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音楽係

短いお話をつくって、
じぶんの歌の間に挟む、という試みを
ここ一年ほど、していました。
毎回違うおはなしをつくるので、
一度限りの上演?になってしまうのが
ちょっと、もったいないような気がして。

これまでのおはなしを、
ここに載せてみることにしました。

ちょっと、はたして雰囲気が伝わるのか、
そもそも、そんな需要があるのか、
不安では、ありますが、、

ライブで観てくださったかたにも
ただ文章として読んでくださるかたにも
たのしんでいただけたら、
たいへん、うれしいです。

シリーズ「これまでのおはなし」
二回目をお送りします。

※実際のライブでは、おはなしの部分を
朗読し、【 】で括ってある曲を
うたっています。

では。
きょうのおはなしは、

「音楽係」

あらゆる人間に係があるという。

給食係のひともいれば、
飼育係のひとも、
新聞係のひともいる。

ぼくには何にもない。

何にもないので、こうして日曜の夜を
茹だっている。ラララ。
口ずさむ声は、夏に溶けた。

【何もない日曜日】


酒だ、酒でも飲もう。

どうして神さまはいつまで経っても、
ぼくの担当すべき仕事を
教えてくれないのだろうか。

アルコールはあっという間に
内臓へ染み渡り、
視界がぼやけてゆく。

【まつりのあと】


蝿が飛んできて机の端にとまった。
ぼくはすかさず蝿をつぶす。

はっきりと羽根の形を
からだの両側に残して、
机に蝿の死体が貼りついた。

おまえのその二枚の羽根に、
なにか使命はあったかい。

【dragon】


部屋の隅に埃を被った
ギターが立てかけてある。

開けると弦に青い黴が生えていた。

母さんが好きだって言ってた、
海の歌があったっけ。

どんなだったっけな。
思い出しながら、
ゆっくり弾いてみる。

【海里】


海の歌は意外にちゃんと覚えていて、
つっかえながら最後まで弾き通した。

机の上で琥珀色の液体は
美しく透き通り、
中を真珠の泡が泳いでいる。

調子に乗って、
もう一曲だけ弾くことにする。

今日だけ、ぼく、
音楽係だ、ぼくのための。

ラララ。

酒に焼けた声で歌ったら、
声はまた、夏に溶けた。

【真夜中】

fin.

at
20190811
西荻窪アートリオン
「西荻ラララ」
gt.ムラタトモヒロ

裏ばなし

杉本ラララさんとの
ツーマンライブでのおはなしでした。
ラララさんのお名前を
おはなしに入れられて、
満足しています。

みなさまは、自分の係は
なんだと思いますか。
それが正解!と神さまに
言ってはもらえないから、
なかなか、悩んでしまいますね。
結局は自分が納得するか
どうかなのでしょうね。

わたし、うたう係やったらいいなぁ。

ご清聴ありがとうございました。

#おはなし
#音楽係


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