、平仮名で馬鹿みたいに大きく書いただけのを寄こしてこられた時に、ほら、全粒粉選んでくれてる、好み分かって、ばか、大好きだこの野郎って、どれだけ嬉しかったか。
逆によく分からない物を貰って大いに困惑し、ドンびいたこともある。
欲しいと言ったことのない、しかも自分の好みでない色で、その色も、当時の自分が使っていたある物と色を合わせたとのこと、
わぁなんてこと、あれ全然気にいってなくて、今すぐにでも捨てたいけど買い替えるのにいいのがなかなか見つからなくて使ってただけ、ちょうど代わりの物を見つけたところで、自分への誕生日プレゼントに買おうとしてたところだ、君が色を揃えてくれたその物は、もう捨てる方向でほぼほぼかたまっていたんだ、余計なことをしてくれたな、自分への誕生日プレゼントはやめだ、もう、捨てるのも保留、はい。テンションの下がりようったらない。
あれ、君は僕の話を聞いていなかったのかな?
もとから気に入ってなかったって話してたよな?
どうしてそこにいきついた?
必要としていない、そこそこに値段のする物ほど、扱いに困ることはない。売ったり捨てたりするわけにもいかず、大人しく使っていたけど。使うたびに好みの物でないそれを目にするたびに精神衛生ゆるやかに降下。

好きでもないやつには、何をされても心に響かないし、好きなやつは、おめでとうって言ってくれるだけで、全て事足りるのだ、誕生日を覚えてくれている、それだけで尊い、幸せ、いつもありがとう、お返しさせてください、生きる理由をありがとう、どうでもいい僕のことを覚えてくれていて、ありがとう。
余計なことはしてくれるな、
そのせいで、僕のこと何も知らないんだと傷つく羽目になるのはごめんだ
おめでとうだけ言っとけ

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