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会社に自分を合わせるのではなく、社会を自分に合わせる働き方。

「僕、就活で120社から落とされたんだよね」

2017年がもうじき終わろうとしていた師走のある日。池袋にあるカフェで、コーヒーを一口飲んで初瀬勇輔さんは呟いた。今では自分の会社を立ち上げ、多角経営を行っているバリバリのビジネスマンだ。

超がつくほど仕事ができる初瀬さんが、就活で失敗したのはどうしてか。

目が見えないからだ。

「企業側は考えるよね、視覚障害者を会社に入れてどんなメリットがあるんだと。一般の就活では、今なにができるのかだけではなく、会社の中で教育し、伸ばしていくことも含めて考える。障害のある人は、そう見てもらえないんだよね」

そう。社会はいつだって未成熟で、不公平で、F%$*×(言葉にできない憤り)なのだ。

しかし、ここからが初瀬さんの本領発揮だ。

「120社から落とされるほど、僕という人間は悪くないはず。企業の採用基準が画一的すぎるんだ。そこに合わないなら、自分で仕事をつくればいい」

そう決意をする。そして、2011年にユニバーサルスタイルという会社を設立し、代表取締役に就任した。今では30を超える企業や団体の、顧問や理事をつとめている。す、すごい。

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初瀬さんは目が見えないから、相手の表情を見ながら駆け引きをしたり、相手の顔色を気にしたりしない。だからこそ、「安心して相談する」人が多いという。なるほど。「見られていない」のは安心に繋がるのだなと、私自身初瀬さんと接していて思う。見えないからなのか、傾聴力もずば抜けて高い。

だからこそ初瀬さんは「安心して相談される見えない人」という自分性を、活かしきって働いている。骨も頭も尻尾も全部食べられる魚のように、そこには無駄がない

実は、初瀬さんのように、会社に自分を合わせるのではなく、社会を自分に合わせる働き方をしている友人が、私の周りには何人もいる。そして、そこにはある共通点があった。

みんな、障害者手帳を持っているのだ。

私には障害ある友人が多いのだけれど、彼らのオリジナリティ溢れる働き方は突き抜けている。それは、初瀬さんと同じように、就活に失敗したことがきっかけになっていることが多い。

会社に頼れないなら、自分に頼るしかない。自分の強みと弱みは何か。傾倒しやすいものは何か。己と対話しながら、自分という海に深く潜っていくしかない。そして、新しい働き方を発明するしかない。

当時日本では「働き方改革」が声高に叫ばれていた。勤務時間を減らし、会社への依存を減らし、自分の時間を大切にしながら、自分らしく働こうぜ。政府も企業も「働き方改革しよう!」の大合唱だった。

でも、どうやって?目指すべき姿(上司)を見ながら、一歩ずつ出世街道を上がっていくなら、まだわかる。しかし、いきなり会社から梯子をはずされても、どこをどう登っていいか分からないよ。そんな空気が渦巻いていた。

ピンときた。そうだ、初瀬さんのような障害者手帳を持つ「先駆者」から学べばいいんだ。自分を希望にして、「働き方発明」を何年も実践している彼らの話は、だれが聞いても学び満載だ。そこで開催したのが"Techo School(手帳スクール)"というイベント。

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障害者手帳を持つイノベーターから学ぶ、次の働き方」と銘打ち、2018年3月に虎ノ門ヒルズをジャックして開催した。

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チケットは完売。キャンセル待ちも多く出て、多くの注目を集めた。

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当日登壇した「手帳先生」は8名。見えない弁護士、聴こえない映画監督、車椅子のヒッチハイカー(今はYoutuber)など、多彩すぎるメンバーの話は、参加した生徒たちに一生ものの気づきをもたらした。

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当日配布した「生徒手帳」に、だれもがぎっしりとメモを書いていた。手帳のサイズを小さくすることで、書けるスペースを限定し、「すべてをメモするのではなく、琴線に触れた言葉だけを残してください」とお願いをした。

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そして時は流れ、2020年。コロナ自粛という名の、会社との距離がもたらしたものは「働き方の再検討」だ。

今まで自分がやってきた仕事は、本当に意味があるのだろうか?
会社のために働いてきたけれど、それが正解だったのだろうか?

私の周りでも、働き方を見つめ直している人(特に若手)が多い。

今こそ、「会社ではなく、自分に頼らざるをえなかった」障害者手帳を持つ先生たちの経験を、多くの人に知ってもらうことが絶対に必要だ。そう確信した。

そこで、オンライン開催の"Techo School Online"を仲間たちと企画し、6月から開催することに決めた。

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初回は6月12日。先生は、日本生まれ世界育ちのイギリス人グラフィックデザイナーで、「ひとり国連」のライラ ・カセムさん(車椅子ユーザー)。そして、ろう者であり「異言語脱出ゲーム」を開発した菊永ふみさん。「自分を、1000%活かす生き方」を実践してきたお二人の話は必聴だ。

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自分とは何者か?を見つめ直し、自分と歩む決意を改めて固める。いうならば、自分が自分のプロになる。そんな、働き方のターミングポイントになる学校。それが"Techo School"だ。

月に一回程度のペースで開催する予定なので、ピンときた授業に気軽に遊びにきてください。ここでしか得られない学びがあることをお約束します。



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