艦隊これくしょん同人誌備忘録 その47
タイトル:日曜日に生まれた子ども 上
サークル名:No.3
作者: 賀茂 茄子
発行日:2015年8月14日
タイトル:日曜日に生まれた子ども 下
サークル名:No.3
作者: 賀茂 茄子
発行日:2016年5月8日
「英国ヴィッカース社で建造された金剛デース!」っという事で金剛がヴィッカース社で生まれたらしいけど、その辺ってどうだったんだろう? 金剛がああいう努めて明るいキャラクターに生まれた根本的な原因がブリテンのスモールタウンにあるんデース? という妄想をドレットノート級の革新的な発想で掘り下げたのが本書「日曜日に生まれた子ども」です。
多くの艦娘、じゃなかった戦艦を生んだ英国は日本だけで無く、他の国にも戦艦を作って売っていましたが、トルコ(この時はまだオスマン帝国)が発注したレシャド5世(レシャディエ)という戦艦は金剛型のモデルになったとされる同じヴィッカース社製の戦艦で、もしもそのレシャド5世が艦娘として金剛と邂逅していたらというところから話しがはじまって、同型艦も建造されず、さらにトルコの軍艦として着任するはずが敵国のイギリスの軍艦として就任することになって名前までエリンと改名されてしまい、金剛並みか、それ以上に波瀾万丈の人生(艦生?)を送った「艦娘エリン」と金剛の間にある想い出を金剛が振り返るという感じで話しが進みます。
姉妹の居なかったエリンを見て金剛は日本に着任するとそこには同じく英国産の部品で日本で組み立てられた比叡、日本人の手で一から作られた榛名、霧島。この妹達を見て、孤独だったエリンとの姉妹が生まれたら大事にするという約束を果たすために長女として金剛型1番艦、長女として奮闘することになるのです。
こんな感じで本書では史実の流れを混ぜつつなぜ金剛が姉妹を大切にするのか、同型艦というとてもよく似てひとりひとりの思い出を別に抱く姉妹愛を高らかに描き上げていて素敵な上巻。
同じ設定で話は金剛が日本に着任し、下巻は榛名視点にて描かれます。
榛名といえば神戸川崎造船所生まれで同型艦として長崎三菱造船所で建造された霧島との建造競争が熾烈だったことは有名な話しで、竣工を急ぐあまりに機関の繋留試運転の予定が故障で6日遅れると、本来だったら実施されるはずだった日の朝、機関建造責任者自殺するという事件があったという不幸な事件がありました。そんな犠牲を強いて生まれてしまった事を知る榛名の苦悩が彼女の奥ゆかしい性格を形作っていく姿が描かれて、本書はそんな「不幸」を背負って生まれた榛名が「神の祝福され、愛らしくて素敵な日曜日に生まれた子ども」としてマザーグースに歌われた通りに、異国から来た姉の金剛に愛されるという幸せを感じる金剛型愛改修MAXな内容になっております。
金剛が生まれたヴィッカース社の造船所があったバロー・イン・ファーネスでの英国での生活や、日本での金剛姉妹の暮らしぶりが華やかに描かれていて、自分にはない誰でも受け入れ愛する金剛に憧れ想いを寄せる榛名の奥ゆかしい仕草や、部屋を散らかしっぱなしにした比叡に霧島がドロップキック食らわせたり、ありそうだなあと読んでて楽しくなってきます。
彼女たちには艦娘として生まれてきた「歴史」がありそこに人としての想いを形作っていく出会いがあって、それぞれ支え合って生きている。
そこには恋愛感情の様に強い気持ちでお互い惹かれあっていたらと考えるとこんな美しい本になるんですかね?
潤沢にそして丁寧に史実エピソードを交えつつも金剛型に姉妹愛の絆を見いだす、確かに有名な金剛型が四隻並んで一斉回頭してるインド洋で撮った写真は本当に仲の良い姉妹に見えますもんね(戦争中四隻揃って行動したのはこの時だけだったらしいけど)、そんな彼女たちに対する凄い「ヴァーニング・ラヴ」を感じる本デース。
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