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2013年 夏の学会・研究会のまとめ⑥〔廃刊メルマガ記事より〕(2013年12月30日)

 現在、夏の学会・研究会のまとめをしています。第6回は、〈解釈学会全国大会〉の第1弾です。

 今年の解釈学会の全国大会は京都の花園大学で実施されました。今年の夏は猛暑だったのを皆さんも覚えていらっしゃると思います。京都は特に暑く、電車を降りるとどっと汗が噴き出しました。

 さて、全国大会のスケジュールですが、午前中から午後15時前までは第一会場が「文学」分野、第二会場が「国語教育」分野でいう形で展開し、私は「国語教育」分野の研究発表を聞くことにしました。各会場六人ずつの発表でした。

  今回はお二人の発表について報告したいと思います。

 皇學館大學助教 中條敦仁先生「「強意」の語句に注目した心情変化の読み取り―『伊勢物語』「東下り」の段について―」

 中條先生は係助詞「ぞ・なむ・こそ・や・か・は・も」、副助詞「し・しも」(係助詞だととらえる学者もあり、また、高校一年生でとりあげる助詞だが放っておかれることも多い、とも)を「強意」の語句とします。その上で、「それぞれに強意の度合いは違うものの、これらの強意語句が配置されていることは、当該文章において、重要文であることを示す。特に物語的文章の場合、場面・状況の強調や心情の強調をしている部分に用いられ、読解をする上で重要な手がかりとなる」という前提を示され、「東下り」の読解を試みられました。

 結論として、「作者はその文意を強調したいために強意語句を配置していることから、強意語句を含む文を繋ぎ合わせることで、心情のみならず、心情変化や何が心情の根底にあるのかが読みとりやすくなる」と提案しています。

 質疑応答では、本研究発表が古文の読解の一つの拠り所として興味深い点は多く、先行論文をさらに読み深めることや、係助詞がなかったらどうなるかという表現効果の相違を考えさせるような授業の展開という点での指導・助言がありました。

 北海道旭川東高等学校教諭 大村勅夫先生「古典意欲を喚起する―漢文戯訳の実践を通して―」

 中條先生に続き、大村先生の研究発表も古典分野の高校一年生における実践でした。国立教育政策研究所の調査によると、古文・漢文が好きだという質問への否定的な回答がともに7割を超えているということで、「漢文についての意欲を喚起する」(深めることは狙いとしていない)意味での「『書き換え』学習」の提案となっています。

 具体的には、「唐詩を、詩の解釈だけで終わらせてしまうというのは理解したとは言い難く、鑑賞から表現に、また、それを通じて鑑賞をより深めようと考え」、土岐善麿の訳をモデルとして示し、何編かの「唐詩を七五調あるいは七五調の口語定型詩へと訳させた」という実践です。

 授業終了直後に行ったアンケートでは、「学習者の71%が戯訳によって漢詩への意欲を高め」、また、「理解への深まりの実感を89%が感じていた」ということでした。

 質疑応答では、大村先生ご自身も不十分であったという相互評価の必要性という点で指導・助言がありました。

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