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石より砂利の方が記憶に残る

10月に妻の両親が来日し、妻と一緒に日光・鬼怒川旅行をアテンドした。
※私の妻は上海出身。

日光東照宮と華厳の滝は小学校の修学旅行以来。意外と自分自身も楽しみだった。

個人的なもう一つのメインは鬼怒川のホテル廃墟群で、廃墟動画を見るのが好きな妻も喜ぶかと思ってこちらも予定に組み込んだ。

今回の旅では東照宮東照宮と華厳の滝、そしてこの廃墟群が旅のメインと言っていい。だが旅は往々にしてこういうメインのものよりそこに付随するくだらない出来事の方が面白く、記憶に残ったりする。

今回の旅は二泊三日だった。ある一定の時間の体験というのは、壺にモノを詰めていく作業に似ている。まずそこには大きなインパクトのある体験、今回の旅でいうと、東照宮や華厳の滝への再訪及び廃墟群の見学という「大きな石」が詰め込まれる。ただし、そこで過ごす時間はそういうインパクトのある時間だけではない。電車やタクシーに乗っている時間・トイレを探して右往左往している時間・ホテルの土産屋で何の特徴もない饅頭のパッケージを眺めている時間だって旅には存在する。さっきの「大きな石」に比べると「砂利」みたいなものである。

でも体験という壺にはそういう「砂利」だって必ず入れなければならない。そして自分はそういう「砂利」が結構好きだ。「大きな石」はもはや今の時代オンライン上である程度確認できてしまう(体験ではないので確認という表現にした)。でも「砂利」は確認が難しい。

旅の体験における「砂利」は案外面白いもので、そこから現地の人の息遣いが聞こえて来たりして、個人的にはかなり楽しめる。

今回の旅で一番記憶に残った「砂利」のエピソードを一つ。

東武日光駅から東照宮は歩けなくはないが(徒歩で20分くらい)、妻の両親は高齢なのでタクシーを使うことにした。メジャー観光地なので、駅のタクシー乗り場ですぐに乗れるかと思ったら意外と来ない。5分ほど待って、さあタクシー会社に電話しようかと思った瞬間くらいにようやく1台来た。4人で乗り込み、「東照宮までお願いします」と運転手に告げる。

「タクシー、なかなか来ないでしょう」
と運転手。

「ええ、もっとすぐ来ると思いました」

「ここのタクシーはね、基本的にみんな貸し切りになっちゃうんですよ」

「はぁ」

「みんな東照宮行って、その後華厳の滝とか行くでしょ。いちいち拾ってたりしたら大変だから」

「そうなんですね」
(ここらへんで怪しい雰囲気を感じ取る)

「何時くらいに華厳の滝出る予定なの?」

「17時くらいですかね」

「あ~、そりゃ大変だよ。ホテルに戻るの遅くなっちゃうよ?」

「そうなんですか~」

(パウチされた一枚の紙を渡しながら)
「これが貸し切りのプランね。貸し切りしたらホテルまでお送りできますよ」

(たっけ~~~~)
「ありがとうございます~。検討します~」

その後東照宮につくまでの10分ほど、貸し切りの営業をずっとされた。後ろで聞いていた妻は「大丈夫かな。。。騙されないかな。。。」とヒヤヒヤしていたらしい。

今回は妻の両親をアテンドするので、さすがに事前に結構調べていた(妻との二人旅行の時は割と適当な部分が多いが)。戻る手段や時間はかなりプランを練っていたので、おじさんの言うことは受け流すことができた。でも事前に調べるのが甘い人だと「じゃあ貸し切りにしちゃおうかな」という人もいるのだろう。

東照宮の駐車場には、貸し切り化に成功することができた運転手たちが3人ほどいた。みなさんゆったりと休まれていた。貸し切り化に成功出来たらその日の仕事は楽になり、勝ち組なのだろう。

”日光のタクシー運転手は貸し切りの営業をめっちゃしてくる”という「砂利」が今回は最高だった。そこにはタクシー運転手やタクシー会社の意図だったり、下調べしてこない観光客勢が透けて見えてきて、その営業を受けてる時間そのものはストレスだったけど最終的に「なんかよかったな」と思える体験だった。


三猿ってこんなんだったっけ?


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